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貢献した分の遺産もらえる?
2025/04/22 05:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
「家族の犠牲が無視される!特別寄与料制度が知られていない現実」
はじめに
介護の現場では、表に出ることなく、家の中で高齢者を支え続ける存在がいます。
それは、施設の職員でも医師でもなく、家族です。
特に、義理の関係にある家族。
たとえば長男の妻などは、長年にわたって無償で介護を担いながら、その貢献が評価されることはほとんどありませんでした。
こうした背景から生まれたのが「特別寄与料制度」です。
この制度は、相続人以外の家族が行ってきた介護の労力や時間を、法的に「特別な貢献」として認め、金銭的に評価するための仕組みです。
介護者、高齢者、家族、そして地域という4つの視点から、この制度の意味と可能性を紐解いていきます。

特別寄与料制度とは?
特別寄与料制度とは、相続人ではない親族(例:長男の妻など)が、無償で介護や看護を行い、結果として被相続人の財産の維持・増加に貢献した場合に、その努力に対して金銭を請求できる制度です。
2019年の相続法改正によって新たに導入されました。
この制度を利用するには、次のような条件を満たす必要があります。
・介護などの労務を無償で提供していたこと
・その行為が「特別な寄与」に該当すること
・財産の維持や増加につながっていたこと
請求額の算出には、介護サービスの報酬相当(1日あたり5000〜8000円)を基に、介護期間や裁量割合をかけあわせて決定します。
たとえば5年間の介護を行った場合、600万円から1000万円程度となるケースもあります。

介護者の視点:ようやく報われる時代へ
これまで、家族がどれだけ介護に尽力しても、「家族だから当然」という空気が支配しており、感謝や報酬は見えづらいものでした。
とくに、義理の関係にある介護者は、声を上げること自体にためらいを感じることが多くありました。
この制度の登場によって、「家族内のケア」も社会的に価値ある行為であるという認識が広がりつつあります。
介護が「報われる行為」として見直されることは、今後の介護者のモチベーションにも大きな影響を与えるはずです。

高齢者の視点:頼る不安と、報いてほしい願い
介護を受ける高齢者にとって、家族に迷惑をかけているという気持ちは常に付きまといます。
「介護してもらっているが、それに報いる方法がない」という無力感もよく聞かれます。
特別寄与料制度は、高齢者の心に「この介護は意味がある」「自分の介護が家族にとって負担だけではない」と思わせてくれる制度です。
精神的な安心感をもたらす意味でも、この制度の存在は大きいのです。

家族の視点:分断を防ぎ、対話を促す
相続の場では、介護に関する不公平感がトラブルの火種になることが多くあります。
「同じ相続を受けるのに、兄は介護に関わらなかった」「私は何年も介護したのに評価されない」こうした声が家庭内に分断を生むのです。
特別寄与料制度を知り、介護の事実を記録し、家族で共有しておくことで、相続時の誤解や不満を最小限に抑えることができます。
制度をきっかけに、家族の間に「感謝の対話」が生まれるのです。

地域の視点:介護の家庭依存からの転換
現在、日本では介護の約7割が家庭内で行われています。
この状況は、社会として介護を「家族の責任」と捉えすぎている証でもあります。
特別寄与料制度は、家庭内の介護を正当に評価する制度として、地域社会にも大きな影響を与えます。
たとえば、制度をきっかけに以下のような動きが期待できます。
・地域の支援拠点による制度説明会の開催
・士業との連携による制度活用支援
・家庭と地域の協力による負担の分散
地域全体で介護を支える仕組みを作るための「入り口」として、この制度は重要な位置づけにあります。

結論
制度を知ることが、家族と社会を守る第一歩
介護は、ただの労働ではありません。
人生の最後を、最も近しい人が支えるという深い営みです。 その営みを、社会が評価し、仕組みとして守る。
それが「特別寄与料制度」の本質です。
制度を理解し、家庭で話し合い、地域と連携していくことが、これからの「介護する社会」と「介護される社会」のバランスを築いていく土台になります。
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