オンライン診療の関連記事
災害に備えオンライン診療、
山形県が中山間地のモデル整備
日経グローカル
2025/12/30 05:00
日経速報ニュース
【この記事の内容】
『9割の介護現場が勘違いしている「オンライン診療は非常時用」という危険な思い込みとは?』
はじめに
結論からお伝えします。
災害に備えた高齢者支援では、オンライン診療を「非常時だけの特別な手段」と考えるのではなく、「日常のケアの延長」として組み込むことが最も重要です。
なぜなら、災害時に本当に機能する仕組みは、平時から使い慣れている仕組みだからです。
山形県戸沢村の取り組みは、介護・医療・地域が一体となり、普段からオンライン診療を活用することで、災害時の混乱や支援の断絶を最小限に抑えられることを示しています。
介護現場ではしばしば、「いざという時のために用意した仕組みほど、結局使われない」という現象が起こります。
これはビジネスで言えば、マニュアルだけ立派でも現場で回らない新規システムと同じです。
一方、日常業務の中で自然に使われているツールは、トラブルや外部環境の変化といった“外圧”がかかった場面でも、無理なく機能します。
この考え方を抽象的に捉えると「レジリエンス(回復力)」です。
想定外の出来事が起きても、元の状態に戻ろうとする力を意味します。
これを具体的な介護現場に落とし込むと、「日頃から使っているオンライン診療」に行き着きます。
今、求められているのは、この仕組みを自分たちの介護福祉の現場にどう転用するかを真剣に考えることです。
災害時に高齢者が直面する現実的な課題
結論として、災害が起きると高齢者は「医療へのアクセス」と「生活を続けるための基盤」を同時に失いやすい立場に置かれます。
その理由は、加齢に伴う複数の要因が重なっているからです。
例えば、災害によって道路が寸断されると、車の運転ができない高齢者や公共交通に依存している人は通院そのものが困難になります。
さらに、高血圧や糖尿病、心疾患といった慢性疾患を抱えている場合、定期的な診察や服薬管理が途切れることは、体調悪化に直結します。
加えて、認知機能の低下により正確な情報を理解できなかったり、環境の変化に強いストレスを感じたりする点も見逃せません。
参考として、豪雨災害などで通院が3日以上中断すると、血圧の悪化や服薬忘れ、不安や不眠といった二次的な健康被害が一定割合で起こりやすいとされています。
高齢者自身は「周囲に迷惑をかけたくない」「これくらい我慢しよう」と考え、不調を訴えずに抱え込んでしまう傾向があります。
この心理的背景こそが、災害時の健康リスクをさらに高めているのです。
オンライン診療とは何か
オンライン診療とは、インターネットなどの情報通信機器を使い、離れた場所にいる医師が診察や処方を行う医療の形です。
対面診療を完全に置き換えるものではなく、あくまで補完的な役割を担います。
特に、症状が安定している慢性疾患の管理や服薬指導との相性が良く、移動が難しい災害時には「その場で診てもらえる」という大きな強みを発揮します。
山形県戸沢村の事例では、タブレット端末を活用し、看護師が現地で高齢者をサポートしながら、かかりつけ医が画面越しに診察を行う体制が整えられています。
この仕組みは、介護現場の実情に寄り添った、現実的な設計だと言えます。
介護者視点で考える課題と対応
介護者にとってオンライン診療は、業務の負担を軽減しながら利用者の安全を守れる有効な手段です。
しかし、導入にあたっては不安も少なくありません。
医療的な判断に対する自信のなさや、ICT機器の操作負担、緊急時の対応責任などが代表的な課題です。
これらに対しては、看護師や医師との役割分担を明確にし、「介護者が一人で抱え込まない」体制を作ることが重要です。
操作についても、高齢者本人に任せきりにするのではなく、介護者が主導してサポートする前提で設計することで、現場の混乱は大きく減ります。
さらに、平時からマニュアルを整備し、簡単な訓練を行っておくことが、災害時の安心につながります。
現在の介護分野では、医師不足の常態化や訪問診療の移動負担増、災害時の事業継続計画の不十分さ、ICT導入の格差といった課題が同時進行で起きています。
オンライン診療は、こうした外部環境の変化に対する、現実的な対応策の一つと言えるでしょう。
高齢者視点での心境と背景
高齢者にとって何より大切なのは、「安心できること」と「いつもと同じ人に診てもらえること」です。
初めてオンライン診療を受ける際には不安を感じる人も多いものの、顔なじみの医師が対応し、操作を介護者に任せられる環境が整うと、その心理的ハードルは大きく下がります。
戸沢村のように、かかりつけ医が継続して関わる体制は、高齢者の安心感を支える重要な要素です。
家族視点での課題と対応
家族は、オンライン診療に対して「本当にきちんと診てもらえているのか」「緊急時はどうなるのか」といった不安を抱きやすい立場です。
だからこそ、事前に丁寧な説明を行い、同意を得ることが欠かせません。
診療内容を簡潔に共有し、災害時の連絡方法や判断の流れを明確にしておくことで、家族の安心感も高まります。
オンライン診療は、高齢者本人だけでなく、家族にとっても心の支えとなる仕組みなのです。
地域視点で考えるオンライン診療の意義
オンライン診療は、「地域包括ケア」を災害時にも機能させるための重要な要素です。
行政が仕組みや研修を整え、医療機関がバックアップ体制を担い、介護現場が運用を支え、地域全体で見守る。
この連携があることで、「避難したら医療が止まる」という最悪の事態を防ぐことができます。
自分の介護福祉領域への転用
災害を外圧、オンライン診療を衝撃を和らげる緩衝材と考えると分かりやすくなります。
月に一度のオンライン診療の練習や、災害を想定した簡単なロールプレイ、タブレット端末の常設といった取り組みは、小規模多機能施設や特別養護老人ホーム、在宅介護支援など、さまざまな現場に転用可能です。
「やらない理由」を探すより、「どうすれば続けられるか」を考える姿勢が重要です。
結論
介護者として高齢者の災害対策を考えるなら、オンライン診療を特別なものとして扱うのではなく、日常のケアに自然に溶け込ませることが最善の備えです。
山形県戸沢村のように、かかりつけ医を中心に、介護現場が主体となり、地域全体で支えるモデルは、全国の介護現場に十分応用できます。
災害そのものは避けられませんが、備え方は選べます。普段使いの積み重ねこそが、高齢者の命と尊厳を守る、最も現実的な選択だといえるでしょう。



コメント