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特別養護老人ホームと税
「扶養」か「世帯分離」か
2025/11/03 05:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『知らないと損する!特養入居で家族にのしかかる「税金トラップ」とは?』
はじめに
介護分野では「支える家族」という考え方がある
介護分野には、「支える家族」という大切な考え方があります。
これは、単に高齢の親の身の回りの世話をするという意味ではありません。
経済的な負担、精神的な不安、そして社会的な孤立といった家族の重荷を、どのように軽くするかを考える視点を含んでいます。
介護の現場では、家族の負担は一面ではなく多層的です。
特別養護老人ホーム(以下、特養)への入所が決まっても、「介護の終わり」ではありません。
むしろそこから、施設費用の自己負担、税金の申告、世帯分離や扶養の判断など、生活に直結する新たな課題が生まれます。
介護とは、生活設計そのものを見直すプロセスでもあるのです。
特養とは:公的施設としての役割と費用の仕組み
特養は、地方自治体や社会福祉法人などが運営する公的な介護施設です。
対象は原則として「要介護3以上で65歳以上」の高齢者で、民間の介護付き有料老人ホームよりも費用負担が低いことが特徴です。
費用の構成は、施設サービス費(介護保険の対象)、居住費、食費、日常生活費などに分かれています。
入居一時金が不要である点は魅力的ですが、月額費用は平均して10万〜15万円前後となり、家計に与える影響は小さくありません。
ここで
「どの費用が医療費控除の対象となるのか」
「自己負担をどう抑えるか」
を理解しておくことが大切です。
扶養か世帯分離か
家族の選択が税と介護費を左右する
●扶養にする場合のメリット
親を扶養に入れると、次のような税制上のメリットがあります。
・所得税の「扶養控除」を受けられる
・親と子の医療費を合算して「医療費控除」が適用できる
・扶養家族が増えるほど課税所得を減らせる
特養に支払う費用のうち、「施設サービス費・居住費・食費」のおよそ2分の1は医療費控除の対象となります。
ただし、「生計が同一」であることが条件です。
同居していなくても、定期的な仕送りや生活費の負担など、実質的な支援があることが求められます。
●世帯分離にする場合のメリット
介護保険の自己負担割合や高額介護サービス費の上限額は、世帯全体の所得で決まります。
そのため、年金収入しかない高齢者と、収入の高い子世帯が同一世帯のままだと、自己負担額が上がることがあります。
このような場合、世帯を分けることで負担を軽減できる可能性があります。
たとえば、親が年金収入150万円、子世帯が年収700万円の場合、世帯分離を行うことで介護サービスの自己負担割合が3割から2割に下がるケースがあります。
つまり、家族の所得構成によって最適な選択は変わるのです。

介護者・家族・地域それぞれの立場から見る課題
●介護者の視点
介護者にとって、税や制度の仕組みは複雑で精神的な負担を増やします。
経済的な得・損の判断に時間を取られ、疲弊してしまうケースも少なくありません。
経済面の合理化と同時に、自分自身の心のケアも欠かせません。
早めに地域包括支援センターやファイナンシャルプランナーへ相談することが、冷静な判断につながります。
●高齢者本人の視点
多くの高齢者は、「家族に迷惑をかけたくない」と感じています。
そのため、世帯分離を「距離を置かれた」と受け止めてしまう場合もあります。
介護費用の軽減を考えると同時に、本人の尊厳や安心感を守る視点も忘れてはなりません。
●家族全体の視点
扶養や世帯分離の選択は、家族単位での手取りや税負担に直結します。
「誰がどの費用を負担しているのか」を明確にすることで、家計の全体像をつかみやすくなり、納得感のある意思決定ができます。
家族内での金銭の流れを“見える化”することが、最も効果的な第一歩です。
●地域と制度の視点
介護と税の問題は、家庭内だけで解決できるものではありません。
自治体ごとに補助制度や補足給付の条件が異なり、制度そのものも複雑です。
今後は、地域包括ケアシステムの中で「家族支援」を強化する仕組みが求められています。
見落とされがちな税の軽減策
障害者控除と非課税措置
特養に入所する高齢者の中には、税法上の「障害者」または「特別障害者」に該当する場合があります。
要介護4や5で寝たきりの状態であれば、27万円の障害者控除、6カ月以上寝たきりで意思疎通が難しい場合は40万円の特別障害者控除を受けられる可能性があります。
自治体によって判断基準が異なるため、入所前に確認しておくことが大切です。
まとめ
税と介護費用のバランスを「見える化」する
介護と税の関係を整理するうえで、次の3つの視点を持つことが重要です。
1. 家族全体の収支を「見える化」する
2. 扶養・世帯分離のシミュレーションを行う
3. 医療費控除や障害者控除などの制度を最大限に活用する
介護は、単なる「負担」ではなく、家族の生活設計そのものを考え直す機会でもあります。
数字の損得だけでなく、家族の価値観や絆をどう守るかという視点が欠かせません。
介護者として冷静に制度を理解しながら、感情と現実のバランスを取ること。
それこそが、これからの時代に求められる「介護と税のかたち」ではないでしょうか。



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