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一人暮らし高齢者、
福祉サービス利用しやすく
社協が手続き代行
2025/09/10 14:00
日経速報ニュース

この記事の内容
『放置すると危険!一人暮らし高齢者が陥る孤立リスクとは?』
はじめに
介護の世界には「意思決定支援」という考え方があります。
これは、利用者本人の意思を尊重しながらも、判断や表現が難しい状況でも、必要な支援を一緒に考えるというものです。
これは、たとえるなら「海外旅行中に現地の言葉が分からず、何も手続きが進められない旅人」と同じ状況です。
行きたい場所があっても、伝えられなければ目的地にたどり着けません。
介護も同じで、制度を知らずに困っている高齢者にとって、制度の“翻訳者”が必要なのです。
その役割を担おうとしているのが、今後制度改正で位置づけられる「手続きの代行支援」です。
一人暮らし高齢者が直面する“制度の壁”
現場から聞こえるリアルな声
介護の現場で、こんな声をよく耳にします。
・「デイサービスを使いたいけど、申し込み方法がわからない」
・「書類が複雑で諦めた」
・「認知症が進み、銀行や役所の手続きが怖い」
これらは特別な例ではなく、多くの一人暮らし高齢者が直面している現実です。
特に以下の3つの壁が大きな障害となっています。
1. 制度が複雑で理解しにくい
2. 相談できる相手がいない
3. 判断能力の低下で手続き自体が難しい
制度の変化
手続きはプロに任せられる時代へ
国は2026年にも社会福祉法を改正し、社会福祉協議会(社協)などが一人暮らし高齢者に代わって福祉サービスの利用手続きを行えるようにする方針です。
これにより、以下のような変化が見込まれます。
・今まで認知症や知的障害者が対象だった手続き支援を、一人暮らし高齢者にも拡大
・本人や家族ではなく、社協やNPOなどが正式に手続き代行できるように
・サービス利用が広がり、より多くの高齢者が支援を受けやすくなる
・利用料は1回1,200円程度の低負担を維持
手続きに伴う負担を軽減することで、高齢者が安心して福祉サービスを利用できる社会が実現します。

なぜ今、制度改革が求められているのか?
背景にあるのは「高齢者の孤立化」
2020年時点で一人暮らしの高齢者は約674万人。
2050年には1,084万人と、60%以上の増加が見込まれています。
これは、今後ますます「身寄りがいない」「頼れる人がいない」高齢者が増えることを意味します。
家族がいない、もしくは遠方にいる状況では、制度へのアクセスが難しく、孤立や制度からの取り残されが大きな社会課題となります。
介護者視点
現場での“制度の隙間”に苦しむ人々
介護職や家族が本人に代わって手続きをすることはありますが、現実には以下のような問題が頻発しています。
・書類が複雑でケアマネジャーでも対応に限界がある
・認知症による意思確認の困難さで手続きが進められない
・家族が遠方に住んでいて、現実的に代行ができない
制度が整備されていない現場では、介護職が「制度の通訳者」として動かざるを得ず、時間・精神面の負担が非常に大きくなっています。
高齢者視点
「頼ること」への不安と葛藤
一人暮らしの高齢者が制度を使わない背景には、単なる情報不足だけではなく、心理的なハードルもあります。
・「他人に迷惑をかけたくない」
・「知らない人に頼むのは怖い」
・「お金がかかるのなら我慢しよう」
こうした遠慮や不安が、福祉サービス利用の妨げとなっています。
制度がいくら整っても「安心して頼れる関係性」がなければ、利用にはつながりません。
家族視点
見守りたいけど、距離の壁がある
遠方に住む家族は、親の生活状況を十分に把握できません。
・「最近元気なのか分からない」
・「急に入院と言われても駆けつけられない」
・「必要な手続きができているのか心配」
社協やNPOが手続きを代行する体制が整えば、家族としても心理的な負担を減らし、安心して生活を見守ることができます。
地域視点
支える体制と人材が問われる時代へ
これからの地域社会には、次のような体制づくりが求められます。
・信頼できる事業者を登録
・認定する制度の導入
・高齢者や家族向けに、わかりやすく制度を解説する情報提供
・地域ボランティアや見守り隊との連携による包括的支援体制
地域全体が連携し、「支援が必要な人に、必要な支援が届く」社会を目指すことが大切です。
介護現場で実際に起こっていること
現場では、以下のような問題が頻繁に発生しています。
・認知症による通帳や印鑑の紛失、金銭管理不能
・ケアプランの同意が家族から得られず作成できない
・入院・施設入所の際に保証人が見つからない
・葬儀や納骨の手配ができず、死後の混乱が起こる
これらはすべて、「手続きを誰がするのか」という問題が根底にあります。
明確な代行者が制度として保証されれば、多くのトラブルは未然に防げます。
まとめ
介護者として今できる準備と行動
結論:介護者として、一人暮らし高齢者の代行申請を見据えた支援視点が不可欠です。
理由:制度の壁を越えるには、本人の生活実態、意思、支援体制をつなぐ“橋渡し”役が必要だからです。
具体的にできること
・利用者に対し、制度をわかりやすく説明し、不安を取り除く
・社協や地域包括支援センターと密に連携し、支援体制を早めに構築する
・家族と定期的に連絡をとり、支援に関する共通認識を持つ
・民間サービスを利用する場合は、契約内容を丁寧に確認し、高齢者が不利益を被らないようサポートする
さいごに
社会全体が変化する今、介護者は「制度を届ける人」としての役割をより強く求められます。
手続きというハードルを一つずつ取り除くことで、高齢者が自分らしい生活を続けられる社会を、地域とともに築いていきましょう。



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