災害後に6割が亡くなる現実…在宅介護で防げなかった盲点とは?

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災害関連死防ぐ「福祉版DMAT」、

在宅ケアで被災者の支えに

2025/12/11 11:30

日経速報ニュース

災害関連死防ぐ「福祉版DMAT」、在宅ケアで被災者の支えに - 日本経済新聞
大規模な自然災害で被災した高齢者や障害者への福祉ケアを担う「DWAT」(災害派遣福祉チーム)の重要性が高まっている。過去の災害で繰り返し課題とされてきた災害関連死を防ぐため、国は活動指針を改定。避難所だけでなく在宅の避難者への支援も担うよう...

【この記事の内容】

知らないと危険…災害関連死が増える在宅高齢者の共通点とは?

はじめに

介護分野では「予防的介入」という考え方がある

介護分野には、「状態が悪化してから対応するのではなく、悪化する前に手を打つ」という予防的介入の考え方があります。

これは、転倒を未然に防ぐ取り組みや、フレイルと呼ばれる心身の虚弱状態を進行させない支援、認知症の症状を緩やかにする関わりなど、日々の介護現場に自然に組み込まれている発想です。

この考え方を災害対応に当てはめて考えてみると、新たな視点が見えてきます。

災害関連死を「災害後に起こる避けられない出来事」として受け止めるのではなく、在宅ケアの延長線上で予防できるリスクとして捉えることが重要になります。

ビジネスで言えば、問題が顕在化してから対応する「事後対応型」ではなく、リスクを想定して先回りする「リスクマネジメント型」の考え方に近いと言えるでしょう。

本記事では、介護者の立場から、高齢者の災害関連死を防ぐために在宅ケアで何ができるのかを、できる限り具体的かつ多角的に考察していきます。

災害関連死とは何か

災害関連死とは、地震や豪雨などによる直接的な外傷で亡くなるケースではなく、災害後の避難生活や生活環境の変化が引き金となって起こる死亡を指します。

たとえば、持病が悪化する、十分な水分や食事が取れなくなる、必要な薬を継続できなくなる、強いストレスによって体調を崩す、介護サービスが途切れてしまう、といった要因が重なって命に関わる状態へと進んでいきます。

近年の大規模災害を振り返ると、犠牲者全体のうちおよそ半数から6割程度が災害関連死として認定される例もあり、建物倒壊などによる直接死を上回る傾向が見られます。

この数字は、災害関連死が決して例外的な出来事ではなく、構造的な課題であることを示しています。

なぜ在宅高齢者は災害関連死のリスクが高いのか

高齢者が在宅避難を選択する背景には、切実な思いがあります。

慣れない避難所生活に不安を感じる人もいれば、認知症の症状があり集団生活が難しい人、家を離れることで生活の基盤を失うのではないかと心配する人、そもそも身体的に移動が困難な人もいます。

これらの判断は、決して自己中心的なものではなく、その人の生活史や身体状況を踏まえた合理的な選択です。

しかし結果として、在宅で過ごす高齢者は支援の網からこぼれ落ちやすくなります。

見守る人がいない状況では、体調の小さな変化が見逃され、気づいたときには重篤化しているという事態が起こりやすくなります。

介護者として考える在宅ケアの役割

結論から言えば、平時の在宅ケアの質は、災害時の高齢者の生存率と深く結びついています。

介護者は、利用者の基礎疾患や服薬状況、生活リズムを日常的に把握しており、わずかな変化にも気づける関係性を築いています。

また、必要に応じて医療や福祉の専門職につなぐ「調整役」としての役割も担っています。

これは医療分野で言うトリアージ、つまり限られた資源の中で優先順位を判断する行為を、福祉的な視点で日常的に行っている状態だと捉えることができます。

ビジネスに例えるなら、現場を最も理解している担当者がリスク管理を行い、問題が大きくなる前に関係部署と連携する役割に近いでしょう。

DWATに学ぶ在宅支援の視点

DWATとは、社会福祉士や介護支援専門員などで構成される災害派遣福祉チームのことです。

医師や看護師が中心となるDMATに対し、「福祉版DMAT」と位置づけられています。

近年では、避難所での支援だけでなく、自宅で避難生活を送る高齢者への訪問や、車中泊を余儀なくされている人の把握など、活動の幅が広がっています。

DWATの取り組みは、在宅ケアが災害時にも機能し得ることを示しています。

つまり、平時に培われた福祉の視点と人とのつながりは、災害という非常時にも十分に転用できるのです。

在宅ケアと災害対応を重ねて考える

介護現場で日常的に行われている健康確認や服薬管理、食事の支援、安否確認は、災害時にはそのまま命を守る行為へと姿を変えます。

訪問介護が止まり、数日間十分な食事や入浴ができなくなる、停電によって在宅医療機器が使えなくなる、ケアマネジャーと連絡が取れずサービス再開が遅れるといった状況は、決して特別な話ではありません。

災害は突発的な外圧として、高齢者がもともと抱えている脆弱性を一気に表面化させます。

これは加齢そのものが原因というより、環境が急激に変化することで生活機能が低下する現象だと言えます。

四つの視点から見える課題と対応

介護者の立場では、安否確認の手段が限られることや、自身も被災者になる可能性が課題となります。

そのため、事前に緊急連絡先を整理し、どの利用者から優先的に支援を再開するかを共有しておくことが重要です。

高齢者本人の視点では、支援を求める力が弱く、多少の不調を我慢してしまう傾向があります。

平時から「困ったときは頼ってよい」というメッセージを伝え、具体的な連絡方法まで落とし込んでおく必要があります。

家族の視点では、遠方に住んでいる場合、状況が分からない不安が大きくなります。

ケアマネジャーを中心とした情報共有の仕組みや、家族同士の連絡体制が安心につながります。

地域の視点では、在宅避難者の把握の難しさと人材不足が大きな課題です。

民生委員や自治会、福祉専門職が日頃から顔の見える関係を築き、平時から人材を育てておくことが欠かせません。

介護福祉領域で起こっていること

現在の介護福祉領域では、災害時にも事業を継続するための計画づくりが進み、在宅で配慮が必要な人の名簿整備や、福祉職向けの災害研修も増えています。

また、医療・福祉・行政の連携を強化しようとする動きも活発です。

一方で、慢性的な人材不足は解消されておらず、実際に現場で動ける人が足りないという現実があります。

このギャップをどう埋めるかが、今後の大きな課題です。

結論

在宅ケアこそが災害関連死を防ぐ

最後の砦介護者として高齢者の災害関連死を防ぐために必要なのは、特別な取り組みではありません。

日常のケアを丁寧に積み重ね、人との関係性を築き、いざというときにどう動くかを共有しておくことです。

こうした積み重ねが、災害時には命を守る在宅ケアへと転化します。

在宅ケアは平時だけのものではなく、非常時にも機能する見えにくい社会インフラなのです。

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