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日建設計、
富山・広島で相乗り実証
高齢者・子供送迎
2025/08/10 02:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『高齢者の移動問題が「誰も責任を取らない社会」に変わった理由とは?』
はじめに
支え合いが生む介護の未来
介護の分野には「共助(きょうじょ)」という考え方があります。
これは、制度や専門サービスに頼るだけでなく、地域や家庭、住民同士が互いに助け合って課題を解決しようとするアプローチです。
この共助の考え方は、現在深刻化している「高齢者の移動困難」を解決する上でも重要な鍵となります。
今回紹介する「コミュニティ・ドライブプロジェクト」は、日建設計をはじめとする自治体や企業が連携し、地域住民の共助によって高齢者の移動を支援する新たな取り組みです。
これは、移動の課題を「地域全体の問題」として捉え、解決していく実践モデルといえます。
高齢者の移動困難とは
「足がない」は「自由がない」なぜ移動が重要なのか
高齢者が移動できないことは、単に交通手段がないというだけではありません。
それは「行きたい場所に行けない」「会いたい人に会えない」という状況を生み、生活の自由、自己決定、社会とのつながりを奪う深刻な問題です。
特に地方の中山間地域では、次のような実態が現れています。
・デイサービスまで片道1時間以上かかる
・介護事業者が人手不足で送迎を断るケースがある
・公共交通が廃止され、代替手段がない
・高齢者が免許返納により移動手段を失う
これらの問題は、やがて心理的な孤立や地域社会からの断絶を引き起こします。

子どもと高齢者の「相乗り」
共助型移動支援の新しい視点
日建設計や黒部市が進める「コミュニティ・ドライブプロジェクト」では、高齢者と子どもの送迎ニーズを組み合わせた新しい移動支援の形が模索されています。
どんな仕組みか?
高齢者:デイサービスや病院、買い物などに移動
子ども:通学や保育園の送迎
共通点:移動時間帯が朝夕で重なる
この「時間帯の重なり」を活かし、地域住民が自家用車で高齢者と子どもを一緒に送迎したり、最寄り駅までの短距離だけを支援したりするモデルが構築されつつあります。
こうした取り組みは、限られたリソースを最大限に活用し、送迎を分散・効率化する仕組みです。
まさに地域の中での「共助」が形になった例といえるでしょう。
各関係者が抱える課題とその解決策
高齢者の移動支援に関わる各関係者は、それぞれ異なる課題を抱えており、それに応じた具体的な解決策が求められています。
・高齢者自身にとっては、「移動手段がない」「出かけることに不安を感じる」「地域の中で孤立してしまう」といった問題が深刻です。
こうした課題に対しては、近隣住民による送迎支援や、異なる世代との相乗りによる移動手段の確保が有効です。
また、高齢者自身が地域の話し合いの場に参加することも、安心して暮らすための第一歩になります。
・介護を担う職員や事業者は、送迎業務の負担が大きく、車両や人手の不足にも悩まされています。
これらに対応するには、地域住民との連携によって送迎の一部を分担したり、複数の事業者で車両を共有するなど、資源の有効活用が鍵となります。
・高齢者の家族の視点では、安全面への不安や、仕事との両立の難しさが課題となります。
これに対しては、地域内で送迎を支え合うネットワークを構築したり、家族間・地域間での情報共有を進めることで、不安や負担を軽減することができます。
・そして地域全体としては、交通手段の空白地帯が広がり、住民が孤立していく傾向が見られます。
この問題に対応するためには、地域の関係者が集まり議論する「協議会」を設置し、住民が移動支援を担う「コミュニティ・ドライバー」の育成に取り組むことが重要です。
・このように、それぞれの立場から課題と向き合い、地域全体で支え合いながら解決していくことが、持続可能な移動支援の鍵となります。
介護の現場から見える声
介護現場でも、次のような移動支援の限界を日々感じています。
・職員が一人で何人もの高齢者を送迎せざるを得ない
・送迎時間が長くなり、介護サービスの質が下がる
・すべての送迎希望に対応しきれない
その中で、利用者から
「近所の人がちょっとだけ送ってくれたら助かる」
「駅までの5分間だけでもいいから誰かに頼みたい」
といった声を何度も聞いてきました。
これらは、まさに地域の共助によって解決可能な課題です。
移動支援は「人の流れの再編集」である
共助型の移動支援は、情報整理の手法と似ています。
たとえば、情報をカテゴリーやキーワードで整理し、必要な人に届けるように、人の移動も「時間」「経路」「目的」で分類し、マッチングすれば無駄が減り、効率が上がります。
・朝8時に保育園に向かう母親が、9時の通院に行く高齢者を乗せる
・必要な条件に応じて、最適な送迎を見つける仕組み
まるで検索エンジンのアルゴリズムのように、条件に合う「人と移動」をつなげていく。
移動支援は、人の流れを再構築する行為であり、そこにはテクノロジーと人の思いやりの両方が求められます。

地域全体で取り組む未来への提案
今後の展望と提案
1. 「協議会+システム」モデルの全国展開
・地域の課題をヒアリングと地図で可視化
・移動パターンを把握し、効率的な送迎を実現
2. 「コミュニティ・ドライバー」の制度化
・地域住民が短時間の送迎を担う制度を整備
・ボランティア精神と金銭的報酬の両立で持続可能に
3. 行政・企業・住民の三位一体の運営体制
・補助金だけに頼らず、アプリなどの活用で自立型モデルへ
結論
支え合いの見える化こそが移動支援
高齢者の移動支援は、単なる「送迎」ではありません。
それは、人としての尊厳、地域のつながり、持続可能な未来に直結する社会的課題です。
今回のような取り組みを通じて、住民が自分ごととして課題に向き合い、知恵を出し合い、仕組みに落とし込むこと。
これこそが、これからの地域福祉の柱になるのです。
介護の現場にいる者も、まずは「できる範囲での共助」を始めることで、その輪は必ず広がっていきます。
そしてそれが、地域全体を変える大きな力となっていくのです。



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