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認知症薬レカネマブの普及遅れ
2025/05/05 02:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『年間298万円の現実…本人・家族がレカネマブ治療や導入を断念する理由とは?』
はじめに
高齢者介護の現場では、新しい制度や薬を取り入れる前に「準備」が整っているかどうかを確認することが大切です。
たとえば、現場の負担、本人の理解、家族の協力、地域の支援体制などがそれにあたります。
アルツハイマー病の治療薬レカネマブは、まさにこの「慎重な判断」が必要な選択肢です。
橋の向こうにあるのは希望かもしれませんが、その一歩手前にある足場を見極める冷静さが求められます。

レカネマブとは
画期的だが現実的な壁もある薬レカネマブは、アルツハイマー病の原因とされる「アミロイドベータ」という異常タンパク質に直接作用する初の治療薬です。
すでに日本を含む各国で承認されており、進行を遅らせる可能性が期待されています。
しかしながら、治療にはいくつかの課題があります。
たとえば、事前に高額で体への負担も大きい検査(PET検査や脳脊髄液の採取)が必要で、点滴による静脈注射には毎回1時間かかります。
さらに、専門施設での継続的な通院が必要で、年間の治療費は約298万円(保険適用)と高額です。

介護者が取るべき行動
治療と生活のバランスを見極める
結論
介護者として、効果と負担のバランスを見ながら、導入の是非を慎重に判断することが求められます。
対応のポイント
医師との十分な話し合い:患者本人に合った治療かどうかを見極めましょう。
地域包括支援センターの活用:費用面や通院支援の情報が得られます。
本人の意思を確認:早期であればこそ、本人の意向を尊重した判断が可能です。
体験談の共有:同じ立場の家族と情報交換することで、より実情に即した判断ができます。

高齢者本人の心情
希望と不安が交差する本人の多くは「進行を遅らせたい」という期待と、「検査が怖い」「家族に負担をかけたくない」という不安を同時に抱えています。
このようなとき、介護者は専門用語を避けた丁寧な説明と、そばで寄り添う安心感を提供することが大切です。
本人の気持ちに共感しながら、前向きな一歩を支える役割が求められます。
家族の現実
感情・時間・お金の重み家族には大きな判断責任と日常的な負担がかかります。
・経済的には、医療費の多くが保険で補填されるとはいえ、出費は重く感じられることもあります。
・精神的には、「この選択が正しいのか」という迷いが常につきまといます。
・時間的には、送迎や付き添いの負担が継続します。
そのため、介護休業制度や親族との協力体制を早めに整えておくことが、長期的な支えになります。
地域社会の課題
支援体制の不均衡
地方では、レカネマブを扱える医療施設が少なく、通院が困難な高齢者も少なくありません。
地域ごとの医療資源や福祉支援には格差があり、対策としては在宅での皮下注射の開発や、訪問診療体制の強化が求められています。
地域包括ケアの仕組みの中で、医療と福祉の連携を深める必要があります。

現場で起きていること
声と現実のギャップ
介護現場では、「治療薬はないのか?」と質問されることが増えています。
しかし、実際には「通院ができない」「検査が受けられない」といった現実的な壁が立ちはだかっています。
また、希望的観測で治療を始めたものの、家族が疲弊してしまったというケースもあります。
導入の前に、負担と支援を天秤にかけた現実的な検討が不可欠です。

まとめ:4つの軸で考える、介護者の冷静な判断
介護者は、次の4つの視点から冷静に検討を行いましょう。
1. 医療的な適応性:医学的に治療が必要か。
2. 経済的な持続可能性:費用と支援制度の活用可能性。
3. 生活面の影響:通院や副作用、日常生活への影響。
4. 本人と家族の意思:後悔しない選択のための合意形成。
治療薬は「未来への希望」を与える一方で、「今ある現実」への向き合いも求められます。
レカネマブが希望をもたらす架け橋となるには、その足元を固める冷静さと準備が必要です。
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