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車のペダル踏み間違い防止装置、
搭載義務化
日本発技術が国際基準に
2025/08/20 02:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『交通弱者問題!免許返納後に直面する孤立リスクとは?』
はじめに
車のペダル踏み間違い防止装置が義務化へ
介護の現場では「問題が起きてからでは遅い」「未然に防ぐことが最大のケアである」という予防的な視点が重要視されています。
たとえば、転倒防止のために環境を整えるように、自動車事故を未然に防ぐ技術の導入も“事故の予防ケア”といえるでしょう。
今回のペダル踏み間違い防止装置の搭載義務化は、日本発の技術が国際的に評価された大きな一歩であり、高齢ドライバーによる重大事故を減らす有効な手段です。
しかし、介護者としてこのニュースを歓迎する一方で、「装置があるから大丈夫」と過信することのリスクについても冷静に考える必要があります。
高齢ドライバーの踏み間違い事故
なぜ起こるのか?
原因の多くは加齢に伴う身体機能の低下
・認知機能の低下により判断が遅れる
・筋力や反射神経の低下で操作ミスが増える
・アクセルとブレーキの位置関係が混乱する
ペダル踏み間違い事故の推移と現状
ペダルの踏み間違いによる事故は、2015年には5,830件と過去最多の件数を記録しました。
この時期は、まだ踏み間違い防止装置の搭載が義務化されておらず、事故の多発が社会問題として取り上げられていた時期でもあります。
その後、各自動車メーカーが独自に安全装置の開発を進めた結果、2024年には事故件数が2,853件と、約半分にまで減少しました。
これは大きな改善といえますが、依然として年間2,000件を超える事故が発生していることから、問題が完全に解決されたとは言えません。
現在、国産のオートマチック車の90%以上にはペダル踏み間違い防止装置が搭載されているとされています。
しかし、特に高齢者による事故は依然として多く、装置の普及だけでは限界があることが明らかになっています。
根本的な事故防止のためには、技術だけでなく、ドライバー本人の身体能力や判断力の変化を踏まえた対応が求められています。

技術進歩と制度の変化
装置の義務化とその意味
2028年9月から、国産の新型オートマチック車にペダル踏み間違い防止装置の搭載が義務化され、2029年9月からは新型輸入車にも適用されます。
これは、日本の安全技術が国際基準として承認された成果であり、輸出産業としても重要な出来事です。
どんな機能が義務化されるのか?
・障害物1~1.5m手前でアクセルを全開にしても衝突を防止または低速衝突に抑制
・障害物のない状態でも急加速を30%以上低減
・視覚的な警報表示を車内で発信
これらは確かに有効な対策ですが、“安全補助”であって“絶対の安全”ではありません。
介護者として考えるべき視点
「装置があるから大丈夫」は危険な思い込み
結論
装置は補助、判断は人間装置の義務化は事故の抑止力になりますが、根本的に「運転が可能な状態かどうか」はドライバー自身とその周囲が判断すべきです。
介護者視点の懸念点
・高齢者本人が「まだ運転できる」と思い込んでいる場合がある
・家族や介護者が説得しにくい心理的障壁
・装置があるからといって「安全になった」と誤解されやすい
介護現場に転用して考える
介護現場では「リハビリ機器があるから転倒しない」という誤解があります。
しかし、実際は機器を正しく使える体力や判断力があって初めて意味があるのです。
同様に、踏み間違い防止装置も、機械と人の両方が機能しなければ事故は防げません。
高齢ドライバーの免許返納
いつ・どうやって判断するか?
判断のタイミングをどう見極めるか?
・認知症の兆候がある
・ブレーキとアクセルを間違えた経験がある
・運転に不安を感じる、または家族が心配している
免許返納を促すための支援策
家族・介護者・地域それぞれの役割と課題
高齢ドライバーの免許返納を促すには、本人の意思だけでなく、家族・介護者・地域社会の連携が欠かせません。
それぞれの立場からの支援と、それに伴う課題について整理してみましょう。
まず、家族の視点では、日常的に接しているからこそ、本人と積極的に対話を重ねることが重要です。
免許を返納した後の移動手段として、公共交通機関やタクシー、家族の送迎など、代替手段を具体的に提案することで、本人が不安を感じずに決断できるよう支える必要があります。
ただし、運転を生活の一部としてきた高齢者にとって「運転をやめる」ということは、自立の象徴を手放すような感覚があるため、感情的な反発が起きやすいのが大きな課題です。
次に、介護者の立場では、すでにサービス利用中の高齢者であれば、デイサービスの送迎車をうまく活用したり、運転をやめることに関する悩みや不安を相談できる窓口を紹介することが有効です。
これにより、介護の一環として運転卒業を自然な流れで支援できます。
ただし、介護者にとっては日常業務に加えてこうした対応に時間や労力が必要になるため、現場の負担が増す可能性があります。
そして、地域社会の支援としては、コミュニティバスの運行や買い物代行サービスの提供が考えられます。
これらは免許返納後の生活を支える有効な手段ですが、運行ルートや利用時間の制限、地域予算の制約といった利便性・継続性の課題も少なくありません。
総じて、高齢者本人が「生活の足を奪われた」と感じずに、前向きに免許返納を受け入れられる環境をどう整備するかが、大きな鍵になります。
そのためには、一方的な説得ではなく、本人の気持ちに寄り添いながら、代替手段を具体的に提案し、安心して生活できる選択肢を共に考える姿勢が求められます。

高齢者の心境と背景
なぜ運転を手放せないのか?
高齢者の運転に対する意識
・自立の象徴である
・買い物や通院など生活に直結している
・「運転できること」が誇りと自己肯定感につながっている
心のケアも含めたアプローチが必要
介護分野では、“身体的支援”だけでなく“精神的支援”が同等に重視されます。
運転免許の返納は「一つの喪失体験」とも言えるため、心理的なケアと地域・家族の連携が求められます。
介護福祉の現場で起きている関連
課題
・高齢者の外出機会減少によるフレイル(虚弱)の進行
・運転を止めたことによるうつ症状の増加
・介護者の通院や買い物の付き添い負担の増加
・方部での交通弱者問題の深刻化
こうした背景も考慮に入れながら、運転の可否や装置の導入を検討していくべきです。
結論
装置は大きな前進、でも「安心しすぎないこと」が真の安全
ペダル踏み間違い防止装置の搭載義務化は、介護者としても非常に意義深い進歩です。
事故を未然に防ぎ、高齢ドライバーの安全を技術的に支えるものとして歓迎されるべきです。
しかし一方で、「装置があるから大丈夫」という思い込みは、さらなる事故を招くリスクを孕んでいます。
運転を続けるか、免許を返納するか。
その判断は、ドライバー本人だけでなく、家族や介護者、地域全体で支えていくべき問題です。
本当の安全とは、技術と人の判断、そして社会のサポート体制が三位一体となったときに実現するものなのです。



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