葬儀の関連記事
遺体をきれいに保つ
エンバーミング、10年で2.6倍
火葬待ち深刻化で
多死国家のリアル
2025/09/30 05:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『火葬まで“5日待ち”…最期のお別れが壊れる本当の理由とは?』
はじめに
介護の現場には「グリーフケア(悲嘆ケア)」という考え方がある
介護分野では、単に身体的なケアを行うだけでなく、死を迎える過程そのものも「ケアの一部」と捉えています。
その中でも重要なのが「グリーフケア(悲嘆ケア)」という考え方です。
これは、介護者や家族が、大切な人の死をどのように受け止め、乗り越えるかに寄り添う支援のことです。
この視点から見ると、エンバーミング(遺体衛生保全)は、単なる防腐処置ではありません。
心の準備が整っていない家族に“お別れの時間”を与える、儀式的なプロセスといえるでしょう。
なぜ、今エンバーミングが求められているのか?
近年、エンバーミングの需要は確実に高まっています。
その背景には、以下のような社会的な変化があります。
死亡数の増加:高齢化により年間の死者数は増加。火葬場の混雑が深刻です。
火葬待ちの長期化:すぐに火葬できず、数日〜1週間以上待つケースも増加。
葬儀スタイルの多様化:家族葬や自宅葬など、時間をかけた弔いの形が広がっています。
心理的ニーズの高まり:急な別れに対する不安や後悔の声が目立ちます。
これらの変化により、「せめてきれいな姿で、ゆっくり見送りたい」という想いが、多くの人にとってリアルなニーズとなっているのです。
「心の準備ができないまま…」という現実と向き合う
エンバーミングを選ぶ多くのご家族が、こう口にします。
・「突然の別れで、何もできなかった」
・「もっとゆっくりお別れをしたかった」
たとえば、
・延命治療の末、容態が急変して突然の別れとなった。
・介護に忙殺され、最期にちゃんと会えなかった。
・夜間の急変で、看取ることができなかった。
こうしたケースでは、「何もしてあげられなかった」という後悔が深く残ります。
エンバーミングは、その後悔に向き合う“時間”と“空間”を与えてくれます。

介護者の視点
「もう一度、向き合いたい」という切実な思い
長く介護をしてきた家族にとって、「あの人に、もう一度会いたい」という想いは強くなります。
介護者には、次のような葛藤が心に残ることが多いです。
・もっと優しく接するべきだったという後悔
・忙しさに追われて十分な時間を持てなかったという自責
・お礼も別れの言葉も伝えられなかったという無念
エンバーミングによって、故人の生前の姿に近い状態を保つことができ、何度でも会いに行ける時間が生まれます。
この時間こそが、介護者の心の整理を助ける「感情のリハビリ」になるのです。
高齢者の視点
「きれいな最期でいたい」という尊厳の表れ
介護される側、高齢者自身にも「自分の最期はどうありたいか」という希望があります。
・「家族に迷惑をかけたくない」
・「汚い姿を見せたくない」
・「きれいに、穏やかに送られたい」
エンバーミングは、そんな願いに応える技術です。最期の瞬間まで、自分らしく、きれいな姿でいられること。
これは高齢者の「尊厳」の延長線上にあるニーズなのです。
家族の視点
「あの人らしさ」を残すという価値
人が亡くなったとき、その最期の姿は、家族の記憶に強く残ります。
エンバーミングを経て、安らかで整った表情になった故人に対して、家族はこう感じます。
・「きれいな顔で安心した」
・「苦しそうじゃなかったのが救い」
・「生前の服を着ていて嬉しかった」
こうした感情は、悲しみの中に“穏やかな別れ”を生み出す力を持っています。
まさに、グリーフケア(悲嘆ケア)の実践です。
地域や制度から見る
エンバーミングの課題と可能性
エンバーミングが社会に必要とされる一方で、いくつかの課題が浮かび上がっています。
技術者が少ない:全国でたった数百人。
圧倒的な人材不足です。
法整備が未整備:国家資格ではなく、民間団体の認定に頼っているのが現状です。
地域格差がある:施設の多くが都市部に集中しており、地方では利用が難しい場合もあります。
これから求められるのは、
・エンバーミング技術の国家資格化
・安全・倫理を守るための法制度の整備
・地域間格差をなくすための施設拡充
・介護・医療との連携強化
エンバーミングは、単なる遺体保存処置ではなく、「看取り」や「死別後のケア」の一部です。
だからこそ、医療・介護・葬儀がつながる新しい仕組み作りが必要とされているのです。
介護福祉の現場でも“死”への備えが問われている
介護の現場でも、以下のような課題が日々浮き彫りになっています。
・自宅や施設での看取りの重要性が増している
・家族や介護職の悲嘆へのケアが不足している
・人手不足で、最期に十分なケアができない場面がある
このような背景の中で、エンバーミングの技術は、家族の後悔を減らし、介護者の心を救う手段として、より注目されるべき存在です。
結論
エンバーミングは、悲しみと向き合う“時間”をくれる
「もっと話したかった」
「ちゃんと見送りたかった」
そんな声が、介護をしてきた家族の心に残るのは自然なことです。
エンバーミングは、その願いに応える手段です。
単なる技術ではなく、死を受け入れ、心の整理をつけるための“時間の猶予”を与える行為です。
今後は制度や人材育成の課題をクリアしながら、誰もが“納得して送れる別れ”を選べる社会づくりが求められます。



コメント