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ピロリ除菌後の胃がんリスク予測、
遺伝子異常手掛かり
星薬科大など
2025/05/12 05:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『胃がん発症リスクが高まる高齢者の共通点』
はじめに
ピロリ菌を除菌すれば胃がんのリスクは下がりますが、それだけで完全に安心できるわけではありません。
最近の研究では、除菌後にも一定のリスクが残ることが明らかになっており、それを事前に予測できる新たな技術が開発されました。
ピロリ菌と胃がんの関係を改めて理解する
ピロリ菌とは?
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の中に棲む細菌で、長期的に感染すると慢性胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんを引き起こすことがあります。
特に現在の高齢者層では、幼少期の衛生環境などが原因で感染率が高い傾向にあります。
除菌後も残るリスクの理由
ピロリ菌を除去すれば、たしかに胃がんのリスクは大きく下がります。
しかし、すでに胃の粘膜が萎縮している場合、がん化のリスクは完全には消えません。
こうしたリスクに対応するため、研究者たちは、除菌済みの高齢者の胃細胞を調査し、がん関連の遺伝子異常の割合からリスクを分類する新技術を発表しました。
胃がんリスクを分類する新技術の意義
この研究では約1600人の高齢者を対象に、胃粘膜の萎縮と遺伝子異常を調査。
その結果、異常の割合が最も高いグループでは、最も低いグループの約7.7倍もの胃がん発症リスクがあることがわかりました。
この技術の最大のメリットは、「誰が特に注意すべきか」を可視化できる点です。
予防における優先順位が明確になり、限られた医療資源の有効活用にもつながります。

介護の現場における実践と課題
介護者の立場から
高齢者の健康状態を日常的に把握する介護者は、この新技術の活用において重要な役割を果たします。
リスクの高い高齢者には検診の受診を促し、医療機関と連携することで早期発見につなげることが可能です。
高齢者本人の立場から
除菌後は安心してしまいがちですが、実際には継続的な観察が必要です。
新しい検査技術によって、自分のリスクが具体的にわかれば、納得して検診を受ける動機付けになります。
家族の立場から
親の健康が数値で可視化されることで、検診の同行や受診促進といったサポートもしやすくなります。
一方で、遺伝子情報を扱うことへのプライバシーへの配慮も不可欠です。
地域や制度の課題
この技術を普及させるためには、地域の医療体制や検診制度との連携が不可欠です。
特にリスクの高い高齢者を優先的にフォローアップする制度整備が求められます。

現場で起きている5つの課題
1. 検診の受診率が低い
通院が難しい高齢者が多く、検診を避ける傾向があります。
2. 情報格差が大きい
高齢者やその家族が、胃がんリスクを正しく理解できていない場合があります。
3. 医療と介護の連携不足
日常の介護と医療側との情報共有が不十分です。
4. 健康管理の限界
介護施設では、簡易な健康チェックに留まることが多いです。
5. 検査に対する不安
遺伝子検査に対して抵抗感や不安を感じる人も少なくありません。
介護者として取り組むべき具体策
1. 医師としっかり連携し、胃の状態や検診履歴を共有する。
2. 新技術の仕組みや意義を高齢者にわかりやすく説明する。
3. 家族とも情報を共有し、検診同行や意思決定を支援する。
4. 地域や行政と協働して、検査技術の普及や啓発を行う。

おわりに
介護の現場から予防の輪を広げよう
ピロリ菌除菌は、胃がん予防のスタート地点にすぎません。
今回紹介したリスク予測技術は、次の一手を考える「地図」のようなものです。
介護者として私たちは、高齢者の状態を見守りながら、必要な情報と支援を提供することで、「予防」という観点からも大きな貢献ができます。
検査技術の進歩とともに、介護の現場も進化し続けなければなりません。
今後も「予防は介護の第一歩」という信念を持ち続け、医療と介護の間に立つ橋渡し役として、実践的な支援を広げていきましょう。
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