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徳島県鳴門市、「仕事+旅」で
人手不足救う
介護や保育でも即戦力に
まちの未来図
2026/04/27 05:00
日経速報ニュース
【この記事の内容】
『2040年に介護士37万人不足…高齢者の仕事+旅しかない理由とは?』
はじめに
介護業界では、慢性的な人手不足が長年続いています。
たとえば厚生労働省関連資料をもとにした整理では、2025年には介護職員が243万人必要で、2040年には約280万人が必要とされており、毎年5万人規模の不足が続く見通しです。
求人を出しても応募が集まりにくく、採用できても早期離職につながる現場は少なくありません。
現場で働く職員の負担は増え、サービスの質維持にも影響が出やすい状況です。
しかし、ここで発想を変える必要があります。
人材を他施設と奪い合うだけでは、業界全体の人手不足は解決しません。
大切なのは、介護に関わる人そのものを増やし、地域と継続的に関わる「関係人口」を育てることです。
鹿児島市でも介護分野の求人倍率は3.96倍とされ、全産業平均の1.13倍と比べてもかなり高い水準です。
つまり、介護は「人が足りない」のではなく、「人が集まりにくい構造」にあると考えるべきです。
そこで注目されるのが、「仕事+旅」という考え方です。
これは、旅先で短期間働きながら、その地域の暮らしや魅力を知る仕組みです。
観光だけではなく、働く体験を通じて地域との接点をつくる新しい人材確保策といえます。
実際に国内では、旅をしながら地域で短期就労する発想が広がっており、各地で「お手伝いしながら旅する」仕組みも注目されています。
介護分野にこの仕組みを取り入れれば、人手不足対策だけでなく、将来的な採用、移住促進、地域活性化にもつながります。
今回は、介護者の視点から、高齢者の「仕事+旅」が介護業界にもたらす可能性を考察します。
なぜ介護業界は人手不足なのか
結論からいえば、介護サービスの需要が増える一方で、働き手が減っているからです。
高齢化の進行により、介護を必要とする人は今後も増えていきます。
その一方で、介護現場を支える生産年齢人口は減少しています。
さらに、身体介助や夜勤、精神的負担など、仕事の大変さが敬遠される要因になっています。
鹿児島県でも令和2年9月時点の介護関係の新規求人倍率は3.97倍で、全産業の1.85倍より高いとされており、地域差はあっても介護の採用難はかなり強い状況です。
また、「介護はきつい」「給与が低い」「休めない」といったイメージが先行し、実際のやりがいや専門性が十分伝わっていない点も課題です。
地方では若年層の都市部流出も重なり、人材確保はさらに厳しくなっています。
鹿児島市のように高齢化が進む地域では、この問題はさらに現実的です。
つまり、既存の採用方法だけでは限界があります。
外から新しい人の流れをつくる視点が必要です。
「高齢者の仕事+旅」とは何か
これは、元気な高齢者が一定期間地域に滞在し、軽作業や生活支援、介護補助などを行いながら、その土地で生活や交流を楽しむ仕組みです。
たとえば、1週間から2週間ほど地方に滞在し、日中はデイサービスでレクリエーション補助や見守り、利用者との会話支援を行います。
空き時間には観光地巡りや温泉、地域イベントへの参加などもできます。
国内には、短期就労と地域滞在を組み合わせた「旅しながら働く」発想のサービスもすでにあり、地域側と参加者側の双方にメリットがある形が少しずつ広がっています。
言い換えれば、「働く旅行」です。
高齢者にとっては、生きがいや収入、交流機会につながります。
地域にとっては人手不足対策になり、施設にとっては新たな人材との接点になります。
高齢者が参加したくなる心境と背景
高齢者視点
多くの高齢者は、退職後に社会との接点が減少します。
仕事を辞めたことで役割を失い、「まだ元気なのに必要とされていない」と感じる方もいます。
また、年金生活への不安、孤独感、生活リズムの乱れなども起こりやすくなります。
そのため、
「誰かの役に立ちたい」
「まだ働ける」
「新しい場所へ行ってみたい」
という思いは想像以上に強いものです。
そこに旅という楽しみが加われば、参加への心理的ハードルは大きく下がります。
家族視点
家族としても、親が家に閉じこもりがちになることは心配です。
運動不足、認知機能低下、うつ傾向、生活意欲の低下などにつながる可能性があります。
一方で、短期就労型の旅であれば、外出機会が増え、人との交流も生まれます。
親が元気に活動する姿を見ることで、家族も安心できます。
地域視点
地方では、介護人材不足、人口減少、空き家増加、地域コミュニティの弱体化などが同時進行しています。
