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訪問介護、
100自治体は「空白地」
厚労省が施設事業者の参入後押し
2025/10/06 11:30
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『全国1741自治体のうち「100ヶ所」に訪問介護が“ゼロ”という現実とは?』
はじめに
「支援が届かない地域=福祉の断絶」という現実
介護の現場では、必要な支援が行き届かない地域があることは、単なる行政の怠慢ではなく「福祉が断絶している状態」として捉えられています。
これは、電気や水道といったライフラインが整っていない地域に住むのと同じくらい深刻な問題です。
特に高齢者にとって、訪問介護は“最後のライフライン”です。
過疎地域では、このライフラインが絶たれているケースもあり、私たち介護職にとっては看過できない状況です。
いま、私たちができることは、この現実にしっかり向き合い、制度と現場の両面から対策を講じることです。
訪問介護「空白地」はなぜ生まれたのか?
現在、全国1741の市区町村のうち、約100の自治体が訪問介護の「空白地」となっています。
これは約6%にあたり、決して小さな数字ではありません。
主な背景要因
過疎化:人口が極端に少なく(例:奈良県野迫川村は322人)、事業として成り立たない。
地理的な障壁:山間部や離島など、移動コストと時間が大きい。
人材不足:介護員が集まらず、最低基準(常勤換算2.5人)も満たせない。
収益構造の脆弱さ:出来高制ゆえに訪問件数が少ない地域では利益が出ない。
現場の実情:1日の大半が「移動」で終わる
訪問介護員にとって、遠隔地への訪問は移動時間の長さが最大の課題です。
例えば、片道1時間かけて1件のみ訪問しても、報酬はその1件分。
これでは事業が成り立たず、働く側のモチベーションも低下します。
実現したい対策
・電動自転車やガソリン代補助など、移動手段への支援
・訪問件数に左右されない定額報酬制の導入
・1人の介護員が複数業務を担うクロススキル化の推進

高齢者の心の声
「誰も助けてくれない」
訪問介護が届かないということは、高齢者にとって「孤立」そのものです。
通所施設に行く体力もなく、自宅で衰弱していくしかない…。
そんな現実がすでに起こっています。
高齢者が感じる不安
・年を取るのが怖い
・病気になっても誰も来てくれない
・家族に迷惑をかけたくないから我慢する
必要な支援
・通所施設が訪問機能も担う体制づくり
・オンライン診療や電話相談の拡充
・地域包括支援センターとの連携強化
家族の苦悩
「介護のために仕事を辞める」現実
遠方に住む親を支えるため、家族が「介護離職」や「二重生活」を余儀なくされるケースが増えています。
これは家庭にも企業にも大きな負担をもたらします。
考えられる解決策
・自治体との連携による「遠隔介護サービス」の充実
・親の近居を支援する制度の整備
・家族向けの情報提供アプリやWebサービスの普及
地域も疲弊している
「老老介護」の限界
「過疎地は助け合いがあるから大丈夫」と思われがちですが、実際には高齢者同士の支え合い=老老介護が限界を迎えています。
地域に若者や担い手がいない現実が、この問題をさらに深刻にしています。
地域が抱える課題
・一部の元気な高齢者に支援が集中
・若年層の流出により担い手が不在
・災害時の避難や安否確認すら困難
2026年、厚労省が打ち出す新施策
厚生労働省は2026年度から、空白地問題への対応策を本格化させます。
主な支援内容
訪問機能の併設支援:通所施設が訪問サービスも提供できるように
アドバイザーの派遣:事業所立ち上げ支援の専門家を派遣
初期費用の補助:電動自転車、ユニフォーム、Web制作費などを支援
訪問ごとの補助金:訪問1回ごとに報酬支援(最大300回まで)
これらは、事業所が「訪問介護」を始めやすくするための具体的かつ実践的な施策です。
「兼業モデル」の可能性
介護業界にも「複数の機能を一つの事業所が担う」発想が求められています。
これは農業でいう「6次産業化(生産・加工・販売の一体化)」に似たモデルです。
実現できる価値
職員の多能工化:介護、運転、ICT対応などを一人が担う
時間の有効活用:通所と訪問を時間帯で使い分け
地域との関係性強化:地元向けの無料相談会や説明会の開催
事業の効率化だけでなく、地域の信頼獲得にもつながります。
現場で起きていること
・訪問介護事業所の倒産件数が過去最多(2025年上半期で45件)
・報酬の引き下げによる経営悪化
・若手職員の離職率の増加
・多機能型居宅介護のニーズ増
・デジタルツール導入の加速
・外国人介護士の活用と定着支援の必要性
結論
「制度」と「現場」をつなぐ橋が必要
訪問介護の空白地を解消するには、制度だけでも、現場努力だけでも足りません。
両者をつなぐ「橋」を作る必要があります。今、私たちに求められているのは次の3つです。
今後の方向性
1. 地域資源を活かした「複合型サービス」の展開
2. 報酬制度の柔軟化による、小規模事業所の安定経営
3. 介護者・高齢者・家族・地域がつながるプラットフォームの構築
福祉の断絶をなくすためには、「必要な時に、必要な場所で、必要な支援を」届けられる体制を、一つひとつの地域で根づかせていくことが何よりも重要です。



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