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変わる家族のあり方(7)
弱まる家族機能と親の介護
2025/06/27 05:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『介護は誰がする?「子どもに迷惑をかけたくない」は幻想?高齢者が抱える本音』
はじめに
介護現場の中で、「介護とは家族という小さな船を、誰がオールを握って漕ぐのか」という例え話を考えることがあります。
家族は同じ方向を目指して進む船のような存在です。
しかし、進む速さや方向は、漕ぎ手である家族一人ひとりの力の入れ方によって変わります。
誰かが力を抜けば、進路はぶれてしまう。
親の介護という航海でも、「誰が漕ぐか=誰が担うか」で家族の形が大きく変わってしまうのです。
かつては「親の世話は子どもの務め」とされ、それが家族のあるべき姿と考えられていました。
しかし今では、社会の仕組みや価値観の変化により、その前提が崩れ始めています。

なぜ今、家族機能が弱まっているのか?
1. 家族構成の変化と縮小
昔は親子三世代が同居する大家族が一般的でしたが、今は都市部への移住や雇用の多様化により、核家族化が進んでいます。
加えて、高齢者自身が「子どもと離れて暮らしたい」と望むケースも増えており、家族の人数や関係性が大きく変わってきました。
結果として、親の介護は一人または二人の子どもに偏って負担がかかる傾向があります。
2. 女性の働き方の変化
これまで主婦として家庭にいた娘や嫁が、自然に介護を担ってきました。
しかし今では、女性の社会進出が進み、仕事を持つ人が増えています。
そのため、家庭の中で「介護をする人」が明確に存在しなくなりつつあります。
家族に頼ることが難しくなった今、社会全体での介護支援体制の整備が求められています。

高齢者の立場から見える“不安と本音”
高齢者の中には「子どもに迷惑をかけたくない」「最後まで自立したい」と考える人が少なくありません。
しかし実際には、
・年金や貯金だけでは不安
・施設に入る費用をためらう
・子どもの生活に遠慮して本音を言えないといった
現実的な問題を抱えており、支援が必要な状況に陥っても助けを求めにくいのが実情です。
介護者の苦悩
“誰がやるのか”を巡る静かな対立
兄弟姉妹が複数いる場合、「誰が親の面倒を見るのか」をめぐって“沈黙の綱引き”が起きます。
これは経済学でいう「公共財のジレンマ」に似ています。
介護は家族全体にとって必要なことですが、費用や時間を誰か一人が負担しなければなりません。
誰かが担えば他の人は助かるけれど、自分から手を挙げる人は少ない。
この結果、一人の家族に介護負担が集中し、介護うつや仕事との両立の難しさなど深刻な問題につながることがあります。
家族内の“暗黙の了解”とその限界
話し合いもないまま、「あの人ならやってくれるだろう」と無言の期待が積み重なると、やがてそれは“義務”のように変わってしまいます。
しかし期待された側が「もう限界」と声を上げたとき、他の家族がその事実を受け止められなければ、家族関係は一気に壊れかねません。
家族内での役割分担や負担のあり方は、早い段階でオープンに話し合うことが大切です。
地域が“もうひとつの家族”になる時代へ
介護を家族だけで支えるのは、もはや現実的ではありません。
地域や社会がその一部を担っていく必要があります。
たとえば、地域包括支援センターへの相談窓口が増えたり、高齢者向けの集いの場が各地に整備されたりしています。
認知症を理解しサポートできる人材の育成も進んでおり、「地域全体で家族機能を補う」取り組みが始まっています。

介護現場で感じる“変化”と“課題”
私が働く現場でも、以下のような状況が顕著になっています。
・独居高齢者の増加による見守り体制の強化
・家族介護者のメンタル負担の深刻化
・「施設に入ること=家族に見放された」と感じる
高齢者への対応
介護者に対しては、カウンセリングやピアサポートなど心の支援も必要ですし、高齢者本人には尊厳を守る支援が重要です。

結論
理想の家族像に戻るのではなく、新しい支え方を創る
「親の介護は子どもがするべき」という考え方は、もはや時代に合わなくなってきました。
今、必要なのは以下の4つの視点から支え合いを見直すことです。
介護者の視点
一人に負担を集中させず、支援制度を活用する
高齢者の視点
自分の思いを安心して伝えられる環境づくり
家族の視点
役割分担を話し合い、責任の所在を明確にする
地域の視点
家庭外でも助け合える社会基盤の整備支える人
支えられる人という関係ではなく、「みんなが少しずつ関わる」社会を目指すべき時代です。



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