そこに短期滞在型の就労者が来れば、働き手であり、地域の利用者であり、地域のファンにもなります。
これは単なる人材確保ではなく、地域再生にもつながる取り組みです。
介護現場で任せられる具体的な仕事
介護現場で重要なのは、専門職しかできない業務と、サポート業務を分けることです。
高齢者の仕事+旅で担いやすいのは、以下のような業務です。
利用者の話し相手、見守り、レクリエーション補助、配膳や下膳、タオル準備、清掃補助、シーツ交換、送迎時の誘導補助などです。
これらを担ってもらうことで、介護士は身体介助、緊急対応、ケア計画、医療連携など本来業務に集中できます。
全国的にも介護職員の必要数は2025年に243万人、2040年に約280万人と見込まれているため、専門職が専門業務に集中できる設計はますます重要になります。
つまり、介護職を増やすだけでなく、「介護職が介護に専念できる環境づくり」が重要なのです。
介護者視点で見たメリット
現場職員から見ると、この仕組みには現実的な利点があります。
まず、雑務負担が減ります。
細かな周辺業務を分担できれば、職員の疲労軽減につながります。
次に、利用者との会話時間が増えます。
介護職員が時間に追われず、丁寧な関わりがしやすくなります。
さらに、同世代の高齢者スタッフが入ることで、利用者との自然な会話が生まれやすくなります。
昔話や地域の話題など、職員にはできない関係性が築けることもあります。
職場全体の雰囲気が明るくなる効果も期待できます。
導入時の課題と対策
もちろん、導入には課題もあります。
まず安全面です。
高齢者自身が働く以上、無理な業務は避けなければなりません。
勤務時間は1日3〜4時間程度にし、健康確認や保険加入、送迎体制の整備が必要です。
次に、現場とのミスマッチです。
介護未経験者が急に現場へ入れば戸惑うこともあります。
仕事内容を限定し、初日に説明会や研修を行い、担当者がフォローする体制が必要です。
最後に継続性です。
単発イベントで終われば効果は限定的です。
リピーター制度、季節ごとの募集、移住相談窓口など、次につながる仕組みづくりが重要です。
鹿児島市のように求人倍率が高い地域ほど、単発ではなく継続参加につながる設計が成果を左右します。
介護者思考で考える介護業界の未来
農業では、繁忙期だけ外部人材を受け入れる仕組みがあります。
収穫期に必要な人数を確保し、地域ファンを増やし、将来的な移住にもつなげています。
この考え方は介護にも応用できます。
たとえば、
年末年始や行事シーズンだけ短期補助人材を募集する。
介護体験ツアーとして施設見学と仕事体験を組み合わせる。
参加者を将来の採用候補や地域応援者として育てる。
これは、常勤採用一本に依存しない「多層的人材戦略」です。
企業経営でいう販路拡大と同じく、採用も入口を増やした組織が強くなります。
介護福祉業界で起きている変化
現在の介護業界では、人材不足への対応としてさまざまな変化が起きています。
外国人材の受け入れ拡大、ICT活用、見守りセンサー導入、スポットワーク活用、介護助手制度、地域ボランティア活用、副業人材の参加などです。
つまり、従来の「介護士だけで支える時代」から、「多様な人材で支える時代」へ移行しています。
その中で、高齢者の仕事+旅は非常に相性の良い施策です。
短期参加でも地域に価値を生みやすく、関係人口づくりにも向いています。
介護施設が今すぐできる現実的な提案
施設運営側が実践するなら、まずは小さく始めることが重要です。
2泊3日のシニア就労体験ツアーを企画する。
地元高齢者に週2回だけ働いてもらう。
家族向け説明会を開く。
再参加者へ交通費補助を出す。
最初から完璧を目指す必要はありません。
小規模で始め、成功事例を積み上げることが大切です。
鹿児島市のように人材倍率が高い地域では、採用の入口を複数持つことが、現場を守る一番の近道になります。
まとめ
介護人材不足は「人を探す」から「人が集まる仕組み」へ
高齢者の仕事+旅は、単なる人手不足対策ではありません。
元気な高齢者の生きがいづくり、家族の安心、地域活性化、介護現場の負担軽減、将来的な採用や移住促進まで、複数の課題を同時に解決できる可能性があります。
介護人材不足は、求人広告だけで解決する時代ではありません。
国内では介護職員の必要数が2025年に243万人、2040年に約280万人とされ、鹿児島市でも介護分野の求人倍率は3.96倍に達しています。
旅、交流、体験、働く喜びを組み合わせ、人が自然に集まる入口をつくること。
これこそが、これからの介護業界に必要な新しい発想です。



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