70歳で限界?4割が“まだ働く”と答えた残酷な現実の落とし穴とは

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「70歳以降も働く」初の4割超え 

75歳以上は19%

日経郵送世論調査

2026/03/01 05:00

日経速報ニュース

「70歳以降も働く」初の4割超え 75歳以上は19% - 日本経済新聞
日本経済新聞社は2025年10〜12月に実施した郵送世論調査で、何歳まで働くつもりかを聞いた。70歳になっても働くと答えたのが42%で、18年の調査開始から初めて4割を超えた。「70〜74歳」が23%、「75歳以上」が19%だった。何歳まで...

【この記事の内容】

『知らないと危険…70歳就労で後悔する共通点とは?』

はじめに

介護の現場には「自立支援」という基本的な考え方があります。

これは、できないことを全面的に手助けするのではなく、本人ができる力を維持し、伸ばしていく支援のことです。

私はこの考え方を、70歳以降も働き続ける「生涯現役」というテーマに重ねて考えています。

介護における自立支援の構造を分解すると、

「機能を維持する」

「役割を持ち続ける」

「過度に奪わない」

という三つの要素があります。

これを高齢者就労に当てはめると、

「生活機能を守るために働く」

「社会との接点を持ち続ける」

「必要以上に引退させない」

という視点に置き換えることができます。

つまり、働くことは単なる収入確保ではありません。

社会とのつながりを保ち、心身の機能を維持する“社会的リハビリ”の側面も持っているのです。

本記事では、介護者の立場から、70歳以降も働くという選択をどのように支え、どう設計していくべきかを具体的に考えていきます。

なぜ70歳以降も働きたい人が増えているのか

結論から言えば、背景には経済的不安と役割喪失への恐れがあります。

近年の調査では、70歳以降も働く意思を示す人は約4割にのぼり、平均的な就労希望年齢も60代後半に達しています。

65歳以上の就業率は約4人に1人、65歳から69歳に限れば半数を超えています。 

一方で、老後に不安を感じている人は約7割以上といわれています。

この数字から読み取れるのは、「働きたい」というよりも、「働かざるを得ない」「働いていないと不安」という心理です。

高齢者の本音を整理すると三つあります。

第一に、年金だけで生活できるのかという経済的な心配です。

物価上昇や医療費の増加を考えると、将来への見通しは決して明るいものではありません。

第二に、社会から切り離されることへの恐怖です。

定年後に人間関係が急激に減り、「自分はもう必要とされていないのではないか」と感じる方は少なくありません。

第三に、健康維持への期待です。

働いているほうが元気でいられる」という実感を持つ人も多くいます。

ここで重要なのは、働くことが単なる労働ではなく、「生きがい」や「存在意義」の維持手段になっているという点です。

介護現場で起きていること

現場ではすでに変化が起きています。

70代でパート勤務を続けながら介護サービスを利用する方が増えています。

就労と通所介護を両立したいという相談も珍しくありません。

一方で、仕事による疲労が蓄積し、転倒リスクが高まるケースや、軽度認知障害の初期段階で業務ミスが増えるケースも見られます。

また、「フレイル」と呼ばれる、加齢により心身の活力が低下した状態との兼ね合いも大きな課題です。

働くことがフレイル予防になる場合もあれば、過度な負担が状態悪化を招くこともあります。

つまり、働くことは万能薬ではなく、設計次第で薬にも毒にもなるのです。

介護者視点での課題と対応

結論として、介護者に求められるのは「辞めさせる判断」ではなく「続けられる条件を整える判断」です。

課題は、疲労の蓄積、転倒や骨折のリスク、通院との両立、認知機能低下の見逃し、家族との意見対立など多岐にわたります。

ここでビジネスのプロジェクト管理を例に考えてみましょう。

大きなプロジェクトでは、無理に止めるのではなく、進捗管理やリスク管理を行いながら調整します。

同じように、高齢者の就労も「リスクマネジメント」の視点が必要です。

具体的には、勤務日数の見直し、体力評価の実施、業務内容の軽減、家族を含めた三者面談の実施などが考えられます。

重要なのは、「働くか、辞めるか」という二択にしないことです。

高齢者本人の課題と向き合う

本人の多くは「まだ大丈夫」と考えています。

それは前向きな姿勢である一方、自身の衰えを認めたくない気持ちの裏返しでもあります。

ここで必要なのは、プライドを傷つけずに働き方を変えていくことです。

たとえば、週5日勤務から週2日に減らす、責任の重い業務から補助的業務へ移行するなど、段階的な調整が有効です。

これは企業でいう「業務再設計」と同じ発想です。

ポジションを奪うのではなく、役割を再定義するのです。

家族視点の葛藤

家族は安全を最優先に考えます。

事故や体調急変、認知症の進行を心配します。

一方で、本人の意欲を尊重したいという思いもあります。

感情論だけでは対立が深まります。

そこで重要になるのが、健康状態や体力測定結果など、客観的な指標を共有することです。

事実を共有することで、冷静な話し合いが可能になります。

地域視点での課題

地域全体で見ると、高齢者が安心して働ける環境整備はまだ十分ではありません。

短時間勤務の仕組みや送迎体制、企業側の理解など、制度と実態の間にギャップがあります。

超高齢社会においては、労働力不足という外部環境も影響しています。

これは個人の努力だけで解決できる問題ではなく、社会設計の問題です。

国家は労働力を確保したい。

高齢者は生活を守りたい。

家族は安全を守りたい。

介護者はその調整役を担っています。

この四者の思惑が交差しているのが、70歳以降の就労問題なのです。

最終結論

70歳以降も働くこと自体が問題なのではありません。

問題は、支援の設計が追いついていないことです。

働くことは、経済的安定、孤立予防、認知機能維持、生きがいの確保につながります。

しかし、無理な働き方や孤立した就労は大きなリスクになります。

介護者に求められるのは、否定ではなく設計です。

働く意思を尊重しながら、危険を見える化し、家族と共有し、地域資源をつなぎ、安全に続けられる形へ調整すること。

生涯現役とは、働き続けることそのものではなく、役割を持ち続けることです。

これからの介護者は、単なる生活支援者ではなく、人生設計の伴走者であるべきです。

70歳以降の就労は個人の覚悟の問題ではありません。

社会全体で再設計すべきテーマです。

私たちはその最前線で、対立ではなく調整を、制止ではなく設計を、否定ではなく支援を選び続ける必要があります。

それこそが、これからの介護者の使命です。

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