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高齢単身世帯が招く人手不足
生活サービスを誰が担う
2025/06/03 05:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『人手不足の元凶?高齢単身者4倍の手間を生む理由とは』
はじめに
高齢者の一人暮らしが4世帯あれば、それぞれの家を訪問する必要があります。
つまり、移動や時間、労力は4倍になるのです。
このように、世帯人数の減少は労働の「分散化」を意味します。
結果として、単身高齢者の増加が人手不足をより深刻にしているのです。
本記事では、介護者、高齢者、家族、地域という4つの視点からこの問題を掘り下げ、背景と課題、そして必要な対応策について考えていきます。
高齢単身世帯の増加が生む人手不足の構造
単身化がサービスの「手間」を増やす仕組み
高齢者の一人暮らしが増えることで、生活に必要なサービスが「個別対応」になり、手間や人手が増えています。
これは、すでに人手不足に直面している介護・医療・配送といった現場に、さらなる負荷を与えています。
背景にある社会の変化
・一世帯あたりの人数は1998年の2.81人から、2023年には2.23人に減少。
・高齢者世帯に占める単身世帯の割合は、2023年には51.6%に達しています。
・人が減っても世帯数が増えたことで、水道や電気、宅配などのインフラサービスも非効率化が進んでいます。

介護現場で実際に起きていること
私たちの介護施設では、以下のような変化が現れています。
訪問件数の減少:単身高齢者の家が点在しており、1日に回れる件数が減っています。
宅配支援のニーズ増加:荷物の受け取りや買物代行の依頼が増えています。
緊急対応が増える:一人暮らしのため、体調不良や転倒時のリスクが高く、対応の頻度も増加。
人員配置の柔軟性が難しい:定期的な通院や買物代行などにスタッフを割く必要があり、人手が足りません。

高齢者の選択と心の内側
高齢者が一人で暮らす背景には、次のような心理があります。
・「家族に迷惑をかけたくない」という思いから、あえて同居を避ける。
・「自立していたい」という意識の強さ。
・一方で、地域のつながりが薄れ、頼れる相手がいない状況も増えています。
家族と地域への負担のしわ寄せ
家族への影響:無償労働「シャドーワーク」の拡大高齢の親を支える子ども世代にも、次のような負担がのしかかります。
・通院の付き添い
・日用品や薬の買物代行
・定期的な電話や訪問での安否確認
これらはすべて報酬のない労働です。
仕事と両立するのが難しいため、ストレスやキャリアの停滞を招くこともあります。
地域の課題:支える仕組みが足りない
・若い人が都市に移り、地域には高齢者ばかり。
・ボランティアや支援員が減り、地域包括支援センターの負担が増加。
・公共交通が減り、移動すら困難になる高齢者も多くいます。
サービス現場に現れる「第2のボーモル効果」
経済学で「ボーモル効果」とは、生産性の上がりにくいサービス業で人手が必要なままになる現象を指します。
高齢単身世帯の増加により、この効果がさらに進みます。
・1件ごとに時間がかかり、処理件数が減少
・働き手の負担が増えても、賃金は上がりにくい
・労働意欲の低下や離職も起きやすくなります
地域ごとに異なる人材
ニーズ地域によって、必要とされる人材の種類も違います。
都市部:介護スタッフ、訪問介護、送迎支援員など
地方・過疎地:生活支援や移動支援に特化したボランティアや看護職
工場進出地域:製造業への人材流出により、介護分野の人手不足が深刻化(例:熊本県)

解決に向けた対応策:個人・現場・制度の3本柱
個人・家族でできること
・可能であれば、親との同居や近居の検討
・見守りカメラや服薬支援アプリの導入
・家族間で役割分担し、無理なく支える工夫を
現場での工夫
・訪問ルートの効率化やICTの活用
・多様な業務に対応できる職員の育成
・外国人介護人材の安定した雇用と定着
支援政策として必要なこと
・地域ごとの人材育成と職業訓練の充実
・公的機関の職業紹介機能の強化と民間との連携
・サービス提供事業者への支援金
・補助制度の拡充

結論
一人ひとりの暮らしを支えるために社会全体で動く時
今、私たちは「一人の高齢者が、一つの社会単位になる時代」に生きています。
単身高齢者の増加は避けられません。
しかし、それによってサービスが細分化し、人手不足が加速することは防ぐべきです。
そのためには、家族、地域、介護現場、そして制度のすべてがつながって動くことが必要です。
誰が、どこで、どのように暮らしを支えるのか。
この問いに具体的な答えを出すことが、今後の社会にとって欠かせません。



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