孤独死を防げなかった理由…あなたの知らない「見守り不全」の現実とは?

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「サポート住宅」認定開始 

住宅と福祉、連携強化

2025/10/11 18:37

日経速報ニュース

「サポート住宅」認定開始 住宅と福祉、連携強化 - 日本経済新聞
高齢者や障害者が安心して暮らせる住宅を増やそうと、NPOや不動産会社が入居者の日常生活を支援する「居住サポート住宅」の認定制度が始まった。大家とNPOなどが連携を強め、住宅、福祉の両分野にまたがる孤独死などの問題を解決し、安心して住宅を貸し...

【この記事の内容】

見守り体制を入れても孤独死が起きる!現場で明らかになった課題とは?

はじめに

介護の世界では、「自立支援」という基本的な考え方があります。

これは、介護が必要な方に何でもしてあげるのではなく、本人ができることを大切にし、その力を引き出すことで、生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)を高めていくアプローチです。

この視点から見ると、2025年に始まった「居住サポート住宅」の制度は、高齢者が安心して住み慣れた地域で暮らし続けるための大きな一歩と言えます。

住まいを「福祉の場」に変えることで、介護と住居という2つの領域をつなげ、支援の届きにくさを解消することが期待されています。

とはいえ、制度が始まっただけでは十分ではありません。

現実には、高齢者やその家族、介護者、地域社会が直面する課題が山積しています。

本記事では、それぞれの視点から見える問題とその解決策について、介護の現場経験をふまえて丁寧に考察していきます。

高齢者の住まいの課題とは?

見えない孤独と支援の届かない現実

高齢者が安心して暮らせる住まいを確保することは、現在の日本社会において容易なことではありません。

表面的には「住宅が足りている」ように見えても、実際には以下のような課題が存在しています。

1. 孤独死のリスク

家族との同居が減り、一人暮らしの高齢者が増えた結果、誰にも気づかれずに亡くなるケースが後を絶ちません。

2. 住宅の貸し渋り

家主側が「家賃滞納」や「死亡後の対応」などを懸念し、高齢者や障害者の入居を断る傾向が強くなっています。

3. 支援のミスマッチ

住居は不動産の分野、福祉は行政や医療の分野と、担当する領域が異なるため、支援が分断され、必要な人に届いていない現状があります。

高齢者の複雑な心情

高齢者の中には、「人に迷惑をかけたくない」「自分の最期は静かに一人で迎えたい」という思いを持つ方が少なくありません。

しかし一方で、「誰かにそばにいてほしい」「急変時には助けてほしい」という矛盾した願いも抱えています。

このような心の揺れ動きこそ、私たちが解決すべき“見えないニーズ”です。

「居住サポート住宅」とは何か?

住宅と福祉を結ぶ新しい社会インフラ

この制度は、単に住まいを提供するだけでなく、入居者の日常生活を見守り、万一のときには福祉サービスにつなげる仕組みを含んだ、画期的な取り組みです。

高齢者や障害者などの「要配慮者」を対象に、家主と「居住支援法人」(NPO法人、不動産会社など)が協力し、以下のような支援を提供します。

・見守りや安否確認の定期実施

・室内への人感センサーなどICT機器の導入

・必要に応じた福祉サービスへの橋渡し

・市区町村の認定に基づく運用

・今後10年間で10万戸の整備を目指す

制度がもたらす3つの安心

1. 高齢者にとっての安心

誰にも気づかれずに倒れるリスクを回避できる

2. 家主にとっての安心

国の補助金や家賃保証を活用できる

3. 地域にとっての安心

孤独死などによる不安が軽減される「ユニットケア」の発想を転用

介護現場から見た考え

介護施設では「ユニットケア」という手法が用いられています。

これは、10人程度の少人数グループで生活空間を共有することで、一人ひとりの個性や生活リズムを尊重しながら支援する考え方です。

このアプローチを居住支援住宅に置き換えると、次のような構図になります。

具象的転用

家庭的で安心できる空間を地域に設ける

抽象的転用

住宅を単なる“箱”ではなく、個人の尊厳を守る“暮らしの場”と位置づける

制度的転用

住まいと福祉が両輪となって高齢者を支える仕組みへ

これは、ビジネスにおける「サービスとプロダクトの融合」にも似ており、住宅というハード(建物)に、福祉というソフト(支援)を掛け合わせることで、より価値の高い社会的サービスを実現する例といえます。

それぞれの立場から見える課題と解決策

【介護者の視点】

課題:住まいや支援制度の情報が介護現場に届かず、支援に活かしきれない

対応策:居住支援法人や行政と連携し、ケアマネージャーなどと情報共有を進める

【高齢者の視点】

課題:過剰な監視への不安や、プライバシー侵害への懸念

対応策:見守り機器のオンオフ設定や通知範囲を柔軟に選べる仕組みに

【家族の視点】

課題:遠方に住んでいると日常の見守りや介護が困難

対応策:定期的な報告やアプリによる情報共有で、精神的な安心感を得られるようにする

【地域の視点】

課題:孤独死が長期間放置されることで、近隣住民に不安が広がる

対応策:自治体、町内会、支援法人が連携し、地域ぐるみでの早期発見体制を整える

現場で起きていること(要点整理)

・介護サービスの不足により、自宅で十分なケアが受けられない「介護難民」が増加

・独居高齢者の急増により、見守りが行き届かない状態が常態化

・高齢者や障害者の入居を避ける不動産オーナーが多く、住まい探しが難航

・働く家族の多忙により、家族介護の限界が見えてきている

・地域社会のつながりが薄れ、助け合いの仕組みが崩壊しつつある

今後に向けた提言

「安心して暮らせる社会」を制度から実現するために

「居住サポート住宅」は、単なる空き家対策や住宅供給ではなく、「その人がその人らしく暮らすための仕組み」です。

介護者の立場から見れば、これは“見守りのための制度”ではなく、“尊厳ある暮らしを支える土台”として捉えるべきです。

今後必要な取り組み

・支援法人と医療

・介護事業者の間での協働体制の整備

・不動産オーナーに対する研修や啓発活動の実施

・行政と地域住民が協力し、制度の運用を支える土台づくり

まとめ

制度を生かすのは「人のつながり」と「現場の知恵」

「居住サポート住宅」は制度としては始まったばかりです。

しかし、それを活かすも殺すも、介護、福祉、不動産、地域、家族といった“現場”の連携次第です。

介護者としては、この制度が「最後までその人らしく暮らせる社会」をつくる第一歩になることを願い、現場でできるアクションを一つずつ積み重ねていくことが必要だと考えます。

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