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2026/06/08 17:18
日経速報ニュース
【この記事の内容】
『被害総額441億円…家族を守れない介護者が見落とす危険サインとは』
はじめに
特殊詐欺の被害は、ある日突然発生するわけではありません。
その前には必ず危険信号があります。
実際、警察庁の統計では、2024年の特殊詐欺被害件数は約1万9,000件、被害総額は約441億円にのぼっています。
これは1日あたり約52件、約1.2億円の被害が発生している計算です。
知らない番号からの電話が増える、不安をあおる内容の話を信じてしまう、家族への相談が減る、最新の詐欺手口を知らないなど、小さな要因が積み重なった結果として被害が発生します。
つまり介護者には、転倒予防や認知症予防と同じように、「詐欺予防」という新たな視点が求められているのです。
近年では、地域住民が日常的に利用する店舗や公共施設などでも防犯情報の発信が強化されています。
例えば東京都ではコンビニでの声かけにより年間数百件単位で被害を未然防止しており、地域ぐるみの対策が効果を上げています。
これは特殊詐欺被害の深刻化が社会問題となっているためです。
本記事では、介護者として高齢者を特殊詐欺から守るために必要な防犯情報の活用方法と具体的な対応策について考察していきます。
特殊詐欺が増加する背景
高齢者を狙う犯罪が高度化している
近年の特殊詐欺は、単純な電話詐欺から組織的かつ高度な心理操作を伴う犯罪へと変化しています。
代表的なものとして、還付金詐欺、架空料金請求詐欺、投資詐欺、SNS型ロマンス詐欺、サポート詐欺などがあります。
特にSNS型ロマンス詐欺は近年急増しており、2024年は全国で被害額が約200億円規模に達したとされています。
犯罪グループは人間心理を巧みに利用します。
まず不安を与え、次に焦らせ、最後に信頼させるという流れで相手を誘導します。
高齢者の中には「自分は騙されない」と考える方も少なくありません。
しかし実際には、被害者の約8割が60歳以上というデータもあり、その自信こそが警戒心を弱める要因になる場合があります。
特殊詐欺は知識不足だけでなく、人間心理の隙を狙う犯罪なのです。
情報格差が被害を拡大させる
特殊詐欺の手口は日々変化しています。
しかし高齢者の中にはインターネットやSNSを利用する機会が少なく、新しい犯罪情報に触れる機会が限られている方もいます。
総務省の調査では、70代のインターネット利用率は約60%前後にとどまり、若年層(90%以上)と大きな差があります。
その結果、過去には存在しなかった新しい詐欺手口への対応が遅れ、被害につながるケースがあります。
鹿児島県でも2024年の特殊詐欺被害は約4億円規模と報告されており、人口規模を考えると決して小さくない被害です。
介護現場でもデジタル機器への苦手意識を持つ高齢者は少なくありません。
この情報格差こそが、現代の特殊詐欺を拡大させる大きな要因の一つになっています。
高齢者が特殊詐欺に巻き込まれる心理的背景
不安が判断力を低下させる
高齢者は加齢に伴いさまざまな不安を抱えています。
年金生活への不安、健康への不安、将来の介護への不安、家族への心配などです。
実際、日本の高齢者世帯の約6割が「生活に不安がある」と回答している調査もあります。
不安が大きくなると、人は冷静な判断が難しくなります。
そのため、
「今すぐ手続きが必要です」
「お金を振り込まないと大変なことになります」
といった言葉に反応しやすくなります。
孤独が相談機会を奪う
独居高齢者や高齢者のみ世帯の増加も大きな課題です。
全国では65歳以上の単身世帯は約700万世帯を超えており、年々増加しています。
鹿児島市でも高齢化率は約30%前後に達しており、独居高齢者の増加が地域課題となっています。
日頃から相談できる相手が少ない場合、不審な電話を受けても一人で判断しようとしてしまいます。
「子どもに迷惑をかけたくない」
「こんなことを相談するのは恥ずかしい」
そのような気持ちが結果として被害を招く場合があります。
家族を思う優しさが悪用される
特殊詐欺の中には家族を装う手口があります。
孫や子どもを名乗る人物から助けを求められれば、多くの高齢者は力になりたいと考えるでしょう。
実際、オレオレ詐欺では被害の約7割が「親族を助けたい」という心理に基づいて行動したと報告されています。
つまり被害の背景には判断力の低下だけではなく、家族を大切に思う優しさが存在しています。
犯罪者はその善意を悪用しているのです。
