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ペットが自分より長生きしたら
飼い主高齢化、
預け先に苦慮
2025/05/08 05:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『15年生きる犬猫、あなたが先に逝ったら誰が世話を?』
はじめに
高齢者とペットの共生を考える
ペットは単なる癒しではなく、「今日も生きよう」と思わせてくれる存在です。
しかし近年では、ペットも人間と同様に長生きするようになり、「自分より長く生きるかもしれない存在」として新たな課題を生んでいます。

高齢者にとってペットは“暮らしのパートナー”
高齢者がペットと暮らすことは、以下のような効果をもたらします。
・毎日の餌や散歩の時間が生活にリズムを生む
・会話や触れ合いが精神的な安らぎとなる
・散歩による軽運動で体力を維持できる
・認知症予防や孤独感の緩和につながる
特に独居の高齢者にとって、ペットは「家族代わり」となる大切な存在です。
しかし「自分が先に逝ったら?」という不安も犬や猫の寿命は年々延びており、今では15年近く生きることも珍しくありません。
一方で、飼い主も年齢を重ね、80代でペットを飼う人も増えています。
このような中で、「もし自分が病気や事故でペットの面倒が見られなくなったらどうしよう」という不安が現実のものになりつつあります。
なぜ「備え」が進まないのか
高齢者がペットの将来を考える際、次のような壁があります。
・「うちの子の方が先に死ぬから」と考え、備えを先延ばしにしてしまう
・引き取り手が見つからない
・引き取り費用や信託手続きなどが煩雑で難しいと感じる
実際、私たちの介護現場でも、ペットがネックとなり施設入所が遅れるケースがあります。
ペットの引き取り先が確保できなければ、介護サービスすら活用できないのです。

4つの立場から見る課題と解決の方向性
高齢者とペットの問題は、1人で解決するのが難しいからこそ、多方面からのサポートが必要です。
介護者の立場
介護保険ではペットの世話は対象外。
地域包括支援センターなどと連携し、相談窓口を強化する必要があります。
高齢者本人の立場
早めにペットの将来について話し合い、備えることが大切です。
家族の立場
引き取れない事情があっても、遺言や信託などの制度を使って協力する方法があります。
地域社会の立場
行政や保護団体、老犬・老猫ホームなどと連携し、引き取り手のネットワークを整える必要があります。

具体的な備えとしてできること
高齢者が元気なうちに次のような準備をしておくことが理想です。
ペット信託
信頼できる人に資金を託し、ペットの世話を委ねる制度
遺言書
誰にペットを託し、どう資金を渡すかを明文化する
引き取り先の事前契約
保護団体や施設と事前に話をつけておく
家族との対話
いざというときどうするか、現実的な話し合いを持つ
こうした備えによって「ペットを手放さずに安心して暮らせるようになった」という高齢者の声があります。

命を預かるという重みと社会的責任
ビジネスに置き換えるなら、ペットを飼うことは「プロジェクトを最後まで責任を持って遂行する契約」に近いものです。
契約に見合う資金と人員の手配がなければ、途中で破綻するリスクをはらみます。
それと同じように、ペットの一生を預かる責任を果たすには、個人の善意だけでなく、仕組みや準備が不可欠です。
この問題はもはや個人や家庭の中に閉じた話ではありません。
地域、行政、専門家が一体となって支えながら、「社会福祉の新たな課題」として捉える必要があります。

結論
高齢者とペットが安心して暮らせる社会へ
高齢者にとってペットは心と体を支える大切な存在です。
その効用を活かすには、飼育の責任を持ちながら、将来のリスクにも備えることが欠かせません。
介護、家族、地域、制度。それぞれが連携することで、誰もが安心してペットと暮らせる社会が実現します。
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