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慶大、
超高齢期における認知機能低下と
アルツハイマー病で異なる
認知特性を発見
2025/04/24 14:52
日経速報ニュース

【この記事の内容】
「知らなきゃ危ない!アルツハイマー病と“普通の物忘れ”を見分けるチェックポイント」
はじめに
研究が示す「加齢による認知低下」と「アルツハイマー病」の本質的な違いとは?
道に迷う、言葉が出ない、ご飯を食べたかどうかを忘れる。
これらは同じ“物忘れ”のようでいて、実は背景にある原因が異なります。
慶應義塾大学の研究で「加齢に伴う自然な認知機能の低下」と「アルツハイマー病」は、症状の現れ方もそのメカニズムも全く異なるものだとわかったのです。

研究で明らかになったこと
百寿者とアルツハイマー病患者の比較
この研究では、100歳を超える高齢者(百寿者)とアルツハイマー病患者を比較し、それぞれの認知特性の違いを詳しく調査しました。
百寿者の中には物忘れのある方もいますが、記憶力の一部が保たれており、生活に必要な判断力は維持されています。
一方、アルツハイマー病では、脳に蓄積する異常なタンパク質が原因で、日常生活に深刻な支障をきたす認知の混乱が起きます。
さらに、遺伝子レベルで見ても違いがありました。
百寿者は神経細胞同士のつながり(シナプス)を保つ働きのある「PTPRT遺伝子」が関係していたのに対し、アルツハイマー病では「ApoE4」という、脳に悪影響を与える物質を蓄積させる遺伝子が主な要因として知られています。

介護者としてどう向き合うか
認知の質に応じた支援が重要
結論として、超高齢期の認知機能低下とアルツハイマー病では、介護のアプローチを変える必要があります。
加齢による認知低下は、刺激や対話などにより緩やかな進行を抑えることが可能です。
たとえば、「お茶を淹れてもらう」「新聞を読んでもらう」といった小さな役割を持たせることで、本人の自尊心や意欲を支えることができます。
一方で、アルツハイマー病の場合は、症状の進行に応じて「混乱を防ぐ環境づくり」「生活の予測可能性を高める支援」が求められます。
たとえば、毎日の行動をルーティン化したり、記憶を補う表示物を活用することで、本人の不安を軽減する工夫が重要です。

家族や本人の視点
不安の正体を見極め、安心に変える
「これは年齢相応の物忘れ?それとも病気?」 こうした疑問を家族が抱えるのは当然です。
大切なのは、症状の“量”ではなく“質”に注目することです。
慶應大学の研究は、こうした判断の一助になる具体的な指標を与えてくれました。
家族は、早めに専門職と連携し、MMSE(認知機能検査)などの評価を受けることで、適切な対応策を見出せます。
本人にとっても、「自分の変化を知ること」は、不安を受け入れ、前向きに生きるきっかけになります。
地域で支えるという視点
一人ひとりに合った柔軟な支援を認知症や加齢による認知低下は、個人差が大きいため、地域社会には「柔軟性のある支援体制」が求められます。
見守りや声かけだけでなく、認知機能の段階に応じた多様な活動機会の提供も重要です。
地域包括支援センターや自治体は、アセスメント(状況評価)を行い、一人ひとりに合った支援メニューを整備すべきです。
脳トレや健康教室のような予防的取り組みが、地域全体の“認知力”を底上げする鍵となります。

現場で起きている課題とこれからの対策
介護の現場では、次のような課題が見られます。
・認知症をひとまとめにしたケアが行われがちである
・MMSEなどの客観的な評価がまだ浸透していない
・医療との連携不足により、介護現場だけでの判断に偏りがち
こうした課題に対しては、以下の対策が必要です。
・ケアカンファレンスで「その人の認知の特性」を共有する文化をつくる
・介護スタッフに向けた遺伝子や脳科学の基礎教育を導入する
・科学的なデータに基づいた個別ケア(LIFEなど)を推進する

まとめ
介護者は“違いに気づく力”を持つ専門職である
この研究が示したのは、「同じように見える症状でも、中身はまったく違うかもしれない」という気づきの重要性です。
アルツハイマー病か、加齢による自然な変化かを見極めることで、私たち介護者はより効果的で、本人にとって安心できる支援ができます。
そして、本人・家族・地域・医療すべてがつながり、それぞれの役割を果たすことこそが、これからの超高齢社会における“認知症にやさしい社会”の実現につながるのだと感じています。
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