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認知症予防「とっとり方式」
台湾に
プログラムを6都市で
2025/09/10 05:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『手遅れになる前に!独居高齢者が“要介護化”するまでのステップとは?』
はじめに
介護の現場では「予防は最善の介護である」という言葉があります。
介護が必要になる前の段階で心身の健康を保つことができれば、本人の尊厳を守るだけでなく、家族や社会の負担も軽減されます。
認知症も例外ではありません。
発症を防いだり進行を遅らせることで、将来的な生活の質を高めることができます。
この考えを体現したのが、鳥取県が開発した「とっとり方式認知症予防プログラム」です。
この取り組みが、いま日本を飛び出して台湾の6都市に導入されようとしています。
その背景には、日台共通の課題、高齢化の加速と独居高齢者の増加があります。
特に都市部では「一人暮らしの高齢者の孤立」が、介護の新たな壁になりつつあります。
なぜ「とっとり方式」が台湾で注目されているのか?
共通する課題
進む高齢化と孤独の拡大
台湾では、65歳以上の高齢者がすでに全人口の約2割を占めています。
特に都市部では、家族との同居が減り、地域とのつながりも希薄になっています。
その結果、認知症の兆候に気づく人がいない、というケースが増えています。
これは日本でも同様です。以下のような状況が、日台共通のリスクを浮かび上がらせています。
・高齢者の単身世帯の増加
・地域の見守り力の低下
・認知症初期の発見が遅れる傾向
「予防」を地域活動に組み込むという発想
「とっとり方式」は、単なる体操や学習ではなく、地域で継続的に行う認知症予防の仕組みです。
週1回・全24回にわたるこのプログラムは、以下の3ステップで構成されています。
1. 運動(約50分):筋力運動や準備体操で体を動かす
2. 座学(約20分):認知症に関する知識を学ぶ
3. 知的活動(約50分):ゲームや脳トレで記憶力・計算力などを刺激
このプログラムは、高齢者の生活の中に自然と「他者との関わり」や「刺激のある習慣」を取り入れる設計になっており、孤立しがちな高齢者にとって重要な役割を果たします。
介護者視点:独居高齢者にこそ必要な接点と刺激
結論
独りでいる時間が長いほど、予防の仕組みが必要になる医学的な処置だけでは、認知症を予防することはできません。
特に独居高齢者は、会話の量が減り、外出の機会も限られ、日常のなかに刺激がありません。
こうした環境は、認知機能の低下を静かに進行させてしまいます。
このような背景を踏まえると、介護者には次のような視点の転換が求められます。
・認知症予防は「一人ではできない」
・社会との関わりそのものが「予防」になる
・継続的に「参加する習慣」が機能を維持する
「とっとり方式」は、介護ではなく「活動」を通じて、高齢者の自尊心を守りつつ、自然な形で予防につなげる工夫がされています。
実践例
介護施設での応用と改善点
ある介護施設では、軽度認知症の高齢者を対象に週1回のリハビリ教室を行っています。
しかし、その多くが運動中心であり、知的刺激や他者との対話の要素が不足しています。
このような現場に「とっとり方式」を応用すると、以下のような改善が可能です。
・運動の合間に脳トレゲームや時事クイズを取り入れる
・「自分史ノート」を使って、人生を語り合う対話型プログラムにする
・季節の食材を使った料理教室で五感を刺激する
このように、身体だけでなく心や頭にも働きかける要素を加えることで、予防効果はさらに高まります。
家族視点:遠距離介護における安心の「見える化」
親が地方で一人暮らしをしている場合、家族は常に不安を抱えています。
そんな中、「週に一度、地域の教室に通っている」「顔なじみのスタッフが見てくれている」といった日常の小さな安心が、遠距離介護の不安を和らげます。
さらに、「とっとり方式」は医師や自治体と連携しているため、家族にとっても科学的な裏付けのあるプログラムとして信頼を持ちやすいのです。
地域視点:住民参加型の予防活動として根付かせるには
認知症予防を地域の日常に落とし込むためには、自治会やサロンとの連携がカギとなります。
地域のなかで、自主的にこうしたプログラムが回るようになると、以下のような効果が期待できます。
・地域の見守り力の向上
・高齢者の生活満足度アップ
・医療・介護コストの抑制
現在の課題としては、「担い手不足」「移動手段の欠如」「資金確保」が挙げられますが、介護経験者の協力やボランティア送迎、市町村の助成制度などで補うことができます。

認知症予防は「地域の健康診断」
「とっとり方式」は、言い換えれば地域全体で取り組む定期健康診断のようなものです。
病院に行くのではなく、日常の中で自然と自分の状態を確認できる。
そんな仕組みです。
この考えを他の地域にも広げていくには、
・標準化されたマニュアルの整備
・地域リーダーやファシリテーターの育成
・教室開催の仕組みを簡素化する設計が求められます。
抽象化すれば、「人を孤立させない仕組み」こそが最大の認知症予防と言えるでしょう。
介護福祉の現場でいま起きている変化
現在、介護福祉の領域では以下のような動きが進んでいます。
・地域包括ケアへの移行と多職種連携の強化
・要介護高齢者の増加と人材の不足
・AIやIoTを活用した見守り技術の導入
・MCI(軽度認知障害)への早期介入の強化
・認知症カフェなど共生型支援の拡大
・介護予防事業の財源確保に対する課題
・独居高齢者の孤立死リスクへの対策強化
これらを踏まえると、「とっとり方式」は未来の地域づくりにおいても大きな可能性を持っていると言えます。
結論
独居高齢者への認知症予防には、仕組みと居場所の創出が不可欠
独居高齢者の課題は「孤立」と「刺激不足」です。
「とっとり方式」のような、定期的な参加・対話・活動を通じたプログラムは、認知症予防の効果だけでなく、その人の“生きがい”や“役割”を再発見するきっかけにもなります。
介護者として今後は、こうした取り組みを地域で持続可能にするための仕組みづくりに注力し、「制度の谷間」に落ちそうな高齢者を支える体制を築いていく必要があります。



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