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認知症の行方不明者、
死亡の8割は「5キロ圏内」
早期発見へGPS活用
2025/12/14 05:00
日経速報ニュース
【この記事の内容】
『まさか近所で…認知症行方不明で家族が後悔する初動ミスとは?』
はじめに
介護分野では「予防は最大のケア」という考え方があります
これは、問題が起きてから対応するのではなく、問題が起きないように事前に環境や仕組みを整えること自体が、すでに質の高い介護であるという考え方です。
この視点を認知症高齢者の行方不明問題に当てはめると、捜索体制を強化することだけでなく、そもそも行方不明になりにくい環境づくりや、万が一外出しても早く発見できる仕組みを社会全体で構築することが重要だと分かります。
本記事では、介護者の立場から、認知症高齢者がなぜ行方不明になるのか、なぜ「半径5キロ圏内」という視点が重要なのか、そして現場で本当に必要とされている対応や対策とは何かについて考察します。
その際、介護者だけでなく、高齢者本人、家族、地域という四つの視点から、できる限り具体的に整理していきます。
結論
行方不明対策の本質は「早期覚知」と「半径5キロの面対応」です
最初に結論を述べると、認知症高齢者の行方不明対策で最も重要なのは、「いなくなったことにすぐ気づき、自宅周辺の半径5キロ圏内を面として捉え、迅速に動ける体制を整えること」です。
なぜなら、行方不明後は時間の経過とともに命に関わるリスクが急激に高まり、多くのケースでは本人が遠くまで移動していないにもかかわらず、発見が遅れることで事故や体調悪化につながっているからです。
また、GPSなどの技術だけに頼ることには限界があり、最終的に人を守るのは人の目や地域とのつながりであるという現実もあります。
この結論を、ここから一つずつ丁寧に紐解いていきます。
なぜ認知症高齢者は行方不明になるのか
本人の心境と背景
介護現場では、認知症高齢者が外を歩き回る行動を「徘徊」と呼ぶことがあります。
しかし、この行動は決して目的のないものではありません。
本人の中では明確な理由や意味があり、その行動は極めて自然なものとして認識されています。
例えば、
「仕事に行かなければならない」
「家に帰らないと怒られる」
「トイレや買い物に行っただけ」
「ここは自分の家ではない」
といった思いが背景にあります。
これらは、最近の出来事を忘れてしまう記憶障害や、時間や場所、人の認識が曖昧になる見当識障害といった、認知症の中核症状によって引き起こされます。
介護者の視点で重要なのは、行方不明は本人の性格や行動の問題ではなく、症状と生活環境が重なった結果として起きているという理解です。
独居や高齢世帯では異変に気づく人が少なく、介護者が疲弊していると見守りが手薄になります。
さらに、暑さや寒さによる体力低下、入院や転居、介護サービスの変更といった環境の変化も、行方不明の引き金になりやすい要因です。
「5キロ圏内」に注目すべき理由
数字が示す現実
行方不明になると、遠くまで歩いて行ってしまうというイメージを持つ方は少なくありません。
しかし実際には、行方不明後に亡くなったケースの多くが、自宅など最後に確認された場所から半径5キロ圏内で発見されています。
この事実が示しているのは、問題の本質が距離ではなく時間にあるという点です。
遠くへ行く前に、側溝や河川、草木の多い空き地、人通りの少ない道などで事故に遭ったり、暑さ寒さによって脱水や低体温に陥ったりするケースが多いのです。
初動が遅れれば遅れるほど、介護者や家族が取り得る選択肢は急速に減っていきます。
GPSは万能ではない
技術と限界を正しく理解する
GPSは、行方不明対策として非常に有効な手段です。
位置情報をすぐに把握できることで、家族の不安が軽減され、捜索の方向性も明確になります。
一方で、現場では課題も多く見られます。
本人が機器を持たずに外出してしまうことや、「監視されている」と感じて嫌がるケース、充電管理の負担、自治体補助がなく費用がかかる地域など、理想通りに活用できない場面も少なくありません。
そのため、GPSは最後の切り札ではなく、あくまで複数ある対策の一つとして位置づけることが重要です。
地域見守りの力
アナログだが最も強い対策
最近では、QRコードや身元特定番号を活用した見守りの仕組みが広がっています。
これらは、保護した人が簡単に関係機関へつなげられる点で非常に有効です。
この仕組みは、介護現場でいう転倒センサーと職員の気づきの関係に似ています。
センサーは異常を知らせる役割を果たしますが、最終的に判断し行動するのは人です。
どちらか一方だけでは事故は防げず、技術と人の連携があって初めて機能します。

視点別に見る課題と対応
介護者の立場では、24時間の見守りが現実的でないことや、行方不明時の判断に迷うこと、責任を一人で背負い込みやすいことが課題です。
そのため、事前に警察や地域と連携し、行方不明時の対応を整理したマニュアルを用意し、GPSや見守りツールを複数組み合わせることが有効です。
高齢者本人の立場では、不安や混乱を自覚しにくく、自尊心が傷つきやすいという課題があります。
外出を一方的に制限するのではなく、「監視」ではなく「安心」のための取り組みであることを丁寧に説明し、日中の活動量を確保する工夫が求められます。
家族の立場では、罪悪感や恐怖を抱えながら、仕事や育児との両立に苦しむケースが多く見られます。
地域包括支援センターなどの専門機関に相談し、役割を分担しながら「一人で抱えない」選択をすることが重要です。
地域の立場では、声かけへのためらいや認知症への理解不足が課題となります。
見守り訓練や啓発活動を通じて、「少し変だな」と感じたときに自然に声をかけ、警察や自治体につなげられる体制を整えることが求められます。
介護福祉領域で起きていること
介護福祉の現場では、独居の認知症高齢者の増加、介護サービスの隙間時間に起きる行方不明、介護職員の人手不足、家族の遠距離化、地域力の二極化といった課題が同時に進行しています。
これは個人や家庭だけの問題ではなく、社会構造そのものの課題だと言えます。
まとめ
行方不明対策は「介護の質」を映す鏡です
認知症高齢者の行方不明対策は、技術と人、そして地域の力を掛け合わせて考える必要があります。
半径5キロを意識した初動、早期に異変へ気づく仕組み、誰か一人に責任を集中させない体制が整ったとき、行方不明は防げるリスクへと変わります。
介護者として、「見つける」ことだけでなく、「迷わない」「すぐ戻れる」社会をどう作るかを、これからも考え続けることが求められています。


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