終活の関連記事
「終活」早期化、20代も
人生見つめ直す契機に
2025/09/02 05:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『“もしも”は明日かもしれない。若者がやるべき終活準備とは?』
はじめに
終活は若者にとっても「人生を考えるきっかけ」に
近年、「終活(しゅうかつ)」という言葉はもはや高齢者だけのものではありません。
20代や30代の若年層のあいだでも、終活への関心が高まりを見せています。
これは一時的な流行ではなく、社会の変化に伴う必然とも言えるでしょう。
災害、感染症、戦争といった出来事を通じて、「命」や「生き方」を見つめ直すきっかけが、若者にも訪れているのです。
介護の現場で働く私たちにとっても、この動きは無関係ではありません。
「終活=高齢者のもの」という固定観念を越えて、若者から高齢者、そして地域社会までが一体となって向き合うべきテーマとなっているのです。
「終活の早期化」は、人生における“予防的アプローチ”介護分野では、「予防的アプローチ」という言葉があります。
これは、介護が必要になる前に対策を講じ、要介護状態になるのを未然に防ぐという考え方です。
このアプローチは、終活にも応用できます。
若者が早い段階で人生の整理を始めることは、まさに人生の“予防的整理”です。
若いうちから終活を始めるメリット
・災害・事故・病気といった予期せぬ事態への備えになる
・自分の価値観や生き方を見つめ直すきっかけになる
・家族との信頼関係や意思疎通が深まる
・精神的な安心感が生まれ、ストレスや不安への耐性が高まる
つまり、終活とは「死の準備」ではなく、“今をより良く生きるための行動”なのです。
若者の終活志向が高まる理由とは?
なぜ今、若者が「終活」に目を向けているのでしょうか?
その背景には、以下のような社会的・心理的要因があります。
若者が終活に関心を持つ主な背景
災害や感染症の経験:東日本大震災やコロナ禍により、命の尊さを
実感情報の身近さ:SNSで終活関連のイベントやワークショップの情報が拡散されやすい
家族構成の変化:核家族化・共働きが進み、自分で備える必要性を感じやすい
生きづらさへの対処:将来への不安を抱える中で、自己整理の手段として注目

介護者の視点
「若者の終活」が高齢者にも良い影響をもたらす
介護現場から見ると、若年層の終活への関心は、高齢者や家族全体に良い影響を与えていると感じます。
終活の早期化が介護に与えるポジティブな影響
1. 家族間で「命」や「生き方」を話す機会が増える
2. 高齢者自身も終活に前向きになれる
3. 介護中の意思決定がスムーズになる(尊厳ある介護が実現しやすい)
たとえば、ある施設で終活イベントに参加した若い家族が、「おばあちゃんは延命治療どう思う?」と自然に尋ねたことで、本人が本音を語れる場が生まれたという事例もあります。
高齢者の視点
「死の準備」ではなく「今を見つめ直す活動」
高齢者にとっての終活は、ネガティブな印象を持たれがちですが、若者たちの前向きな姿勢が、それを変えつつあります。
高齢者が終活に取り組む理由
・介護される前に、物や情報を整理しておきたい
・家族に負担をかけたくないという思い
・自分らしく最期を迎えるための準備をしたい
・イベント参加などを通じて、社会との接点を持ち続けたい
このように、終活は高齢者にとっても「生きがい」につながる前向きな行動なのです。
家族の視点
「終活」は大切な対話のきっかけになる
終活の話題を家族で持ち出すのは勇気がいります。
しかし、それは家族を守るための大切なコミュニケーションでもあります。
家族にとっての終活のメリット
・親の意志を事前に知ることで、介護や看取りに迷いがなくなる
・相続や手続きでのトラブルを防げる
・子世代も、「自分の人生設計」を見直す機会になる
終活は、単に「老い」や「死」ではなく、家族の未来をデザインする作業でもあります。
地域の視点
「終活支援」は地域福祉の柱になる
近年では、地域レベルでも終活を支援する取り組みが増えており、これは高齢者福祉においても非常に重要な役割を果たしています。
地域で進む終活支援の具体例
・地域の公民館や福祉施設での終活ワークショップ
・エンディングノートの無料配布と活用セミナー
・地域包括支援センターと連携した個別相談の体制づくり
これらの活動は、孤立の防止、介護予防、住民同士のつながりの強化といった側面でも有効です。
終活の早期化が介護福祉業界にもたらす変化
介護・福祉業界でも、終活の早期化を背景に、新たな取り組みが始まっています。
現場で起きている主な動き
・ケアマネジャーによる終活支援の導入
・入所前に希望を明確化する終活カウンセリング
・「回想法」などと連携した生前整理プログラム
・認知症患者向けの意思記録サポート
・家族向けに「介護と終活」を統合した啓発セミナーの開催
これらはすべて、より尊厳ある介護と意思決定支援の実現を目指したものです。

まとめ
終活とは“死”の話ではなく、“今を生きる”話
終活とは、命の終わりを考えるだけのものではありません。
むしろそれは、「今この瞬間をどう生きるか」を深く考える、人生設計のツールです。
私たち介護者は、「終活=死の準備」という偏った見方を脱し、高齢者・若者・家族・地域が一体となって命を見つめ直す機会として活用していくべきです。
そして、誰もが「いつか」ではなく「今」から備えることで、人生をもっと豊かに、自分らしく生きていける。
それこそが、終活がもたらす本当の価値ではないでしょうか。



コメント