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抱き上げない「ノーリフト」介護、
腰痛防ぐ
高齢者のこわばり緩和も
2025/06/28 02:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『4人に1人が離職…腰痛に泣いた介護士が知らなかった方法とは?』
はじめに
腰痛を防ぎ、高齢者の安心も支える新しい介護のかたち 介護現場の中で、「力で持ち上げる介護」から「知恵で支える介護」へと大きな変化を感じることがあります。
たとえば、濡れた布団をそのまま持ち上げると腰に負担がかかりますが、毛布に分けて干すと楽になります。
このように、“抱える”という発想を見直すことで、介護の負担を大きく減らすことができるのです。
こうした考えを具体化したのが「ノーリフトケア」です。
これは、介護者の腰痛を予防しながら、高齢者自身の動きも引き出す、新しい介護のスタイルです。

ノーリフトケアとは?
抱え上げずに、支えて動かす
ノーリフトケアとは、介護する人が直接利用者を抱き上げるのではなく、リフトや介護ロボット、スライディングボードなどの福祉用具を使って負担を減らすケア方法です。
この考え方は、もともとオーストラリアや北欧諸国で生まれ、介護職員の腰痛対策として広まりました。
なぜ今、ノーリフトケアが必要なのか?
介護職における腰痛の発生は深刻な課題です。
厚生労働省によると、2023年に4日以上の休業を必要とした腰痛は2,194件にのぼり、その多くが介護現場から報告されています。
実践されている主な取り組み
福祉用具の導入:介護ロボット(Hugなど)やスライディングボード、リフトなどを活用。
ボディメカニクスの活用:腰を落とし、重心を近づけて介護するなど、体の使い方を工夫。
作業姿勢の見直し:中腰を避け、無理な動作をしない。
チームでのリスク管理:腰痛対策チームを編成し、作業を見直し、負担の偏りを防ぐ。
現場で見えるノーリフトケアの効果
介護者の変化
・リフトなどの活用により、以前は全力で行っていた作業が、今では2割の力で済むようになったという実感があります。
・腰痛のリスクが下がったことで、長く続けられる職場環境が整ってきています。
高齢者の変化
突然抱きかかえられると、利用者は無意識に体を固くし、関節がこわばる「拘縮」につながります。
ノーリフトケアは、利用者が自ら動くタイミングを尊重し、身体機能の維持や回復を助けます。
例:介護ロボ「Hug」は、「このバーに手を伸ばしてください」と声をかけ、自発的な動作を促します。
介助される人の緊張がほぐれ、穏やかな表情を見せる場面が増えています。
家族の理解と安心
介護ロボに「冷たい印象」を抱く人もいますが、実際には利用者と向き合って会話しながら介助できるため、むしろ「温かみを感じる」という声も多くあります。
さらに、福祉用具の多くには介護保険が適用され、費用負担も軽減されます。
地域社会全体で取り組む介護の改善
地域にある「介護実習・普及センター」では、多くの福祉用具を展示し、実際に使い方を学ぶ研修が開かれています。
地域ぐるみで正しい知識を共有し、家族介護者への支援も行うことが重要です。

ノーリフトケアで得られる4つの価値
介護者にとって:身体的負担が減り、仕事を長く続けやすくなる
高齢者にとって:拘縮が和らぎ、生活の中で自立を実感できる
家族にとって:安心して任せられ、知識を得る機会にもなる
地域社会にとって:介護人材の定着と、持続可能なケア体制が整う
導入における課題と乗り越え方
よくある課題
・導入初期に時間と手間がかかる
・経営層の理解が不十分
・慣れるまで現場に負担感がある
解決へのアプローチ
・介護ロボ導入には、国や自治体による最大10割の補助制度がある
・現場の声を共有し、成功事例を横展開する
・教育やマニュアル整備によって、不安や不慣れを解消する
現場で今起きていること
・職員の腰痛による離職が現実に起きている
・ベテランから若手への技術継承が難しくなっている
・中腰による慢性疲労が慢性的に蓄積
・家族と現場の連携不足で、介護方針にズレが生じる
・地域支援とのネットワークが薄い

結論:ノーリフトケアは介護の未来を支えるカギ
ノーリフトケアは、介護者の体を守るだけでなく、高齢者の尊厳を保ち、家族の不安を軽減し、地域の介護力を高める一歩です。
今、介護の現場では「抱えない」という小さな選択が、大きな変革につながっています。
それはまさに、静かだけれど確実に進む「介護の革命」だと言えるでしょう。



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