過剰介護の関連記事
シニア住宅で消えぬ過剰介護
低家賃で囲い込み、
制度のひずみ映す
2025/08/03 05:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『9割が誤解している?介護施設の“手厚い”ケアの正体とは』
はじめに
介護業界には「囲い込み」という考え方があります。
これは、高齢者が入居するシニア住宅で、同じ運営法人が介護サービスを過剰に提供し、収益を最大化しようとする手法です。
例えるなら、特定の取引先としか付き合わないレストランが、毎日同じ材料を仕入れて同じ料理だけを提供し続けるようなものです。
顧客(ここでは高齢者)は、自分の希望やニーズに合ったメニューを選べず、画一的な対応を受けるしかありません。
本来、介護とは「一人ひとりに合った支援を提供する」ことが基本です。
しかし現在では、制度の歪みや人手不足、利益重視の姿勢により、オーダーメイドのケアから「マニュアル化されたサービス提供」へと変わりつつあるのです。
なぜ囲い込みが起きるのか?
制度と構造に潜む原因
囲い込みが発生する背景には、以下のような構造的な要因があります。
出来高制の介護報酬制度
提供するサービスが多いほど報酬も増える仕組み。
低家賃による集客
安価な家賃で高齢者を呼び込み、自社の介護事業所で高頻度のサービスを実施。
ケアマネジャーの中立性が揺らぐ
住宅側が介護計画に介入し、ケアマネが本来の判断を下せなくなる。
結果として、「必要なサービス」ではなく「利益になるサービス」が優先され、制度の趣旨に反する介護が行われているのです。

高齢者と家族に与える影響
表面化しづらい苦しみ
高齢者の立場から見る問題
選択肢がない:どんな介護サービスを受けるか、自分で選ぶ自由がなくなる。
依存と孤立の悪循環:サービスが増えることで生活の自立が妨げられ、結果として外部との関わりが減少。
家族の立場から見る問題
ケアの内容が見えにくい:入居後、施設内の状況が外からは分かりづらくなる。
手厚いと誤解しやすい:「サービスが多い=良いケア」と誤解し、問題に気づけない。
行政・地域から見た課題
制度の限界と監視の難しさ
自治体の課題
人手が足りない:大阪市でさえ、住宅のケアプランを監督する職員はわずか29人。
判断基準が曖昧:「何をもって過剰か」が定義されておらず、線引きが難しい。
施設の実態が見えにくい:内部のケア内容が外部からはほとんど確認できない。
グレーゾーンの温存
現行制度では、ケアマネジャーの独立性を守る法的な仕組みが不十分であり、事業者の意向に逆らいにくい状況が放置されています。
現場から見える実態と介護者ができること
介護現場で起こっていること
(現実の一例)
・ケアプランが、本人の希望を確認せずに作成されている。
・他の介護事業所を紹介すると「非効率」と拒否される。
・ケアマネが施設運営側からの圧力を感じて退職するケースもある。
介護者としての対応策
中立的な窓口を活用する:地域包括支援センターや市町村の相談窓口を利用する。
本人の意思を尊重する:介護サービスを始める前に、本人の希望を確認し記録する。
ケアプランを定期的に見直す:家族や他の関係者と協力して、必要な支援を再評価する。
不信感がある場合は証拠を残す:会話内容や書類を記録し、後から問題を指摘できるようにする。

制度の改善に向けた提案
個人では防げない構造を変えるために国や自治体がすべきことは、以下のような制度的改革です。
ケアマネジャーの中立性を制度で守る:報酬の支払元を第三者機関に変えるなど、運営法人からの影響を遮断する。
サービスと住宅の分離を促す:施設と介護事業所を同一運営にしないルールを明確にする。
介護報酬制度の見直し:サービスの「量」ではなく「質」で評価される制度に変える。
海外に学ぶヒント
地域支援型への転換がカギ
海外では、以下のような取り組みが先行しています。
・オランダでは、施設介護から在宅介護への転換が進められ、地域ごとに柔軟な支援が提供されています。
・ドイツでは、家族介護者に現金給付を行うことで、自宅での生活維持を可能にしています。
日本でも、今後は「施設に任せる」から「地域と家庭で支える」へと方針転換が必要です。
結論
介護の信頼を守るには「ひずみ」と向き合うことから介護者として、過剰なサービス提供や囲い込みを黙認することはできません。
目の前の高齢者が本当に必要とする支援を見極め、適切な形で届けること。
それが制度の健全な運営を守り、介護への信頼を築く第一歩です。
「誰のための介護なのか?」という問いに、現場から明確な答えを出すことが、これからの介護に求められています。



コメント