防犯情報が持つ重要な役割
防犯情報は「詐欺予防のワクチン」である
介護予防では運動や栄養管理によって身体機能の低下を防ぎます。
特殊詐欺対策においては、防犯情報が同じ役割を果たします。
例えば、警察庁の報告では「事前に詐欺手口を知っていた人」は被害回避率が大きく高い傾向があり、未認知の人と比べて被害リスクが半減するとも言われています。
定期的に防犯情報へ触れることで、高齢者は危険な手口を知り、異変に気付きやすくなります。
また、怪しい電話を受けた際にも「以前聞いたことがある手口だ」と判断できる可能性が高まります。
知識は被害を防ぐ最大の防御策なのです。
日常生活の中で情報に触れることが重要どれほど有益な情報でも、高齢者の目に触れなければ意味がありません。
買い物、散歩、通院などの日常生活の中で自然に防犯情報へ触れられる環境づくりが重要です。
例えば大阪府ではATM周辺での注意喚起により還付金詐欺の被害を前年比で約20%減少させた実績があります。
地域にある店舗や公共施設などが防犯啓発の役割を担うことで、高齢者が繰り返し情報を目にする機会が増えます。
防犯意識は一度の啓発ではなく、継続的な情報発信によって育まれるものです。
介護者が実践したい特殊詐欺対策
介護者に求められるのは、被害が起きてから対応することではなく、被害が起きる前の予防です。
日頃から不審な電話の有無や困りごとを確認し、高齢者が相談しやすい関係を築くことが重要です。
また、留守番電話機能の活用により、実際に被害が約3割減少したという報告もあります。
さらに、
「お金の話が出たら必ず家族に相談する」
「ATMへ行く前に家族へ連絡する」
などの家庭内ルールを決めておくことで被害を防ぎやすくなります。
善策としては、
・週1回の「雑談電話」を家族ルールにする(相談ハードルを下げる)
・通帳やキャッシュカードの管理を見える化する
・地域包括支援センターとつながっておく
といった“日常に組み込む対策”が効果的です。
介護者の役割は見守りだけではありません。
高齢者が安心して相談できる環境を整えることも重要な支援なのです。
家族と地域が果たすべき役割
遠距離介護では高齢者の変化に気付きにくいという課題があります。
そのため定期的な電話やビデオ通話を習慣化し、日常的なコミュニケーションを維持することが大切です。
例えば週2回以上連絡を取っている家庭では、詐欺被害の発生率が低い傾向があるという調査もあります。
また、特殊詐欺対策は家族だけで完結するものではありません。
東京都では金融機関と警察の連携により年間1,000件以上の被害を未然防止しており、地域連携の重要性が数字でも示されています。
地域包括支援センター、介護事業所、警察、金融機関、自治会、民生委員などが連携し、地域全体で高齢者を見守る仕組みづくりが求められています。
介護福祉分野では独居高齢者の増加、老老介護の増加、認知機能低下者の増加、地域とのつながりの希薄化といった課題が進行しています。
これらは特殊詐欺被害を増加させる要因とも重なっています。
だからこそ、防犯対策は介護課題の一部として考える必要があるのです。
介護者思考で考える特殊詐欺対策
介護現場ではリスクマネジメントという考え方があります。
転倒事故を防ぐためには、危険な段差をなくし、手すりを設置し、日頃から見守りを行います。
特殊詐欺対策も全く同じ構造です。
危険な電話を遮断し(迷惑電話対策機器の導入率が高い地域では被害が約40%減少)、相談できる家族という手すりを設置し、防犯情報によって判断力を維持しながら見守りを継続することが重要です。
つまり特殊詐欺は「防犯の問題」であると同時に、「介護リスク管理の問題」でもあります。
介護者が持つ予防的な視点は、そのまま特殊詐欺対策へ転用できるのです。
まとめ
高齢者の特殊詐欺被害を防ぐためには、防犯情報を継続的に届けることと、介護者・家族・地域が連携した見守り体制を構築することが不可欠です。
特殊詐欺は単なる犯罪ではありません。
その背景には孤独、不安、情報格差、地域とのつながりの希薄化といった介護福祉分野が抱える課題があります。
これからの超高齢社会では、介護と防犯を別々に考えるのではなく、高齢者の生活を守る総合的な支援として捉えることが重要です。
介護者には身体の健康だけでなく、財産や生活の安全を守る視点も求められています。
高齢者が安心して暮らし続けられる地域社会を実現するためにも、今日からできる詐欺予防の取り組みを積み重ねていきましょう。



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