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時間割のない介護施設
「いしいさん家」
千葉・八千代-探訪
ググッと首都圏
2025/02/07 02:00
日経速報ニュース

【さこしんの所見】
「時間割なしの自由な介護施設は果たして成功するのか?課題と解決策」
はじめに
介護福祉の現場では、常に「効率」と「安全」を重視したサービス提供が求められます。
しかし、介護の現場が持つべき「心地よさ」や「個人の自由」の重要性が、近年ますます注目されています。
今回は、千葉県八千代市にある「いしいさん家」という介護施設の事例を通して、時間割のない介護施設がどのように利用者の自由な生活を支えているのか、またその理念が他の介護現場にどのように転用できるのかを考察していきます。

時間割のない介護施設の背景とは?
「いしいさん家」は、介護施設の常識を覆すような運営方針を採用しています。
通常のデイサービス施設では、食事や入浴の時間割が設定され、スタッフによる流れ作業が行われます。
しかし、ここでは決まったスケジュールがなく、利用者はその日の気分で自由に過ごすことができます。
このアプローチは、施設が掲げる「その人らしい生活を支える」という理念に基づいています。
施設の設立者である石井英寿代表は、大手介護事業所での経験を通して、効率最優先の施設運営に疑問を抱いていました。
50人を半日で流れ作業的に入浴させるという方法に違和感を感じ、その反動として「人として過ごせる場所」を作りたいという思いから「いしいさん家」を開設したのです。
自由な過ごし方がもたらす居心地の良さ「いしいさん家」では、利用者が自分の役割を持つことが居心地の良さに直結しています。
利用者一人ひとりが得意なことを活かして過ごすことができるため、施設内での時間がより豊かで有意義なものとなります。
例えば、ある女性は毎日台所に立ち、自分の得意な料理を振る舞っています。
また、別の利用者は庭にいるヤギの面倒を一人で見ています。
このように、施設内での役割を持つことが、利用者の心の安定や生活の充実感に繋がっています。
このような自由な環境は、介護者にとっても大きな気づきとなります。
介護福祉分野では、利用者に過度な負担をかけないことが重要視されていますが、「いしいさん家」ではその人に合った役割を与えることで、利用者自身が生きがいを感じ、満足感を得ることができるのです。

利用者・家族・地域の視点から見る課題と対応
1. 利用者視点
自由な過ごし方を提供する「いしいさん家」では、利用者が自分のペースで生活することができる一方で、完全に時間割がないことに対して不安を感じる方もいるかもしれません。
そのため、介護者としては、利用者の精神的な安定をサポートするために、柔軟で個別的な支援を行う必要があります。
2. 家族視点
家族にとっては、利用者が自由に過ごす施設であることが新しい選択肢として魅力的に映る一方で、無計画な生活に対して不安を抱えることもあるかもしれません。
家族と連携し、施設内での過ごし方がどのように個人の健康や心の安定に繋がるのかを説明することが重要です。
3. 地域視点
「いしいさん家」では、地域住民との交流が積極的に行われています。
地域の子どもたちが放課後に遊びに来たり、近所の住民と一緒にイベントを行ったりすることで、利用者と地域社会とのつながりが生まれます。
このような交流が介護施設における閉塞感を打破し、地域全体が共に支え合う環境を作り出します。

「いしいさん家」の哲学と介護の現場への転用
「いしいさん家」で採用されている自由な過ごし方と居心地の良さを支える哲学は、他の介護現場にも転用可能です。
現代の介護施設では、どうしても規則や安全が最優先される傾向にありますが、その中でも個々の利用者が主体的に過ごせる空間作りが必要です。
また、介護者としては、単に介護業務をこなすだけではなく、利用者一人ひとりが自分らしい生活を送るためのサポートをすることが求められます。
そのためには、柔軟なスケジュール管理や、個別の役割を見つける力が必要となるでしょう。
具体的な対応方法
個別支援の強化
利用者一人ひとりに合った役割を見つけ、自由に過ごす時間を提供する。
家族との連携
利用者の過ごし方について、家族に丁寧に説明し、理解を得る。
地域社会との協力
地域住民との交流を積極的に促進し、社会的孤立を防ぐ。

まとめ
「いしいさん家」のような時間割のない介護施設では、利用者が自分のペースで自由に過ごすことができ、個々の役割を持つことが居心地の良さに繋がります。
介護者としては、利用者が安心して自分らしい生活を送れるよう、柔軟な支援を提供することが求められます。
また、家族や地域と協力しながら、より豊かな介護環境を作り上げていくことが大切です。
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