育児と介護の関連記事
育児をリスクにしない職場に
厳しくなる「企業を見極める目」
2025/09/07 22:30
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『10人中9人が後悔!介護離職を決断する前に知っておくべきこと』
はじめに
少子高齢化が進む現代において、「育児と仕事の両立」は重要な社会課題として注目されてきました。
しかし、同じように切実なのが、「介護と仕事の両立」です。
育児と介護には共通点があります。
それは、「ある日突然、個人のライフイベントとして降りかかってくる」という点です。
育児支援では「両立支援制度」が整備されつつありますが、介護においては制度があっても「使えない・使いづらい」という実情が残っています。
介護分野には「ケアラー支援」という考え方があります。
これは、介護を担う家族(ケアラー)が無理なく働き、生活できるよう社会全体で支える仕組みです。
これは、育児支援制度が目指してきた方向性と非常によく似ています。
育児休業制度の進展から学び、それを介護支援へと応用していく視点が今、強く求められています。
介護休業制度が「使われない制度」になっている理由
現在、日本では介護休業制度が法的に整備されていますが、実際に利用している人はごく少数です。
その背景には以下の課題があります。
職場の理解不足:休業取得に対して「迷惑だ」と感じる職場風土が根強い
制度の複雑さ:給付金や申請の手続きが煩雑で、利用方法がわかりにくい
経済的不安:休業中の所得保障が不十分で、生活への不安が大きい
キャリアへの懸念:復帰後のポジションや昇進に悪影響を与える恐れがある
これらは、育児制度が以前抱えていた課題と似ています。
育児がそうであったように、制度の存在だけでなく「活用しやすさ」が重要なのです。
育児制度と介護制度を比較し、改善のヒントを探る
育児支援制度の進展を介護制度に応用することは、社会全体の持続可能性に直結します。
ビジネスでいうならば、育児制度が「第一フェーズの成功事例」であり、介護制度はその「第二フェーズ」と言えます。
育児と介護における環境の違いは以下の通りです。
法制度は共通(育児・介護休業法)だが、介護のほうが認知・運用が遅れている
取得率の差:男性の育児休業は40%超なのに対し、介護休業の取得率はわずか1.5%以下
職場文化の差:育児では「両立」が社会的に受け入れられ始めているが、介護はまだネガティブな印象が強い
このギャップを埋めるためには、介護も「取って当然の制度」へと移行させる必要があります。
介護を取り巻く4つの視点とその課題
1. 高齢者の視点
「迷惑をかけたくない」気持ちが制度利用を阻む
高齢者の多くは、子どもが介護のために仕事を辞めることに罪悪感を抱きます。
「自分のせいで…」という思いが、結果として介護制度の利用を妨げる一因になります。
改善案
・家族介護を前提にしない地域包括ケアの強化
・負担の少ない介護サービスの提供
・制度利用が前向きであることを伝える社会的広報
2. 家族の視点
「キャリア」か「親の介護」かの二者択一
働き盛りの30代〜50代が、親の介護のために仕事を辞めざるを得ないケースが増えています。
この「二者択一」の構造自体が、働きながら介護をすることを難しくしています。
改善案
・時短勤務・リモート勤務の活用を推奨
・介護者が仕事を続けられるよう、属人化を避けたチーム体制を構築
・介護と仕事の両立が当たり前という文化を職場に根づかせる
3. 介護者の視点
制度を使っても評価が下がる「ケアラーペナルティ」
介護のために休業や時短を取ったことで、昇進が遅れる、周囲からの評価が下がるといった問題も起きています。
これは「チャイルドペナルティー」の介護版とも言える現象です。
改善案
・休業や支援を評価に反映させる人事制度
・介護に関する行動を明確に評価軸に組み込む
・同僚のフォローへの報酬や感謝を制度化
4. 地域の視点
支える人がいない社会の現実
「独居高齢者」「老老介護」「認認介護」など、地域における支援の限界が露呈しています。
家族だけに頼る時代はすでに終わっており、地域全体で支える仕組みが必要です。
改善案
・地域包括支援センターの活用促進
・地域の互助活動の活性化・行政・企業・NPOによる横断的な支援ネットワークの構築

現場で起きている介護福祉の課題とは?
介護業界の現場では、次のような問題が顕在化しています。
慢性的な人手不足
特に在宅介護支援の担い手が足りない
「ヤングケアラー」などの認知不足
子どもが介護を担うケースも増加中働きながらの介護に
職場が非対応
制度があっても実態が追いつかない
介護離職による経済損失
年間数万人が離職、経済的損失は数千億円
地域格差
都市部と地方でサービス提供の差が大きい
結論
介護を「企業の成長機会」に変えるには
介護と仕事の両立を支援することは、「従業員のため」だけではありません。
これは、企業のレジリエンス(回復力)と成長性を高めるための投資です。
今後の企業には、以下のような取り組みが求められます。
・介護に関する制度の見直しと運用の簡素化
・働き方の柔軟性(フレックス、テレワーク)の強化
・休業取得者やその周囲の人への正当な評価
・属人化しない業務設計とチームワークの促進
・介護支援を福利厚生として戦略的に位置付ける
最後に若い世代は「育児も介護も両立したい」というライフスタイルを望んでいます。
そのニーズに応えられる職場は、人材が集まり、定着し、成長する企業になっていくはずです。
育児と同様に、介護も「個人の責任」ではなく、社会全体で支えるべき課題です。
企業も社会も、今こそ本気で「介護と仕事の両立」を支援する時代に入っています。



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