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認知症は「痴呆」じゃない
偏見なくし、対応で症状改善
2025/08/30 02:00
日経速報ニュース
【この記事の内容】
『家族が「もっと早く知りたかった」と語る認知症対応の真実とは？』
はじめに
偏見をなくし、適切な対応で症状の改善へ
介護の基本は「表面的な行動で人を判断しない」
介護の現場では、「見える部分だけでその人を判断しない」ことが大切とされています。
たとえば、転倒して動けなくなった高齢者を「もう歩けない人」と決めつけるのではなく、「今は一時的な状態かもしれない」「リハビリや環境の工夫でまた歩ける可能性がある」と考えるのが介護のプロの視点です。
この考え方は、認知症にも当てはまります。
「認知症になると何も分からなくなる」
「何もできなくなる」
と決めつけるのは早計です。
適切な関わり方や生活環境があれば、本人の感情や思考は保たれ、自分らしさを取り戻すことも可能です。
「痴呆」から「認知症」へ
言葉の転換が示す社会の変化
かつて認知症は「痴呆」と呼ばれていましたが、2004年に正式に「認知症」へと名称が変更されました。
「痴呆」には「愚か」「劣っている」といった差別的なニュアンスが含まれていたためです。
この言葉の影響で、多くの高齢者やその家族が傷つき、病気への理解よりも恥や偏見が先立つ社会的空気を生んでいました。
変更から20年経った現在でも、こうした負のイメージは根強く残っています。
呼び方が変わっても、認知症への誤解や恐れはまだ完全には払拭されていないのです。
認知症は「改善も可能」
正しい対応がもたらす希望「認知症は治らない」と思われがちですが、「悪化を防ぎ、生活の質を保つこと」は可能です。
これは、足を骨折した人がリハビリによって再び歩けるようになるのと似ています。
ケアの方法次第で、症状が和らぎ、穏やかな生活を取り戻すこともあります。
具体的なケアの例としては以下が挙げられます。
・水分や栄養を十分に摂取させる
・落ち着いた雰囲気で接する
・本人の生活リズムや好みを尊重した声かけ
こうした工夫によって、徘徊や暴言といった周辺症状が軽減するケースもあります。
介護者の視点
信じることが安心を生む
認知症のケアでは、介護者の態度が大きな影響を与えます。
たとえば、患者が怒りを見せたときに「怖い」と思って距離を取るのではなく、「不安を感じているのかもしれない」と考えて、落ち着いて声をかけることで、患者も安心しやすくなります。
このように、介護者が冷静に寄り添う姿勢を持つことで、症状の悪化を防ぎ、信頼関係を築くことが可能になります。
本人の視点
「私はまだ私」だという想い
認知症になっても、その人の人格や思いは失われません。
たとえば、
・好きな音楽に反応する
・家族の名前を覚えている
・季節の花を見て微笑む
といった反応は、「わたしらしさ」が今もその人の中にあることを示しています。
だからこそ、介護の現場では本人の価値観や感情を尊重したケアが求められます。
家族の視点
「向き合う覚悟」がもたらす気づき
家族にとって、認知症の診断は受け入れがたい現実です。
しかし、知識を持ち、必要な支援を受けることで、苦しみは少しずつ軽くなり、むしろ家族の絆を再確認できる場面も生まれます。
たとえば、
・症状について学び、焦らず対応する
・家族会に参加して孤立しないようにする
・デイサービスなどを活用し、心の余裕を持つといった工夫が、介護の重さを和らげる助けになります。
ある家族は、「最初は何もできなくなると思っていたが、夫の新たな一面に気づけた」と語っています。
正しい理解と向き合い方が、家族関係の再構築につながるのです。
地域の視点
孤立を防ぐのは「周囲のまなざし」
認知症の人とその家族が安心して暮らすためには、地域全体の理解と協力が欠かせません。
・認知症サポーターの養成
・企業や学校での認知症教育
・認知症カフェなどの交流の場の設置
といった取り組みにより、認知症を特別なものとせず、地域の一員として受け入れる環境づくりが進められています。
たとえば、ある企業では管理職向けに認知症セミナーを開催。
社員が適切に対応できるようになったことで、社内の空気が大きく変わったという報告もあります。
介護現場で直面している課題とは？
現代の介護福祉の現場では、以下のような課題があります。
・認知症患者の急増（2025年には高齢者の約3.5人に1人）
・周辺症状に対する誤解や対応不足
・介護人材の不足による負担の偏り
・社会的な無理解と偏見の継続
これらに対し、現場では以下のような対策が行われています。
・「パーソン・センタード・ケア」本人の生き方に寄り添うケア
・食事・水分補給を意識したケア
・認知症カフェによる地域交流の場の確保
・ICT技術による見守りと業務の効率化
結論
「認知症は終わりではない」
偏見を超えて希望ある社会へ
認知症は確かに進行性の病気ですが、「すべてを失う病」ではありません。
・感情や人とのつながりは生き続けています
・適切な対応で症状の進行を緩やかにできます
・家族や地域の理解が、希望と安心をもたらします
介護者として、私たちは「痴呆」という古い偏見から抜け出し、「認知症の人もその人らしく生き続けられる」という新しい認識を持つことが求められます。
理解と共感のある社会が、認知症の人にとって「安心して生きられる場所」となるのです。
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