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廃業相次ぐ銭湯、
東京都が承継支援
マッチングや改修後押し
2025/04/29 02:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『たった10年で6分の1に!東京の銭湯が“消滅”する理由…銭湯が消える街高齢者が抱える“3つの喪失”とは?』
はじめに
廃業が進む銭湯!高齢者にとっての大切な「居場所」を守るために
介護の現場では「入浴=尊厳の回復」という考え方が根付いています。
介護福祉の現場では、入浴は単に体を清潔に保つための行為ではありません。
それは高齢者が「自分らしさ」や「人とのつながり」を感じるための大切な時間です。
この視点を地域に広げてみると、銭湯もまた単なる入浴施設ではなく、特に高齢者にとっては日々の生活のリズムや心の拠り所となってきたのではないでしょうか。

高齢者が銭湯を失うと何が起こるのか
1. 外出と交流の機会が減る
銭湯は、高齢者にとって数少ない「気軽に出かけられる場所」です。
家に閉じこもりがちな日常の中で、同年代の人たちと自然に会話ができる空間は貴重です。
これがなくなると、
・孤立が進み、心身の健康を損なう可能性がある
・血行促進やリラクゼーションといった入浴の健康効果が得られにくくなる
・生活のリズムが崩れ、日常のメリハリが失われてしまう
2. 地域の文化や風景が消えていく
銭湯は建物のデザインや利用者のふるまいに地域特有の文化がにじむ場所です。
特に東京型銭湯と呼ばれる建物は、社寺のような外観が特徴で、風情があります。
それが消えることで、
・代々受け継がれてきた地域の記憶が途絶える
・街の魅力が失われ、住民の誇りが薄れる
・商店街などの地域経済にも悪影響が出る
3. 地域の見守り機能が弱まる
銭湯は、ただの施設ではなく、地域の「見守りステーション」としての機能も果たしてきました。
店主や常連がさりげなくお互いを気にかけることで、安否確認の役割を担っていたのです。

なぜ銭湯の承継は難しいのか?
銭湯の経営を引き継ぐには多くの障壁があります。
老朽化した設備:ボイラーや配管の修理には多額の費用がかかります。
経営者の高齢化:体力的にも精神的にも継続が難しくなっています。
感情的な問題:「自分の代で終わらせたい」と考える経営者も多く、承継に抵抗を持つ人もいます。
法律や資金面での不安:新しい経営者が安心してスタートできる環境がまだ整っていません。

東京都の支援制度に期待される役割
東京都は2025年度から、銭湯の後継者支援に本腰を入れます。
特に以下の施策に注目が集まっています。
・後継者の経済的負担を軽減する(改修費や賃料の補助)
・営業許可を新たに取得せず、スムーズに引き継げるようにする
・コンサルタントを活用したマッチングで「譲りたい人」と「継ぎたい人」をつなぐ
これにより、経営継続の可能性がぐっと高まりそうです。

それぞれの立場から見る課題と対応策
介護者・高齢者・家族・地域のそれぞれに、銭湯の存在は大きな意味を持ちます。
介護者
高齢者の外出機会が減り、閉じこもりがちになるリスクが増す
→行政と連携し、地域資源としての銭湯を活用する
高齢者
会話や交流の場を失い、心の健康を損ないかねない
→サロンや地域の見守り機能を持つ場として再活用する
家族
在宅介護の負担が重くなる可能性がある
→銭湯での入浴支援を通じて家族の負担を軽減する
地域
空き家や廃業店舗が増え、地域活性化に悪影響
→銭湯を観光やイベントの拠点にして街の魅力を維持する

介護福祉の視点で私たちができること
私たち介護福祉従事者には、地域の銭湯を「生活支援の場」として再認識する役割があります。
・地域の銭湯と協力し、入浴支援付きの外出プログラムを作る
・高齢者にとっての「役割」や「喜び」を感じられる場所として再評価する
・地域包括ケアの一環として、銭湯を見守りや交流の場として活用する

まとめ
高齢者の心をつなぎ、地域の個性を守るために
銭湯の廃業は、施設の閉鎖という以上に、「高齢者の心の居場所」が失われることを意味します。
その文化と人とのつながりを次の世代に引き継ぐには、介護者や地域の理解と支援が不可欠です。
東京都の新しい支援制度を「制度」にとどめず、「人をつなぐ仕組み」として活かすこと。
それが、高齢者の尊厳を守り、地域の魅力と温かさを未来に伝える鍵になるのです。
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