認知症の関連記事
認知症は異常な世界か
自分の「当たり前」疑ってみれば
NIKKEI The STYLE「文化時評」
2025/03/30 05:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
「認知症の「異常な行動」その真実とは?あなたの常識が危ない!介護に携わる人、認知症のケアに関心があり、より深く理解したいと考えている人に読んでほしいです。」
はじめに
認知症の世界を理解するために
認知症の世界を理解するには、まず「異常」という前提を疑うことが大切です。
高齢者介護福祉では、「認知症患者の行動は理解できない」といった考え方がしばしば見受けられます。
しかし、実はその「理解できない」という感覚こそが、私たちが普段生活している社会の枠組みに縛られている結果かもしれません。
認知症を抱える人々の視点に立つと、彼らの行動や認識は「異常」ではなく、「異なる世界観」の一部であることに気づくはずです。
たとえば、認知症の方が同じ場所を何度も行ったり来たりする行動を見て、「徘徊している」と捉えがちですが、彼らにとっては見覚えのある道や建物が急に異なって見えることがあります。
こうした行動は、単なる迷子状態であり、周囲の人々がその認知症の人の世界を理解しようとしない限り、解決には至りません。

認知症と社会の認識のギャップ
認知症を取り巻く社会の認識には、依然として大きなギャップが存在します。
福岡市の認知症フレンドリーセンターのように、認知症の人々が暮らしやすい街づくりを進めるためには、デザインや環境への配慮が不可欠です。
例えば、認知症の方が使うトイレでは、目立つ場所に分かりやすいサインや色のコントラストが設けられています。
これは、認知症の方がどのように世界を認識しているのかを理解し、その視点で設計されています。
私たちにとっては「トイレはあそこ」と認識できることでも、認知症の方には不確かなものとなり得るのです。
しかし、現代社会は依然として効率性や合理性を重視しているため、認知症の人々にとっては、多くの場面で不便さを感じることがあります。
例えば、街中の美しいカフェの入り口の段差や改装中のブルーシートが引かれた場所などは、認知症の方にとっては危険な障害物に見えることがあるのです。
これらを理解せずに社会がデザインや設計を進めると、認知症の方が日常生活で困難を抱えることになります。
認知症観の変革と新しい視点の導入
新しい認知症観を広めるためには、認知症を「病気」としてだけでなく、「社会との関わりにおける問題」として捉える視点が必要です。
熊本大学の石原明子准教授が指摘するように、認知症の周辺症状は単なる「問題行動」ではなく、その背後にある「心の痛み」や「社会との摩擦」を理解することが求められます。
たとえば、暴言や徘徊などは認知症の方が他者との関わりの中で表れたものであり、それらを「問題行動」として捉えるのではなく、その背景にある認識のズレや感情を理解しようとするアプローチが大切です。
この新しい視点が、認知症の人々との共生を進める鍵となるでしょう。

介護者・家族・地域の視点で考える認知症
介護者視点
介護者として、認知症の方の行動を理解し、その背景にある心情や認識の違いを受け入れることが求められます。
私の経験では、認知症の方が繰り返し同じ言動や行動をすることに最初は戸惑いましたが、その行動が彼らなりのコミュニケーションの一部であると理解することができました。
例えば、「同じことを繰り返す」場合、その言動に対して否定的に反応するのではなく、共感し、穏やかな方法で対応することが重要です。
高齢者視点
高齢者の視点に立つと、認知症の世界は「不安」と「混乱」に満ちていることがわかります。
多くの認知症の方々は、記憶が曖昧になり、自分がどこにいるのか、何をしているのかが分からない状況に直面します。
このような中で、「孤立感」や「不安感」を軽減するためには、家族や介護者の寄り添いが大切です。
家族視点
家族の視点では、認知症の方が以前とは異なる行動を取ることに戸惑い、恐れを感じることが多いです。
しかし、その変化を「病気の症状」としてだけ捉えるのではなく、「人間としての一部の変化」として受け入れることが重要です。
認知症の方を支える家族としては、まず自分たちがその変化をどのように捉え、接するかが問われます。
地域視点
地域社会としては、認知症の方々がより住みやすい環境を提供するために、地域全体で認知症への理解を深めることが必要です。
福岡市のように認知症フレンドリーな施設や街づくりを進めることで、認知症の方が安心して生活できる社会が実現します。
また、地域のつながりを強化し、認知症の方が孤立しないよう支援することが求められます。

認知症との共生を目指して
結論として、認知症は「異常な世界」ではなく、私たちの社会とは異なる認識の世界であるという視点を持つことが、共生への第一歩となります。
認知症の人々が暮らしやすい環境を作るためには、社会全体の理解と、具体的なデザインや配慮が不可欠です。
介護者、家族、地域社会が一丸となり、認知症の方々の世界を理解し支援していくことが、これからの社会に求められています。
コメント