家族がいなくて“詰む”高齢者が抱える盲点

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高齢者の生活、

家族に頼らない仕組みを 

2025/04/28 02:00

日経速報ニュース

高齢者の生活、家族に頼らない仕組みを 大江加代氏 - 日本経済新聞
年金法案がいまだに国会に提出されず気になっている。多くの人の暮らしに影響を与える制度の変更は、決定してから相当な時間をかけて施行される。そのため時代に合わせたアップデートは急がねばならない。医療、介護、遺体や遺品の始末についても、そろそろ仕...

【この記事の内容】

介護が破綻する家庭の共通点とは?なぜ9割の高齢者が支援制度を活用できていないのか?

はじめに

現場で直面する「家族前提」の限界

介護の現場では、多くの手続きが家族を前提として進められています。

入院の保証人、延命治療の同意、介護保険の申請や施設への入居準備。

これらは、本人の判断力が低下した場合、家族が代行することを前提としています。

しかし実際には、以下のようなケースが珍しくありません。

・家族がいない、または遠方に住んでいる

・家族関係が断絶している

・高齢者本人が「家族に頼りたくない」と望んでいる

こうした場合、制度と現実との間に大きなギャップが生まれます。

また、日常生活の中の「ちょっとしたこと

スマホの設定、家具の移動、ゴミ出しなども家族が無意識に担っている部分です。

しかしこれを外部に頼もうとすると、契約の煩雑さやコストの高さが大きな壁となります。

「迷惑をかけたくない」高齢者の想い

多くの高齢者は、「家族に面倒をかけたくない」「自分のことは自分で決めたい」と願っています。

特に認知症の初期段階にある方からは、「これ以上子どもに迷惑をかけたくない」といった声をよく聞きます。

この気持ちは、自立したいという強い意志と、家族への配慮から生まれています。

家族のジレンマ

支えたいけれど支えきれない一方、家族にも葛藤があります。

親を支えたい気持ちはあるものの、仕事や子育てとの両立が難しく、介護に十分な時間を割けない現実があります。

また、「どこまで支援すべきか分からない」「親が頼ってこないから逆に心配」といった声も聞かれます。

こうしたすれ違いから、家族内の不和や精神的な疲弊が生じ、結果的に共倒れを招くリスクもあります。

地域という第三の支え

支援の再構築が急務

家族だけでは支えきれない時代において、地域によるサポート体制の再構築が求められています。

たとえば、

・地域包括支援センターが福祉・医療の相談窓口として機能

・郵便局員や新聞配達員による見守り活動

・ボランティアによる買い物代行やゴミ出し支援

といった活動が各地で行われています。

ただし、こうした支援は地域によって偏りがあり、都市部と地方で差が大きいのが課題です。

今後は行政主導で基盤を整備し、民間やNPOとの連携を広げていくことが求められます。

今後の方向性

誰もが安心できる社会構造を

高齢化が進み、「おひとりさま高齢者」の増加は避けられません。

今後必要なのは、「家族がいなくても安心して暮らせる社会」です。

たとえば、

・第三者が医療同意や保証人になるための制度整備

・金融機関による代理人登録制度の活用促進

・日常支援を網羅するリーズナブルなパッケージサービスの開発

・成年後見制度の利用促進と支援強化 など、制度的

・実務的な仕組みの整備が必要です。

介護者としての私たちの役割

私たち介護者は、利用者が家族以外の選択肢を持てるように支援し、地域資源と連携しながら高齢者の意思を尊重する介護を心がける必要があります。

介護の現場から制度や仕組みに声を届け、よりよい社会づくりに貢献する。それこそが私たちの使命です。

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