シニア社員の関連記事
シニア社員の「孫育て」企業が支援
働くモチベーションにも
2025/08/26 11:18
日経速報ニュース
【この記事の内容】
『知らずに悪化…認知症リスクを上げる“ある生活習慣”の回避策とは？』
はじめに
「世代間交流」が認知症ケアにヒントを与える
介護の現場では、「世代間交流（intergenerational exchange）」という取り組みに注目が集まっています。
これは、高齢者と子どもが関わることで、お互いの心と体に良い影響をもたらすという考え方です。
実際に、デイサービスなどで園児とのふれあい活動を導入したところ、認知症の高齢者の表情が豊かになり、言葉数が増えるなどの変化が見られています。
この考えを企業活動へ応用したのが「孫育て支援制度」です。
家族の中で自然に行われてきた孫育てを、企業がサポートすることで、仕事と育児支援を両立できる環境を整えようという取り組みです。
注目される理由は、単に福利厚生の一環ではなく、認知症予防やシニア社員のモチベーション向上といった介護・福祉的な効果が期待されているからです。
孫との関わりが認知症高齢者にもたらす3つのメリット
1. 脳への刺激で認知症の進行を防ぐ
孫との関わりには、予測不能な言動や感情表現が多く含まれます。
このような刺激は、高齢者にとって脳を活性化させる絶好のチャンスです。
これは、介護現場でも重視されている「非薬物療法（薬を使わずに心身の機能を回復させる方法）」と似ており、特に前頭前野（思考や感情を司る脳の部位）への刺激が期待できます。
2. 「役割」を持つことで自己肯定感が高まる
孫の送迎や身の回りの世話など、日常の中で小さな役割を担うことは、高齢者にとって「自分は必要とされている」という実感につながります。
介護の現場でも、「役割のある生活」はうつや無気力の予防になることが明らかになっており、特に施設に入所した高齢者にとっては、生活意欲の維持につながる重要な要素です。
3. 社会との接点が増え、視野が広がる
孫から最新の流行やテクノロジーを教わることで、高齢者は社会とのつながりを感じることができます。
これにより、孤立感が薄れ、新しい情報に触れることで精神的な若さを保つ効果もあります。
例えば、ある高齢者施設では、小学生と一緒にタブレットを使ったレッスンを行ったところ、LINEを使えるようになった入居者が増えたという事例もあります。
シニア世代の変化と「孫育て」への思い
現在の60代は、かつて企業の中核を担っていた世代です。
定年後も「今度は家族のために何か役立ちたい」という気持ちが強く、特に共働きの子世帯を支援したいという声が多く聞かれます。
たとえば、
・「自分も子育てのときに親を頼った。今はその恩返しをしたい」
・「孫と過ごしたいけど、勤務時間が合わない」
こうした声に応えて、企業は孫育て支援制度を導入し始めました。
これは、働き方の柔軟性を高めると同時に、社員の家庭とのバランスを尊重する動きです。
視点別に見る「孫育て支援」の課題と対応
介護者視点
介護と孫育てが重なると負担が大きくなります。
短時間勤務や特別休暇制度を活用し、無理なく両立できる体制が必要です。
高齢者視点
過度に期待されるとストレスになります。
制度として「選択肢」として提示することで、負担にならない関わり方を促すことが重要です。
家族視点
祖父母に頼りすぎると、疲弊や関係性の悪化につながることがあります。
家族全体で役割を分担し、無理のない支援体制を築くことが理想です。
地域視点
地域によって支援の格差があります。
企業・自治体・地域団体が連携し、どこに住んでいても安心して子育て支援が受けられるようにする必要があります。
介護業界の動向と「孫育て支援」との接点
介護福祉の現場では、以下のような課題が進行中です。
・高齢者の孤立化
・認知症ケアの多様化
・多世代の交流を促す地域包括ケアの推進
・介護者自身の高齢化とその負担
こうした中で、「孫育て支援制度」は、介護・子育て・働き方改革の交差点にある重要な取り組みといえます。
この制度が広がることで、家庭・地域・職場の三方向から高齢者を支える「立体的な支援モデル」へと進化する可能性を秘めています。
結論
孫との関わりは介護の未来にも希望をもたらす
認知症高齢者にとって、孫との関わりは単なる家族のふれあいを超えた、生活機能の維持・向上につながる重要な機会です。
・感情を呼び起こす力がある
・自分の存在意義を再確認できる
・社会との接点を保つきっかけになる
今後の介護福祉の現場では、地域の子どもと高齢者を結びつける「交流の場づくり」や「世代間支援プログラム」の導入が、さらに重要になっていくでしょう。
今後の展望
企業と介護がつながる時代へ
「孫育て支援制度」は、単なる福利厚生ではなく、シニア世代の社会参加を可能にするインフラです。
介護福祉の分野でも、
・認知症予防としての世代間交流
・孫を通じた家族機能の再構築
・柔軟な働き方と介護の両立支援
といった要素を組み込むことで、シニア世代のQOL（生活の質）を高めながら、地域社会全体の支え合いの仕組みがより強固なものになっていくはずです。
コメント