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足腰の衰えを示す「4つのサイン」
1つでも出たら要注意
2025/05/17 10:50
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『階段でつまずく日は近い?専門家が警告するロコモの危険兆候』
はじめに
歩行機能が衰えると、食事や排泄、入浴といった日常生活の基本動作に次々と支障が生まれ、結果として介護度が急激に高まるからです。
この状況を、私はよく「堤防のヒビ」に例えています。
小さなヒビが放置されれば、やがて大洪水を招くように、足腰のちょっとした衰えが重度の要介護へとつながるのです。
その“ヒビ”を早期に発見できる兆候が「ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)」の4つのサインです。
この記事では、介護者・家族・地域・本人それぞれの立場から、ロコモへの気づきと対応策を具体的に解説していきます。
ロコモとは何か?
高齢者の“足腰寿命”を左右するロコモの定義と背景
ロコモとは、筋肉・骨・関節・神経といった「運動器」の機能が低下し、移動能力が衰える状態のことを指します。
これは日本整形外科学会が2007年に提唱した概念で、進行すれば要介護や寝たきり状態につながるリスクが高まります。
ロコモが見逃される理由現代は移動手段が充実し、身体を動かさなくても生活できてしまう時代です。
エスカレーターや車に頼るうちに、運動器の機能は少しずつ衰えていきます。
その変化は緩やかで気づきにくく、「気づいたときにはもう遅い」というケースが多く見られます。

これが警告! ロコモの「4つのサイン」
サイン1
階段の上り下りがつらくなる
・駅の階段を一気に上れない
・手すりを使わないと不安
これは太ももの筋力低下(特に大腿四頭筋)が原因です。
バランス感覚も鈍くなり、転倒リスクが高まります。
サイン2
急ぎ足で歩けない
・信号が変わる前に横断歩道を渡りきれない
・周囲の人に追い抜かれる頻度が増える
筋力や瞬発力の衰えだけでなく、神経の伝達速度や心肺機能の低下も関与します。
サイン3
長時間歩き続けられない
・近所まで歩くだけで何度も立ち止まる
・散歩中に休憩場所を探してしまう
持久力の低下に加え、股関節や膝の痛みが影響していることが多いです。
サイン4
運動やダンスがしづらい
・社交ダンスのステップが踏めない
・ラジオ体操の動きがぎこちない
柔軟性の減退や、関節の可動域制限、神経系の衰えが背景にあります。

介護者の視点
日常の“ちょっとした違和感”を見逃さない
注目すべき変化
・立ち上がる際に「よっこらしょ」と声が出る
・歩行スピードが明らかに遅くなった
・家事を避けるようになった
対応の工夫
・階段を避ける場合
→ 手すり設置や昇降練習を促す
・歩行距離が短くなる
→ 屋内でのウォーキングを提案
・趣味をやめる
→ 代替運動での再挑戦を支援
高齢者本人の気持ち
「年のせい」と諦めていないか背景にある心理
高齢者の多くは、体の不調を“自然な老化”と受け入れ、「迷惑をかけたくない」「見られたくない」という思いから、不調を訴えることを避けがちです。
周囲ができること
・「年齢のせい」ではなく「対策すれば改善できること」と伝える
・支援が自然と受け入れられるような雰囲気をつくる

家族の視点
“同居=安心”ではない課題と対策
・一緒に住んでいても変化に気づきにくい
・忙しさからケアが後回しになりがち
そこで、
・一緒に「ロコモ度テスト」を試してみる
・家族で運動を“行事”として取り入れる(例:週末の散歩)
地域の視点
「一人にしない社会づくり」を目指す
現場の問題
・高齢者が安心して運動できる場が不足
・地域によって支援体制の格差が大きい
地域が果たす役割
・公民館やサロンでの運動教室の定期開催
・ロコモ啓発イベントを通じた住民の意識向上
・移動や買い物支援で社会参加を後押し

介護福祉の現場の課題
具体的な課題
・骨折や転倒による要介護者が増加中
・機能回復に特化したリハビリの不足
・予防活動が必要な高齢者に届いていない
現状対応の方向性
・デイサービスなどでの機能訓練の強化
・通いの場を活用した予防運動の実施
・介護職員の観察力を高める研修の拡充

結論
「4つのサイン」を見逃さない。
それが介護者の責任といえます。
「歩く力」は、高齢者の尊厳そのものです。
ロコモの4つのサインに早く気づくこと、それに適切に対応することは、介護者にとって非常に重要な役割です。
高齢者の「自立した生活」を支えるために、今すぐできることは以下の3つです。
・サインを意識して日々観察する
・家族や地域と連携して支援する
・必要に応じて専門機関と協力する
これらを実行することで、「一生、自分の足で歩ける人生」を支え続けていけるのです。
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