噛めない・飲み込めない・楽しめない…高齢者が拒否する介護食の誤解とは?

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アサヒG食品、介護食を刷新 

「ソーキそば」などご当地品も

2025/09/05 18:41

日経速報ニュース

アサヒG食品、介護食を刷新 「ソーキそば」などご当地品も - 日本経済新聞
アサヒグループ食品は5日、介護食ブランド「まんぷく日和」を29日に発売すると発表した。従来のブランドから食品の彩りや香りを改善したほか、ご当地料理や洋食をメニューに追加した。価格は194円〜270円。ソーキそばのようなご当地料理や、ポトフや...

【この記事の内容】

認知症リスクも関係?QOLを下げる食生活の兆候とは

はじめに

介護における「QOL」の本当の意味とは

介護の現場では、「QOL(Quality of Life:生活の質)」という考え方が重視されます。

これは単に「生きているかどうか」ではなく、「どう生きるか」に焦点を当てるものです。

QOLとは、医療面だけでなく、食事、住環境、人間関係といった日常のすべてを含む広い概念です。

その中で、「介護食」も大きな役割を担っています。

たとえば、高齢者の方が「若い頃に沖縄旅行で食べたソーキそばが忘れられない」と話すことがあります。

この思い出に近い味を再現した介護食を提供できたなら、それは栄養補給以上の価値を持ちます。

過去の幸せな記憶とつながる「人生の彩り」となるのです。

こうした発想から誕生したのが、アサヒグループ食品の「まんぷく日和」シリーズです。

これは、ただの食事ではなく、“記憶”と“今”をつなぐ、新しい介護食のかたちです。

介護食の進化:「制限された食事」から「楽しめる食事」へ

かつての介護食が抱えていた課題

介護食には、以下のようなネガティブな印象がつきまとっていました。

・見た目が悪く、食欲がわかない

・味が薄く、楽しめない

・食べること自体が苦痛に感じる

・レトルト感が強く、家庭の温かさがない

「まんぷく日和」が目指す介護食の新しいスタンダード

こうした課題に対して「まんぷく日和」は明確にアプローチしています。

・彩りと香りにこだわり、見た目と嗅覚から食欲を刺激

・ご当地料理や洋食など、食の楽しみを広げる多彩なメニュー

・噛む力に応じた4段階のやわらかさ表示で安心設計

・「思い出の味」を再現したレシピで心にも響く

ご当地料理や洋食が介護食に必要な理由

高齢者にとって、「食べる喜び」は単なる栄養補給だけではありません。

むしろ「記憶と感情を呼び起こす体験」が、食事の価値を高めます。

たとえば

ソーキそば:若い頃に沖縄旅行で味わった記憶

ポトフ:子どもと一緒に行ったヨーロッパ旅行の思い出

ナポリタン:昭和の喫茶店での青春の一コマ

こうした料理は、「その人の人生」を思い出させる“食の記憶”を呼び覚ます手がかりになります。

食べやすさの「見える化」:4段階の表示で介護者をサポート

介護現場では、「この人に合った食事はどのレベルか?」を判断すること自体が負担になります。

「まんぷく日和」では、以下の4段階表示を導入し、誰にでも分かりやすく食事のやわらかさを伝えています。

1. かまなくてよい:ゼリー・ペースト状(嚥下障害がある方)

2. 歯ぐきでつぶせる:柔らかく煮込んだ料理(噛む力が弱い方)

3. 舌でつぶせる:極めて柔らかい食感(噛むのが困難な方)

4. 歯でかめる:やや柔らかい通常食(噛む力がある方)

このように視覚でわかる分類は、介護者の不安や手間を減らし、選びやすさと安心感を提供します。

【視点別】介護食の課題と「まんぷく日和」の対応

介護者の視点

課題

・毎日の献立に悩む

・食事準備に時間がかかる

・食欲がない利用者への対応が難しい

対応

・レトルトでも彩りと香りで食欲を刺激

・ご当地料理は会話のきっかけにもなり、食事が楽しい時間に

高齢者の視点

課題

・食べる楽しみがなくなる

・噛めない

・飲み込みづらい

・食事が苦痛になりがち

対応

・思い出の味が「心の満足感」を提供

・食べやすさの段階表示で無理なく楽しめる

家族の視点

課題

・適切な食事がわからない

・忙しくて手間がかけられない

・好みを把握できない

対応

・パッケージ表示で簡単に判断可能

・ご当地メニューで会話が生まれ、食卓が明るくなる

地域・社会の視点

課題

・介護食への理解が浅い

・介護が家庭に閉じこもりがち

・高齢者の孤食(ひとりご飯)問題

対応

・地域イベントで介護食を体験できる機会の創出

・地元食材とのコラボで地域全体が介護を支える動きに

介護福祉の最前線で起きていること

現場の中には、こんな課題が日々起きています。

・利用者から「またこれ?」と食事への飽きが出ている

・若手職員が食事の工夫に悩んでいる

・誤嚥リスクを恐れて単調な食事に偏りがち

・「食べること」自体に意欲がわかない高齢者が増えている

こうした中で、見た目が美しく、香りも豊かな食事は、会話のきっかけになり、介助者と利用者の関係性も変えていきます。

結論

「介護食」は“制限食”から“人生を彩る食”へ

以前の介護食は「安全・食べやすさ」だけが重視され、味や見た目は後回しでした。しかし今、介護食は進化しています。

アサヒグループ食品のような企業が、「人生を語れる食事」の可能性を広げているのです。

・食事は人生の記憶を呼び覚ます大切な時間

・食事は「その人らしさ」を支える生活の柱

・介護食は、食べられる喜びと誇りを取り戻す手段

最後に:食事は「生きる」ためだけでなく、「生きがい」そのもの

現場で働く介護者として痛感するのは、「食べること」は命をつなぐ行為以上の意味を持つということです。

それは

・会話が生まれる時間

・自分らしさを取り戻す時間

・「明日もまた食べたい」と思える希望

私たち介護者は、この時間を支え、「食べる喜び」を守るパートナーでありたいと思います。

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