介護現場が回らない…生産性が“半分以下”に落ちる盲点とは?

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製造業の半分しかない

「介護の生産性」 

M&Aとデジタルで探る活路

2025/12/10 11:00

日経速報ニュース

製造業の半分しかない「介護の生産性」 M&Aとデジタルで探る活路 - 日本経済新聞
「介護事業の生産性を向上すべきだ」といわれて久しい。事業者の経営体力を高めて介護網を守るためにも、介護スタッフの賃上げのためにも重要な課題だ。だが介護の労働生産性は今なお製造業の半分ほどにとどまる。業界内でもICT(情報通信技術)などを活用...

【この記事の内容】

介護生産性が“製造業の半分”に落ちた理由…放置すれば地域介護が崩壊する

はじめに

介護分野では、「ケアは製品ではなく、人との関係性そのものが成果になる」という特徴があります。

この性質ゆえに、製造業のように工程を明確に分解して標準化することが難しく、生産性の改善が後回しになりがちです。

しかし、“関係性は標準化できない”という前提をいったん抽象化し、製造業・小売業・物流業など他産業の構造と照らし合わせてみると、介護にも応用できる改善策が見えてきます。

この記事では、外部環境の変化と現場の実態を踏まえ、介護事業の生産性をどのように高められるのか、多角的に考察していきます。

介護生産性が低い理由とは

結論

介護の生産性が製造業の約半分にとどまる主な理由は、「業務の属人化」「人員基準の硬直性」「小規模ゆえの非効率」「ICT投資の地域格差」にあります。

理由

介護は利用者ごとに状況が異なるため、サービスの工程を理論通りにそろえることが難しい業界です。

さらに小規模事業者が多く、ICT投資や人材育成が事業者ごとに分断されがちで、結果として生産性の改善が進みにくい構造があります。

具体例

実際の現場では、次のような“ムダ”や“ばらつき”が積み重なっています。

・紙による記録や手書きの書類が残っている

・情報共有が口頭中心で、内容の抜け漏れが起きやすい

・施設ごとにソフトが異なり、データを横断的に活用できない

・人手不足で、常に余裕のない状態で働いている

・ICT機器を導入しても稼働率が低く、効果が出ない

・小規模事業者は導入費用を負担できずデジタル化が進まない

・訪問介護では移動時間が長く、作業時間が圧迫される

・利用者の生活環境が多様で、業務の標準化が難しい

・管理者が事務作業に追われ、現場への支援が不足する

製造業の考え方は、介護にも応用できるのか

結論

介護は製造業のような完全自動化はできませんが、「工程管理」と「データ活用」という考え方を取り入れることで、生産性は大幅に改善できます。

理由

製造業は、生産プロセスのどこに時間や労力のロスがあるかを明確化し、そのボトルネックを改善することにより効率を高めてきました。

介護も同じように、直接ケア以外の工程を整理して改善することで、余計な負担を減らすことが可能です。

具体例

次のような取り組みは、現場で特に効果を実感しやすいものです。

・記録をタブレットで即時入力し、二重入力をなくす

・訪問ルート最適化アプリを用いて移動時間を短縮する

・チャットツールを用いて、申し送りの遅れを解消する

・請求業務を自動化し、月末の事務集中を緩和する

高齢者・家族・地域の心境と背景

高齢者、家族、地域それぞれの状況を理解することは、生産性を高める施策を考えるうえで欠かせません。

高齢者の心境

多くの高齢者が自宅での生活を望む一方、体力や生活機能の低下により、移動や入浴といった日常行為に不安を抱えています。

また、ICTが便利だと感じつつも“自分に使えるか”という心理的ハードルが強く残っています。

家族の心境

介護離職は年間十万人規模で発生するといわれており、仕事と介護を両立させる負担は大きいものです。

さらに事業者の倒産が増え、将来も地域に介護サービスが存在するのかという不安が高まっています。

地域の背景

過疎化が進んだ地域では高齢化率が四割を超える自治体もあり、訪問介護事業所が存在しない“空白地域”が増えています。

この状況は、介護サービスそのものの維持を難しくしています。

ICT・ロボット導入は生産性をどう変えるのか

結論

ICTやロボットは、記録や請求といった“直接ケア以外の時間”を大幅に削減し、介護者が本来のケアに集中できる環境をつくります。

理由

介護の生産性が低くなる理由の多くは、ケア以外の業務に時間を取られてしまう点にあります。

そこを改善することで、ケアの質を保ちながら、1人あたりが担当できる業務量は増えていきます。

具体的な効果

・記録時間が1日30分から10分程度に短縮される

・月末の請求作業が3日かかっていたものが1日に短縮される

・デジタル化によって、少ないスタッフでも施設運営が可能になる

・歩行支援ロボットにより見守り負担や転倒リスクが軽減する

M&Aや連携法人がもたらす価値

結論

小規模事業所が単独で生産性を高めるのは難しく、複数拠点の連携や組織統合によって、ようやく本格的な改善が進みます。

理由

規模が大きくなることで、ICT導入費用や研修体制、データ整備が効率化され、安定した運営基盤をつくることができます。

具体策

・複数拠点のデータを一本化し、ケアのばらつきを減らす

・研修体系やマニュアルを共通化してスキルを標準化する

・ICTやロボットを共同購入し、導入費用を抑える

・バックオフィスを集約し、事務作業の負担を軽減する

介護者視点・高齢者視点・家族視点・地域視点からの課題と対応

介護の生産性を考えるには、関わる人々の視点ごとに課題を整理することが重要です。

介護者は、記録作業や情報整理の負担が大きいため、デジタル化がもっとも効果的に働きます。

高齢者は、使いやすさと安心感を得られるICT設計が求められます。

家族にとっては、離れていても情報を把握できる共有システムが負担軽減につながります。

地域は、事業者の撤退による空白を埋めるため、事業所同士の連携が不可欠です。

介護者として考える「これからの介護生産性」

結論

これからの介護生産性改善は、「人にしかできないケア」と「ICTに任せられる業務」を明確に分けることで実現します。

そして地域全体で協力し、持続可能な介護システムに移行していくことが必要です。

理由

介護は人の心に寄り添う仕事であり、この部分が機械に置き換わることはありません。

一方で、記録や情報共有などの作業はICTが得意とする領域であり、そこを効率化することでケアの質を守ることができます。

具体的な方向性

・事務作業を自動化して、ケアの時間を最大限に確保する

・データを活用してケアのばらつきを減らす

・施設間で情報や人材を共有し、負担とコストを最適化する

・地域包括ケアを基盤に、高齢者の暮らし全体を支える

・M&Aや連携法人で、事業者の持続性を高める

まとめ

介護の生産性向上は、効率化だけを目的とした取り組みではありません。

介護が行き届かなくなる未来を防ぎ、介護者の働きやすさを守り、高齢者と家族が安心して暮らせる環境を整えるための社会的な取り組みです。

私たち介護者が進むべき方向は、“人が寄り添う時間を守るために、ICTとデータと連携を最大限に活用すること”この一点にあります。

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