「家族が壊れる瞬間」ヤングケアラーが抱える“罪悪感”とは?

介護

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若者ケアラーに支援届かず、

相談窓口「18歳の壁」進学

・就業阻む

2025/11/04 05:00

日経速報ニュース

若者ケアラーに支援届かず、相談窓口「18歳の壁」 進学・就業阻む - 日本経済新聞
18歳から30代までのヤングケアラー、いわゆる「若者ケアラー」が自治体の支援が遅れる中で将来への悩みを強めている。国は若者ケアラーも支援対象とするが、18歳未満の相談窓口のように整備が進まない。18歳以降は進学や就職などキャリアにも重要な時...

【この記事の内容】

10年後の自分が怖い…介護が奪う若者のキャリアと未来の選択とは?

はじめに

介護分野では「ケアの連鎖」という考え方がある

介護の世界では、介護をする人自身もまた支援を必要とする存在であるという「ケアの連鎖」という考え方があります。

これは、家族の中で介護が閉じてしまい、外部のサポートが届かないことで、負担が次の世代にまで受け継がれてしまう現象を指します。

この概念をヤングケアラー(特に18歳〜30代)に当てはめると、支援が途切れる「18歳の壁」がまさにこのケアの連鎖を再生産していると言えます。

支援の空白が、若い世代の孤立や将来不安を生む構造的な要因となっているのです。

「18歳の壁」とは

支援の途切れが生む孤立

〇なぜ18歳で支援が止まるのか

行政の多くはヤングケアラーを「子ども支援」の一部として捉えています。

しかし18歳を過ぎると、進学や就職などライフステージが分岐し、学校を通じた支援の枠組みが機能しづらくなります。

つまり、制度上の支援が子どもで終わり、成人になった瞬間に途切れてしまうのです。

〇支援が途切れた結果、何が起こるのか

18歳以降、支援を受けられなくなったヤングケアラーは次のような困難に直面します。

・進学・就職など将来設計を諦めざるを得ない

・介護のために離職し、経済的に苦しくなる

・社会とのつながりを失い孤立する

・精神的な疲弊や燃え尽き症候群に陥る

特に、同年代の理解者がいないまま長期的に介護を続けると、「自分の人生には意味があるのか」と自己肯定感を失いやすくなります。

介護者視点:若者ケアラーが直面する現実

介護が日常を支配する若者ケアラーは、家族の排せつ介助、食事づくり、通院の付き添いといった身体介護に加え、家事や金銭管理までも担っています。

仕事や学業と両立することは難しく、「今日も何もできなかった」と自分を責めてしまう人も多くいます。

〇キャリア形成が断たれる不安

介護が理由で進学や就職を諦める若者は少なくありません。

たとえば、フルタイム勤務が難しく非正規雇用にとどまるケースや、スキルアップの機会を逃してキャリアが途絶えるケースがあります。

その結果、経済的な不安と社会的孤立が重なり、「10年後の自分が想像できない」という切実な声が生まれています。

高齢者視点:介護される側の苦悩

介護を受ける高齢者自身もまた、若者に負担をかけていることに深い罪悪感を抱いています。

・「自分のせいで子や孫の人生を止めてしまった

・「施設に入りたいが、金銭的にも環境的にも難しい

・「介護を受ける自分が情けない

こうした思いは世代間の罪悪感を生み、互いに「支え合うこと」を否定的に感じる要因になります。

介護が愛情の行為であるにもかかわらず、心の中で「迷惑をかけた」と感じてしまう構造が問題なのです。

家族視点:支援の分断と責任の偏り

家族全体のバランスが崩れる核家族化や離婚、単身赴任の増加により、家族全体で介護を分担する仕組みが弱まっています。

その結果、同居する若者が主な介護者となり、責任や負担が一人に集中しがちです。

家庭内で起こる葛藤

・「なぜ自分ばかりが介護をするのか」という不満

・他の家族が距離を置くことへの悲しみや怒り

・経済的な負担の押し付け合い

こうした葛藤が家庭内の関係を悪化させ、支援を求める意欲さえ奪ってしまいます。

家族だけで抱え込む構造を変えることが急務です。

地域視点:支援体制の未整備がもたらす課題

全国の自治体のうち、18歳以上向けの相談窓口を設けていないところはおよそ3分の1にのぼります。

また、窓口があっても担当者が兼務で専門的知識が乏しい場合もあります。

そのため、

・支援情報が届かない

・当事者が自分を支援対象と認識できない

・福祉・教育・労働の連携が不足しているといった問題が起きています。

一方で、大阪府や埼玉県ではオンライン相談や就労支援など、新しい支援モデルが始まりつつあります。

介護業界の「18歳の壁」をどう超えるか

介護の世界には「継続支援」という概念があります。

これは、年齢や環境が変わっても支援が途切れない仕組みのことです。

この考え方をヤングケアラー支援に応用するなら、次のような取り組みが必要です。

支援の連続性:18歳を超えてもシームレスに相談できる体制

社会的ケアの拡張:学校から職場、地域へ支援のネットワークを移行

経験の再定義:介護経験を社会で評価できるスキルとして位置づける

介護を通じて培った「他者を思いやる力」「状況を冷静に判断する力」は、社会においても価値のある資質です。

これを評価できる社会構造を作ることが、若者ケアラー支援の本質だといえます。

介護福祉業界で広がる新しい動き

介護福祉業界では、次のような変化が見られます。

・元ヤングケアラーが介護職に就くケースの増加

・企業内での介護離職防止制度の整備

・オンライン相談やピアサポート(仲間同士の支え合い)の普及

・ケアラー支援条例を制定する自治体の増加

・AIやテクノロジーを活用した新しい支援手法の導入

これらはすべて、「介護を一人で抱えない社会」への第一歩です。

結論

若者ケアラーを社会全体で支えるために

18歳から30代のヤングケアラーは、「介護」と「自立」という相反するテーマの狭間で生きています。

誰にも相談できず孤立する若者を生み出さないためには、年齢による支援の切れ目をなくし、社会全体で理解と支援を深めることが必要です。

介護は家族だけの問題ではなく、社会の課題です。

支え合いの仕組みを整えることこそ、ヤングケアラーの未来を明るく照らす道になるのです。

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