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アイペット損害保険、
ペットと人の老老介護に関する
調査結果を発表
2025/09/10 14:02
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『ペットの最期を見届けられない…高齢飼い主が抱える“不安”とその代償とは?』
はじめに
介護の現場では、「老老介護(ろうろうかいご)」という言葉があります。
これは、高齢者が高齢の家族を介護する状況を指します。
主に65歳以上の夫婦や親子の間で見られるケースです。
近年では、この老老介護が人間同士だけでなく、高齢者とペットの間にも生まれているという新たな問題が浮き彫りになっています。
つまり、高齢の飼い主が高齢のペットを世話する「ペットの老老介護」が現実のものとなっているのです。
アイペット損害保険株式会社の調査では、ペットを飼っている65歳以上の高齢者のうち、約6割が老老介護を身近に感じており、4割が支援を受けられない孤立状態にあることが明らかになりました。
この記事では、こうした「ペットと人の老老介護」の実態を、多角的な視点から詳しく解説し、今後の課題と対策について考察します。
老老介護とは?
その意味とペット介護への広がり
老老介護とは、高齢者が他の高齢者を介護することを意味します。
本来は人と人の関係を指しますが、現代ではこの構図が高齢者とペットの関係にも当てはまるようになってきました。
具体的には、65歳以上の飼い主が、7歳以上の「シニアペット(高齢の犬・猫)」を介護するという形です。
ペットも人と同じように加齢とともに体が衰え、介助や医療的なケアが必要になります。
このような状況は、心が温まる一方で、高齢者自身の体力・経済力・精神的なゆとりが試される深刻な課題にもなっています。
「身近に感じる」高齢者が6割、広がるペットとの老老介護65歳以上の飼い主の6割が「老老介護を身近に感じる」と回答しています。
以下のような不安や責任感が、日常生活の中で徐々にのしかかってきます。
・自分自身も体が思うように動かなくなってきた
・ペットも老いてきて、以前のように元気ではない
・最期まで一緒にいたいが、その責任が重い
・自分に何かあったとき、ペットの行き先がない不安
これは、介護業界でよく言われる「責任の自覚と支援の不足がストレスの温床になる」という構図に似ています。
実際の生活例
例えば、17歳の柴犬を飼う70代女性は、以下のような日常的な介護を行っています。
・食事の介助(柔らかいご飯を与え、食べさせる)
・トイレの世話(自力で排泄できないことが増えた)
・通院の付き添い(慢性疾患の治療と投薬)
これらは、人の介護と変わらない手間と体力を要する行為であり、高齢者の健康や生活に大きな影響を与えています。
頼れる人がいない…4割の高齢者が抱える“孤立リスク”
調査によれば、ペットの介護において「頼れる人がいない」と感じている高齢者は4割にのぼります。
これは、ペットだけでなく、飼い主自身も孤立していることを示しています。
孤立の要因としては、以下のような点が挙げられます。
・周囲に相談できる人がいない
・ペットの介護のために外出が減る
・肉体的・精神的な疲れから社会との接点が減る
・ペットを預けられる場所や情報がない
こうした状況は、介護疲れによる「社会的孤立」を招き、飼い主自身の生活の質も大きく損なわれる恐れがあります。
情報も準備も不足している
終生飼養を望む声とのギャップ
高齢の飼い主の多くは、「ペットを最期まで看取ってあげたい」と考えています。
実際に約9割が「終生飼養(飼い主の死までペットを飼い続けること)」を希望しています。
しかし現実には、約半数がペットの介護に関する情報不足を感じているという深刻なギャップがあります。
また、介護経験者からは、
・「どう接してあげればよいか分からなかった」
・「ペットの気持ちが分からず、つらかった」
という声も多く、精神的サポートの欠如が浮き彫りになっています。
これは、認知症ケアにおいて家族が感じる負担と同じ構造を持っており、コミュニケーションが取れない相手へのケアの難しさが共通しています。

課題をどう乗り越えるか? 4つの視点で考える支援策
1. 介護者視点
限界を知り、助けを求める力を持つ
・自分だけで抱え込まず、周囲に相談する「ヘルプシーキング」が大切
・地域のNPOや動物愛護団体など外部支援を探す
・「ペット介護訪問サービス」など、新しい支援形態の普及も重要
2. 高齢者本人の視点
不安と責任のはざまで
・「もし自分に何かあったら?」という不安
・「ペットの命を最後まで見届ける」という責任
→ ペットのライフプラン(ペットの終活)を家族や行政と共に考えておく必要があります。
3. 家族の視点
温度差の解消と支援の意識
・家族が「ペットのためにそこまでするのか?」と感じる場合も
・放置すると飼育放棄や飼い主の心身疲弊につながる
→ 家族全体でペットを共通の存在として認識する姿勢が求められます。
4. 地域社会の視点
誰もが安心できる仕組みづくり
・地域包括支援センターが、ペットの相談窓口も担う
・高齢者とペットが共に住める住宅環境の整備
・ペット介護に関する情報共有やセミナーの開催も有効
介護福祉現場との共通点
老老介護の本質は「孤立」と「情報不足」
人間の介護福祉現場でも、以下のような問題がすでに顕在化しています。
・認知症高齢者と介護者の共倒れ
・ケアに関する情報が得られないままの在宅介護
・サポートする側(ケアマネージャーなど)の高齢化
これらは、ペットと人の老老介護と構造的に非常に似ている問題です。
つまり、情報の不足・支援の不足・孤立の進行が共通のリスク要因として存在しているのです。
結論
支援の輪が、ペットとの最期までの絆を守る
高齢者とペットの「老老介護」は、これからの高齢社会において見過ごせない社会課題です。
・約6割の高齢者が「老老介護を身近に感じている」
・約4割が「頼れる人がいない」孤立状態にある
この現実を変えるには、家族や地域、福祉分野がつながって支援の輪を作ることが不可欠です。
ペットとの絆を最期まで守り抜くために、個人の努力に頼るのではなく、社会全体で支える仕組みを整えていくことが求められます。



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