高齢者の移動難民は“老化”が原因ではない…介護者が見落とす環境とは?

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ライドシェアをあきらめるな 

規制改革こそ成長力のカギ

2026/02/08 11:30

日経速報ニュース

ライドシェアをあきらめるな 規制改革こそ成長力のカギ - 日本経済新聞
日本にまん延する「移動難民」問題の解決を目指すnewmo(ニューモ、東京・港)が1月、設立2周年を迎えた。この間、規制改革を巡る政治抗争に翻弄されてきた。設立当初は自民党での規制改革機運の高まりをうけて本格的なライドシェア事業を志した。だが...

【この記事の内容】

『毎月40万人…親が外出を諦める本当の理由!家族が気づけないサインとは?』

はじめに

高齢者の移動難民問題は、しばしば「高齢者自身の身体機能が衰えたから起きている」と捉えられがちです。

しかし実際には、その本質は本人の問題ではなく、「移動できる環境が貧しくなったこと」にあります。

介護分野には、ICF(国際生活機能分類)という考え方があります。

これは、人の生活機能は心身の状態だけで決まるのではなく、

「どんな環境に置かれているか」

「社会とどう関われているか」

といった外部要因によって大きく左右される、という考え方です。

この視点を移動の問題に当てはめると、「歩けないから外出できない」のではなく、「安全で、手頃で、柔軟に使える移動手段という環境が失われたから、外出できなくなった」という構造が見えてきます。

これは、社員の能力不足ではなく業務フローの不備が成果を下げている企業と同じ構図です。

個人の努力を求める前に、環境そのものを見直す必要があります。

本記事では、この考え方を軸に、高齢者の移動難民問題とライドシェアの可能性を、介護者の視点から考察していきます。

高齢者の移動難民とは何か

高齢者の移動難民とは、単に「移動手段がまったくない人」を指す言葉ではありません。

介護現場では、「移動できないことで生活の質が下がり始めている高齢者」を移動難民と捉えます。

具体的には、自家用車を運転できなくなったものの代替手段がなく、公共交通は減便や廃線で使いづらくなり、タクシーは料金面で継続利用が難しい、さらに家族に頼ることに心理的な負担を感じている、といった状況が重なった状態です。

こうした背景には、タクシー運転手の大幅な減少や、免許返納者の増加といった社会構造の変化があります。

これらは一人ひとりの努力ではどうにもならない問題であり、個人責任で片づけられるものではありません。

高齢者が移動難民に至る心境と背景

移動できないことは、高齢者にとって単なる不便さではありません。

外出できなくなることで、「誰かに迷惑をかけてしまう存在になったのではないか」という思いが強まり、自尊心が少しずつ削られていきます。

また、外出機会が減ることで人と会う回数が減り、社会との接点が薄れていきます。

通院や買い物を我慢するようになり、結果として心身の状態がさらに悪化する、という悪循環に陥るケースも少なくありません。

多くの高齢者が口にするのは、「まだ元気なのに、行けないから諦めるしかない」という言葉です。

これは身体の問題ではなく、選択肢を奪われた状態だと言えます。一方で、家族側にも悩みがあります。

仕事や子育てで送迎が難しく、事故のリスクを考えると運転再開を勧めることもできません。

タクシー代を長期的に負担することにも限界があります。

その結果、「行かせてあげたいけれど、現実的にできない」という板挟みの状況が生まれます。

日本版ライドシェアが介護現場で機能しにくい理由

結論から言うと、現在の日本版ライドシェアは、介護現場のニーズと十分に噛み合っていません。

最大の理由は、供給量が圧倒的に不足していることです。

利用できるドライバーの数は限られており、数百万人規模とされる移動に困難を感じる高齢者を支えるには到底足りません。

これは、少人数のスタッフで膨大な利用者を支えようとする事業所と同じで、構造的に無理があります。

もう一つの理由は、柔軟性の低さです。利用できる時間帯や条件が限られ、料金体系も分かりづらく、ドライバーによって高齢者対応への理解に差があります。

介護で言えば、身体介護が必要な人に対して家事援助しか提供できない状態に近いと言えるでしょう。

介護者として考えるライドシェアの現実的対策

ここで重要なのは、ライドシェアを単なる交通手段としてではなく、「介護予防のための社会インフラ」として再設計することです。

移動支援は、治療や介護が必要になってから行うものではなく、生活機能が落ちる前に介入すべき予防領域です。

ビジネスで言えば、トラブルが起きてから対応するのではなく、仕組みで未然に防ぐ考え方に近いです。

具体的には、介護や福祉の基礎知識を持つ人材がドライバーとして関わり、乗り降り時の見守りや声かけを当たり前のサービスとして組み込むことが考えられます。

また、通院、買い物、社会参加といった利用目的ごとに支援内容を想定し、安心して使える設計にすることも重要です。

さらに、自治体補助や定額制と組み合わせることで、「使うたびにお金を気にしなければならない」という心理的ハードルを下げることができます。

視点別に見る課題と対応の方向性

介護者の立場では、移動できないことが原因で生活機能が落ちていくケースが増えている点が大きな課題です。

そのため、ケアプランの中に移動手段や外出機会を明確に位置づける視点が求められます。

高齢者本人にとっては、誰かに依存しているという感覚や、自己決定が奪われる不安が課題になります。

自分で呼べて、自分で選べる仕組みを整えることが、尊厳の維持につながります。

家族にとっては、送迎の負担と「十分に支えられていないのではないか」という罪悪感が問題になります。

利用状況が見える仕組みや、緊急時の連絡体制があることで、精神的な負担は大きく軽減されます。

地域全体で見ると、移動できない高齢者が増えることで、商店や医療機関の利用者が減り、地域の活力そのものが低下していきます。

地域内で循環する移動の仕組みをつくることは、結果的に地域経済を守ることにもつながります。

介護福祉領域で起きていること

現在の介護福祉領域では、高齢者の自立が進む一方で、孤立も同時に進行しています。

介護人材は不足し、制度内サービスだけでは支えきれない場面が増えています。

その結果、制度外サービスへの需要が急速に高まり、テクノロジー導入と制度設計のズレが目立つようになっています。

これは、制度が現実のスピードに追いついていない典型的な例です。

結論

移動を「ケアの一部」として再定義する

高齢者の移動難民問題は、ライドシェアを交通の話として捉える限り、解決には近づきません。

移動をケアの一部、生活を支える基盤として再定義することで、初めて現実的な解決策が見えてきます。

移動できるから外出でき、外出できるから社会とつながり、社会とつながることで介護予防につながります。

介護者に求められているのは、送迎を代行することではなく、「移動できる環境を整える視点」です。

ライドシェアは、そのための重要な社会資源になり得ます。

今後の介護業界には、規制や制度、そして現場感覚をつなぐ視点が、これまで以上に求められていくでしょう。

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