誰にも伝わらない…母語がえりに悩む高齢者たちの“孤立”とは?

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高齢外国人23万人に介護の壁 

認知症進み日本語忘れる

「母語がえり」

2025/07/17 19:00

日経速報ニュース

日本に住む高齢外国人23万人に介護の壁 認知症進み日本語忘れる「母語がえり」 - 日本経済新聞
日本に住む外国人に高齢化の波が押し寄せている。65歳以上の在留外国人は2024年末時点で23万人に上り、10年間で1.5倍に増えた。加齢や認知症のため日本語を忘れてしまう「母語がえり」がみられるなど、言葉の壁や食習慣の違いなど介護には特有の...

【この記事の内容】

制度が追いつかない!外国人高齢者介護の“空白地帯”とは?

はじめに

介護において、言葉によるコミュニケーションは医療的なケアと同じか、それ以上に重要な役割を果たします。

特に、高齢の外国人が認知症を患うと、日本で身につけた日本語を忘れてしまい、生まれ育った国の言葉に戻る「母語がえり」という現象が起こります。

これは、介護現場での支援を大きく難しくする要因の一つです。

母語がえり」は、記憶の奥深くに眠る言葉が徐々に浮かび上がるような現象です。

まるで、流れに逆らって過去へと遡る川のように、人は自分の原点である母語や文化へと戻っていくのです。

このこと自体は人間らしい自然なプロセスですが、言葉が通じないことは介護の現場では重大な「」となり、対応を困難にします。

高齢外国人に起こる「母語がえり」とは?

どういう現象なのか?

・認知症の進行によって、日本語よりも母語(韓国語や中国語など)でしか話せなくなる。

・長年日本に住んでいても、脳は記憶の深い部分から順に失われていくため、幼少期の言語が先に現れる。

・特に高齢の外国人に多く見られる現象であり、誰にでも起こり得る。

現場で起こる具体的な問題

・日本語が通じなくなり、介護者との意思疎通が困難に。

・信頼関係が築けず、不安や不信感が増す。

・食事や生活習慣の違いも相まって、徘徊や拒否などの行動につながる。

・支援を必要としても、家族がいなかったり頼れなかったりすることが多い。

外国人介護に立ちはだかる「5つの壁」

外国人高齢者の介護では、以下のような5つの壁が存在します。

1. 言葉の壁:母語しか通じないことで混乱や誤解が生まれやすくなる

2. 文字の壁:制度や薬の説明が理解できず、正しいケアにつながらない

3. 食事の壁:宗教や文化の違いで、食事が合わず栄養不足になることもある

4. 習慣の壁:生活スタイルや衛生習慣の違いで、本人が苦痛を感じることがある

5. 心の壁:孤独や疎外感から精神的な不安定さを抱えるようになる

介護者の視点

マニュアル通りにいかない現場の現実ケアの難しさが増す場面

・母語しか通じない高齢者には、通常の認知症ケアでは対応しきれない。

・感情表現が理解できず、本人の要望を読み取ることが困難になる。

・トラブルが増え、現場に心理的・身体的な負担が蓄積する。

介護職員の声

・「日本語が通じない人に、どう接すればいいか分からない

・「一人の対応に多くの時間がかかり、全体が回らなくなる

・「文化的背景が違うことで、日々のケアにもズレが生じる

高齢者の視点

分かってもらえない」ことへの恐怖と孤立

・伝えたいことが伝わらないことに強いストレスを感じる。

・知らない文化に囲まれ、日常に安心感を持てない。

・家族を亡くしたり、遠くにいたりすることで、支えのない状態が続く。

家族の視点

関わりたくても支援に届かない現実

・海外に住む家族が多く、直接の介護支援が難しい。

・言葉の壁から、制度やサービスの情報を得られない。

・自宅介護を選ばざるを得ず、限界に達しても頼る先がない。

地域の視点

制度や支援体制が追いつかない現状の課題

・地域の支援活動は、主にNPOやボランティアに頼っている。

・公的な支援体制は整っておらず、長期的な支援が困難。

・自治体の職員も、外国人高齢者対応のノウハウが乏しい。

地域で始まっている取り組み

・通訳や多言語対応のサービスの導入。

・文化的背景に配慮した介護予防活動の開催。

・支援者のネットワーク形成による情報共有。

介護現場で何が起こっているのか

・高齢外国人の数が急増している(2024年末で23万人を超える)。

・外国人介護職の受け入れが進む一方で、高齢外国人への支援は手薄。

・「認知症+母語がえり」による二重の言語障害が現場を悩ませている。

・介護施設側が外国人高齢者の受け入れを断る例も増加。

・外国語や文化に対応できる人材育成が追いついていない。

どうすればよいのか考察してみる

・通訳者の配置や翻訳ツールを活用し、意思疎通の質を高める

・多文化対応研修を職員に義務化し、理解の土壌をつくる

・パンフレットや制度の案内を多言語化して周知を徹底する

・外国人専門の介護施設を地域に整備し、安心して老後を送れる場所を増やす

・地域包括ケアに多文化交流を組み込み、孤立を防ぐ

結論

母語がえりは「壁」ではなく、「気づき」のきっかけに

「言葉が通じないから困る」ではなく、「その人の人生をどう尊重するか」を考えることが、これからの介護のあるべき姿です。

母語がえりは、単なる言語の問題ではありません。

それは、その人がどのように生きてきたか、その記憶や文化を取り戻す行為でもあります。

だからこそ、単なる通訳だけでは足りません。

言葉の背景にある物語を理解しようとする姿勢が必要です。

介護とは、「生き方そのものに寄り添う営み」であるべきです。

母語がえりに直面したとき、それを“壁”と捉えるのではなく、その人の人生を見つめ直す“気づき”と受け止めること。

それが、今、私たち介護者に求められています。

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