認知症新薬の関連記事
アルツハイマー薬レカネマブ、
先駆者の不遇
データ蓄積前に薬価下げ
認知症治療 新時代へ
2025/09/26 05:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『レカネマブはなぜ“無視”された?制度が壊した10.7カ月の希望とは?』
はじめに
レカネマブが示す「治療の可能性」と、それを阻む「制度の壁」
近年、アルツハイマー病の治療薬として登場したレカネマブは、認知症治療の未来に大きな希望をもたらしています。
しかしその一方で、この新薬の真価が発揮される前に制度上の限界に直面し、適切な評価が得られないという「制度の壁」に阻まれています。
この構造は、ビジネスの世界で言えば、革新的な製品が市場に投入されたにもかかわらず、古いルールや評価基準のままでは正しく価値を伝えられず、普及が進まない状況に似ています。
治療の進展:レカネマブの可能性
レカネマブは、アルツハイマー病の進行を抑える抗体医薬で、従来の対症療法とは異なり、「病気の進行そのものを遅らせる」効果がある点で注目されています。
・軽度認知障害(MCI)や軽度のアルツハイマー病に対して進行抑制効果が確認されている
・4年間の投与により、認知症の進行を平均10.7カ月遅らせたというデータが発表された
これは、時間を「買う」ことのできる治療とも言えます。
介護者や家族にとって、日々の生活の質(QOL)を維持できる時間が増えることは、何よりの希望です。
制度の壁:評価と薬価のギャップ
一方で、制度側の評価体制はこの「時間の価値」を正しく反映できていません。
・治験の初期段階の短期間データだけを根拠に薬価を15%引き下げ
・長期投与の有効性は評価から除外
・費用対効果ばかりが重視され、患者や介護者のQOLは軽視されている
これはまさに「イノベーションに旧来のモノサシで値札をつけるようなもの」。
新しい価値が、古い評価基準に収まりきらない典型例です。
多様な視点から見る課題と必要な対応
高齢者の視点
医療選択を理解し、自らの意思を表現することが難しい段階が早く訪れる
➤ 家族や医療者との信頼関係のもとで、意思決定支援が求められる
家族の視点
新薬に対する期待と不安、経済的負担、情報不足が重なる
➤ 医療側の丁寧な説明や、相談窓口の整備が不可欠
地域の視点
専門医療機関が都市部に偏在しており、継続投与の受け皿も限られる
➤ 地域包括ケアと医療の連携を強化し、アクセス格差を縮小する必要あり
介護者の視点
ケアの在り方が変わり、医療連携や情報のアップデートが欠かせない
➤ 継続的な研修と、医療との橋渡しを担う仕組みづくりが求められる

現場の変化と課題:介護福祉士としての実
私が介護現場で日々感じている変化をいくつかご紹介します。
認知症ケアのパーソナル化
進行が遅れることでケアプランの柔軟性が求められるようになった
医療との連携強化
副作用や投薬経過など、医療情報の共有が日常業務に不可欠となった
家族の情報ニーズの増加
新薬への関心が高まり、現場でも説明対応が必要に
研修内容の変化
新薬の作用や認知症の最新研究を求める職員が増えている
まさに、現場全体が「治療の進化」によって変わり始めていると感じています。
レカネマブの「不遇」が示す制度の限界
ある施設では、MCIと診断された入居者の家族が「新薬を使えるか」と相談に訪れるケースが増えています。
しかし、初回投与ができる病院が少なく、費用対効果が疑問視されているため、治療に進めないことがほとんどです。
この状況は、制度が現場のスピードに追いついていない証です。
新しい治療が出てきたのに、その価値を測る「定規」が古いままでは、患者も家族もその恩恵を受けられません。
今、必要なのは「科学と福祉」の橋渡し
アルツハイマー病治療の変革を前にして、求められるのは「科学と福祉の橋渡し役」です。
病院へのインセンティブ設計:継続投与を担う病院が増えるには、経営的な支援が不可欠
介護職への情報共有と研修:現場での対応力を高め、誤解や不安を解消する必要がある家族への支援
制度の整備:経済的・心理的な負担を減らす公的枠組みが求められる
まとめ
介護者としての実感と提言
アルツハイマー病治療は確実に変わり始めています。
しかし、その進化は今、「制度というダム」によって押しとどめられている状態です。
介護者として私たちは、この変化を止めることなく前に進める「水路」をつくる役割を担っています。
それは、医療と福祉の言語を翻訳し、家族や地域に橋を架けること。
そして現場の声を政策に届けることです。
小さな一歩が、未来の「当たり前」になるかもしれません。
今こそ、一緒にその一歩を踏み出しましょう。



コメント