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東京都品川区、
高齢者の熱中症対策で戸別訪問
75歳以上の全世帯
2025/05/16 16:10
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『高齢者がエアコンを使わない“本当の理由”とは?』
はじめに
熱中症は静かに進行する危険な状態であり、特に高齢者にとっては命を脅かす重大なリスクです。
私たち介護現場では、気温そのもの以上に「室内環境」や「心理的な抵抗感」に注意を払っています。
たとえば、冷房を使わないのは「節約意識」や「昔の感覚」が背景にあります。
これは単なる暑さの問題ではなく、生活習慣や経済的不安、孤立といった要因が複雑に絡み合った社会的な課題なのです。
東京都品川区が実施する「高齢者熱中症見守り宅配事業」は、こうした背景を丁寧に拾い上げ、全国で初めて制度化された先進的な取り組みです。

高齢者の“我慢”が命を縮める背景にある心理と生活の現実
高齢者がエアコンを使わない理由とは?
多くの高齢者が冷房を控える理由には、以下のような事情があります。
電気代への不安:年金生活の中で節約を優先し、暑さを我慢してしまう
過去の価値観:「昔はクーラーがなくても平気だった」という思い込み
技術的なハードル:機器の操作が難しい、壊れていても修理費が出せない
孤立感:身近に相談できる人がいない
これらの要因が重なり、結果的に命に関わるリスクを高めています。
品川区の事業はなぜ注目されるのか
この取り組みでは、約3万6600世帯を対象に、夏の間に2度、戸別訪問が行われます。
訪問時にはスポーツドリンクなど約4000円相当の物品を配布しながら、熱中症予防を呼びかけます。
さらに、支援が必要と判断された世帯には、地域の介護支援センターなどが継続的なフォローを行う体制も整備されています。

見守り活動がもたらす4つの視点での価値
介護者の視点:リスクの早期発見と対応
・エアコン未使用の実態を把握できる
・必要な家庭へは迅速に追加支援が可能
・地域包括ケアとの連携が強化される
高齢者の視点:孤立の解消と適切な支援の導入
・人との接触で精神的な安心が得られる
・正しい熱中症対策が伝わる
・支援と情報が本人の状況に合わせて届けられる
家族の視点:離れていても安心できる仕組み
・遠くに住む家族にとって、戸別訪問は安心材料になる
・異常があればすぐに連絡
・対応してもらえる
地域の視点:共助の文化を育む契機
・地域内で高齢者支援への理解が広がる
・ボランティアや福祉従事者の活動機会が生まれる
・支え合いの街づくりへの第一歩となる

私たちの介護現場と共通する課題
介護現場でも、品川区の取り組みと重なる以下のような問題があります。
・訪問介護スタッフの不足
・一人暮らしの高齢者の増加
・認知症による暑さへの感覚鈍化
・在宅介護の負担が家族に集中
どれも、「日常の中で小さな異変をいち早く察知できるか」が鍵です。
品川区のようなモデル事業は、全国の介護現場にとっても学びの多い施策です。

結論
介護者として、熱中症対策を自分ごととして考える
介護職にある私たちは、単なる支援者ではなく、地域と家庭をつなぐ“情報のハブ”としての役割も担っています。
以下のような取り組みが、これからの対策には重要です。
・高齢者用の熱中症チェックリストを配布し、定期確認を推進
・冷房機器の使用状況を訪問時に確認
・必要に応じて冷房機器や電気代補助の制度を紹介
・地域で見守り活動をするチームやネットワークの構築
介護は、一人の力で完結するものではありません。
品川区のような自治体主導の取り組みをモデルに、私たち一人ひとりが支援の担い手として行動することが、真の熱中症対策になるのです。
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