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自宅介護かなわぬ未来
過去最多の倒産、
訪問型ゼロの町村2割増
介護が届かない日
2025/12/09 11:00
日経速報ニュース
【この記事の内容】
『自宅介護が“崩壊”する兆候…訪問介護が消えていく日本の現実とは?』
はじめに
介護分野には「地域包括ケア」という、医療・介護・生活支援を地域内で完結させるという考え方があります。
これをビジネス思考で例えるなら、地域全体を“水道管ネットワーク”として捉えるイメージが近いです。
太い本管である病院や施設がどれほど立派でも、細い支管にあたる訪問介護が詰まれば、必要な人のもとへ水──すなわち介護サービス──は届きません。
今まさにこの支管が細りつつあり、自宅で介護を受けたいと願う高齢者の希望が実現しにくくなる未来が迫っています。
本記事では、介護者・高齢者・家族・地域という四つの視点から現状を整理し、よりよい自宅介護を続けるための具体策を考察していきます。
1. 要介護高齢者が「自宅で介護を受けたい」と願う背景
1-1 高齢者の心境
ある調査では、高齢者の約7割が「自宅で介護を受けたい」と答えています。
その背景には次のような感情があります。
・住み慣れた家で過ごすことによる安心感
・施設での集団生活に対する心理的抵抗
・デイサービス利用への不安や気後れ
・自宅であれば自分のペースや役割を保ちやすい
特に地方の独居高齢者にとって、自宅は生活空間以上に“心の拠りどころ”となっており、居場所の喪失は大きなストレスになります。
1-2 背景にある社会の変化
こうした希望がある一方で、支える仕組みは弱まりつつあります。
・訪問介護事業所が減り、サービス空白地域が増加
・高齢者人口の増加に対し、介護人材が追いつかない
・物価高や報酬減少により訪問介護の採算が悪化
・小規模事業者を中心に倒産・撤退が増えている
つまり、「自宅で介護を受けたい」というニーズは強いのに、供給する側が縮小している構図です。
2. 介護者視点の課題と対応策
現場で利用者を支える介護者は、最前線に立ちながら多くの課題と向き合っています。
2-1 課題
・利用者宅を点々と移動する負担が大きい
・慢性的な人手不足で業務量が増加
・利用者の重度化により介助の難易度が上がる
・高齢の介護職が増え、体力面で限界がある
・離職者の代わりが見つからない地域もある
2-2 対応策
・移動ルート最適化アプリの活用による負担軽減・
生活支援と身体介護の分業化で職員の専門性を整理
・タブレット記録や音声入力などICTによる業務効率化
・サービス提供責任者との密な情報共有
・セルフケアや定期的な休息を意識的に確保
こうした工夫は、介護者の疲弊を防ぎ、利用者へのサービス品質を維持することにも直結します。
3. 高齢者視点の課題と対応策
3-1 課題
・訪問介護の選択肢そのものが少ない
・事業所変更による不安やストレスが大きい
・デイサービスが合わず、外出支援が難しい場合がある
・独居で訪問間隔が空くと生活が危うくなる
3-2 対応策
・複数の訪問介護事業所を併用してリスクを分散
・自立支援型サービスを導入して介護量を抑える
・地域のボランティアや生活支援を組み合わせる
・ケアマネジャーへ早めに相談し調整を行う
自宅での生活を無理なく続けるためには、介護保険サービスだけに依存しない仕組みづくりも重要になります。

4. 家族視点の課題と対応策
4-1 課題
・訪問介護が不足すると家族の負担が急増
・仕事と介護の両立が困難
・介護がどれほど続くか見えず慢性的な不安を抱える
・事業所撤退時にスムーズに切り替えができない
4-2 対応策
・家族の役割分担を文章化し、負担の偏りを可視化
・ショートステイなどレスパイトサービスの積極活用
・オンライン面談を使いケアマネジャーと連携
・民生委員や地域包括支援センターなど地域資源の利用
家族が倒れれば介護は続けられません。家族介護者もケアされるべき存在です。
5. 地域・自治体視点の課題と対応策
5-1 課題
・訪問介護事業所がゼロの自治体が増加
・小規模事業者の撤退でサービス空白地帯が生まれる
・地域包括ケアの基盤が揺らぐ
・人口が少ない地域では採算が取れない
5-2 対応策
・複数事業者を束ねる共同運営モデルの導入
・移動費や燃料費の補助など地域独自の支援
・生活援助中心の担い手として地域人材を育成
・自治体による準公営型サービスの運営
・ICTを用いた遠隔見守りによる訪問回数の適正化
自治体が積極的に関与することで、地域全体の介護インフラを守ることができます。
6. 自宅介護を守るための方向性
ここで再びビジネス思考を使って整理します。
介護サービスをインフラになぞらえると、訪問介護は細い支管にあたります。
この支管が詰まれば、どれほど立派な本管があってもサービスは届きません。
介護業界では、労働集約型という性質上、効率化だけでは限界があります。
だからこそ、分業・地域連携・ICT活用など複数の要素を組み合わせて支管を太く保つ仕組みが不可欠です。
現場では、移動負担による離職、物価高による採算割れ、家族介護の限界が同時進行しており、理念だけでは支えきれない状況が生まれています。
7. 全視点を統合した「自宅介護を継続するための方向性」
・介護者は業務効率化と負担の平準化
・高齢者は複数サービスと生活支援を組み合わせる
・家族は役割分担とレスパイトで継続性を確保
・地域は運営基盤の確保とICT導入を進める
四者が役割を分担しつつ、互いに補い合うことで自宅介護は持続可能になります。
8. まとめ
要介護高齢者が自宅で介護を受けたいという願いを叶えるには、介護者・家族・地域・自治体が一体となり、それぞれの役割を担いながら補完し合う仕組みづくりが欠かせません。
訪問介護の供給が縮小している今こそ、負担軽減や選択肢確保、地域支援の強化など多方向からの取り組みが必要です。
介護の未来は、「どれだけ多くの人が望む場所で暮らし続けられるか」で決まります。
今日できる小さな改善を積み重ねることが、自宅介護を守る最大の力になります。


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