踏切事故の関連記事
「勝手踏切」なお1万5000カ所
進まぬ解消、
横断事故絶えず
2025/04/30 18:57
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『失われた10年!1割しか減らない1.5万カ所の危険地帯…なぜ高齢者は渡り続けるのか?』
はじめに
「勝手踏切」1万5000カ所、事故が絶えない背景と介護者の役割介護福祉の現場では、「生活動線」という重要な考え方があります。
これは、高齢者が日常生活の中で安全かつ無理なく移動できるように環境を整えることを意味します。
たとえば、トイレまでの距離が長いと転倒リスクが高まりますし、わずかな段差でも大きな事故につながります。
この「生活動線」の視点から考えると、高齢者が利用する「勝手踏切(非公式な線路横断場所)」は、単なる違法行為として片付けることはできません。
特に遠回りをすることが体力的に難しい高齢者にとって、これらの場所は生活に必要不可欠な通路となっているのです。
結論
高齢者の踏切事故を防ぐには、「生活動線」と「地域の声」に基づいた柔軟な対応が不可欠です。
勝手踏切を封鎖することは、理屈の上では安全対策かもしれませんが、実際には別の場所に新たな危険が生まれる「いたちごっこ」になる恐れがあります。

なぜ勝手踏切は減らないのか?
現在、全国には約1万5000カ所の勝手踏切があります。
その多くは、もともと人が頻繁に通っていた道に鉄道が後から敷かれたという歴史的経緯を持っています。
こうした場所では、地元住民、特に高齢者が日常的に利用しており、封鎖されることで生活の質が著しく損なわれるケースも少なくありません。
高齢者の心理と行動背景
・長年使い慣れた道を通りたいという気持ち
・認知症などにより危険性の判断が難しくなる
・体力の衰えで、遠回りが現実的でなくなる
・代替交通手段や歩行環境が未整備
介護現場の実例と課題
介護現場でも「柵を乗り越えてしまった」「線路内で迷っていた」といった事例があります。
こうした行動の背景には、以下のような課題があります。
・判断力や記憶力の低下により、自分が危険な場所にいることに気づけない
・地域や家族とのつながりが薄れ、無理な行動に出てしまう
・公共交通の不足や歩道の整備不足で、安全なルートを選べない
・法制度と実際の生活の間にギャップがあり、現実を無視した施策になることもある
家族も悩んでいる
・外出を制限したいが、強く制限すると認知機能の低下を招く
・仕事の都合で常に見守ることができず、不安が大きい
・行動範囲が狭まり、本人のストレスが高まる
地域住民の声と対話の必要性
勝手踏切の封鎖に住民が反対するのは以下のような理由からです。
・高齢者にとって遠回りは大きな負担となり、生活の質が落ちる
・新しく整備された歩道橋や地下道が実際には使いづらい
・一部だけ封鎖されることで、不公平感が強まる

解決へのアプローチ:介護と地域の連携が鍵
1. 地域包括ケアと安全対策の連動
介護と交通安全を切り離さず、互いに連動させることで、地域に合った対応が可能になります。
見守り体制の強化や、移動に関するサポート体制の構築が必要です。
2. 柵ではなく「スマート警告」へ
センサーやライト、音声によって、線路への侵入を即座に知らせる仕組みは、高齢者にとっても負担が少なく、安全に役立ちます。
3. 移動支援サービスの整備
電動カートの貸出や移動ボランティアの活用、地域バスの導入など、移動手段の選択肢を増やすことで、勝手踏切の必要性を減らせます。
「福祉」と「交通」が交わるところに解決がある 介護の現場では、段差をなくすだけでなく、情報の伝え方や制度のわかりやすさまで含めて「バリアフリー」を考えます。
勝手踏切の問題もまた、単なる物理的な封鎖だけでなく、「どうすれば不安なく移動できるか」という心理的・制度的な支援が必要なのです。

まとめ
地域・介護・行政が共に考える時代へ
・勝手踏切は、「危ない場所」ではなく「使わざるを得ない道」であることが多い
・高齢者の行動には、生活の必要性や心身の事情が関わっている
・封鎖ではなく、代替ルートの整備や生活支援、地域の声を組み合わせた多面的な対応が必要
介護者として、単なる安全対策の提案ではなく、「暮らしの質」を守る視点から地域と行政をつなぐ役割を果たしていくことが、いま求められています。
コメント