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慈恵医大、
多職種によるケアの質が
家族介護者の介護への
向き合い方に影響を及ぼすことを
明らかに
2025/05/21 12:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『もう限界…家族介護者が辞めたくなる瞬間とは?』
はじめに
介護の現場では、まるで一つのチームが協力してプロジェクトを進めるビジネスのように、各専門職が連携しながらケアを提供することが求められます。
医師、看護師、薬剤師、ケアマネージャーといった職種が一貫して連携し、互いに配慮を重ねることで、家族介護者の心の負担は大きく軽減されます。
多職種ケアの「質」が家族介護者の気持ちに与える影響とは?
結論
多職種によるケアの質が高いほど、家族介護者は介護に前向きな気持ちで取り組めます。
一方で、ケアの質が低いと「自分だけが抱えている」「大変すぎる」と感じやすくなります。
理由
東京慈恵会医科大学の調査によれば、ケアの質が高いと「安心感」や「喜び」といったポジティブな感情が生まれ、逆に「孤独感」や「困難さ」といったネガティブな感情は和らぐ傾向があるとされています。
これは、家族介護者が「一人ではない」「チームと一緒に介護している」と実感できるからです。
具体例
・医師とケアマネージャーが連携し、介護者に対して丁寧な説明を行った結果、不安が軽減されたケース
・薬剤師が薬の飲み忘れ対策を提案し、介護者の夜間の負担が減ったケース

高齢者が感じることとその背景
在宅療養中の高齢者は、次のような心の動きを抱えやすい傾向があります。
不安
必要な医療や介護をきちんと受けられるか不透明で心配
安堵
「誰かが支えてくれている」と実感できたときの安心感
孤独
家族に迷惑をかけているという気持ちから距離を感じる
喜び
ケアスタッフとの交流で生きがいを感じられる場面もある
これらの心情は、介護者のメンタルにも影響を与えるため、双方の支援が重要になります。

課題と対応策を視点ごとに整理
介護者視点
課題:孤独感やストレス、対応の難しさ
対応:定期的なチーム会議に家族も参加する機会を設ける。
ケアマネからの心理的支援を受けられる体制を整える
高齢者視点
課題:自立の喪失への不安、感謝と遠慮のはざまで悩む
対応:本人の意思を尊重し、自立支援型のケア計画を作成する。
対話を通じて思いを丁寧にくみ取る
家族視点
課題:役割や情報の偏り
対応:情報共有の場を設け、家族全体での役割分担を明確にする
地域視点
課題:ケア資源の偏在と孤立世帯の増加
対応:地域包括支援センターが資源調整を担い、住民のボランティア活動を促進する

現場の中で起こっている課題
介護現場の中には以下のような問題が起きています。
・ケアマネージャーが多忙で連携が不十分になることがある
・家族への説明が不十分で、介護方針に戸惑いが生じる
・医療職同士の情報共有がうまくいかず、ケアに混乱が生まれる
・家族介護者が精神的に限界を迎え、介護の継続が困難になるケース
このような問題を防ぐためにも、多職種間の連携の「質」を高めることが必要です。
これからの方向性と対策
これからの介護支援では、「質」だけでなく「量」と「継続性」も重視されるべきです。
・短期的でなく、長期的な視点で支えるケア体制の整備
・ICT(情報通信技術)を使ってリアルタイムで情報を共有できる仕組みの導入
・家族介護者向けに、心理サポートや一時的な休養を可能にするプログラムの強化

まとめ
多職種が連携し、質の高いケアを提供することは、単なる業務の効率化ではありません。
それは、家族介護者の心の安定、高齢者の安心、そして地域全体の信頼構築につながる大切な柱です。
これからの介護は、一人で抱え込むものではなく、支え合いながら共に築いていくものなのです。
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