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エッセンシャルワーカーへの転職
わずか1割 待遇見劣り、
人材難加速-労働臨界
2025/11/29 05:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『頼りたいのに頼れない…高齢者が抱える不安が止まらない理由とは?』
はじめに
私たちの社会を支える仕事の中には、生活に欠かせない「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる職種があります。
エッセンシャルワーカーとは、介護・医療・福祉・保育・運輸・物流など、社会の基盤を支える仕事に従事する人たちのことです。
彼らの働きが止まれば、私たちの生活はすぐに機能不全へ向かいます。
しかし現実には、エッセンシャルワーカーの不足が深刻化しており、介護分野でも働き手が減り続けています。
この状況を説明するうえで、介護分野ではよく「水位の上がるダム」という比喩が使われます。
見えないところで少しずつ水(介護負担)が増え、限界に達した瞬間に堤防が決壊する
いまの日本社会でも同じ構図が起きています。
・働き手の家庭内での介護負担が重くなる
・介護事業者の人材不足で業務が圧迫される
・利用者や家族はサービス縮小による不安が増える
この重なりが、年間10万人以上にものぼる「介護離職」という“決壊”につながっています。
本記事では、これらの要因を多角的に考察し、介護者・高齢者・家族・地域それぞれの視点から解決策を探っていきます。
働き手の介護離職が年10万人超
結論
介護離職が増え続けている背景には、エッセンシャルワーカー不足、賃金格差、地域の担い手不足、そして家族介護の限界が複合的に絡み合っています。
このままの状況を放置すれば、負の連鎖はさらに拡大する可能性があります。
理由
・介護サービスを利用したくても、現場の人手不足で必要な支援を受けにくくなる
・事業者のサービス縮小や利用待機が増え、家庭での介護負担が上昇する
・仕事との両立が難しくなり、就労調整から退職へ向かう
・介護職が低賃金で人材が集まりにくく、結果的にサービス供給がさらに低下する
具体例
・訪問介護のヘルパー枠が週2回から週1回へ減らされる
・デイサービスやショートステイが休止・縮小
・退院調整で「施設の空きがないため在宅での介護をお願いしたい」と言われる
このように、介護離職は家庭だけの問題ではなく、地域全体の介護力低下の結果として発生しています。
賃金水準にどれくらいの差があるのか
介護・保育・運輸などのエッセンシャルワーカーは、他の産業と比べて平均賃金が約1割低いとされています。
賃金格差がもたらす影響
・若い世代が参入しにくい
・他産業への転職は進むが、介護などのエッセンシャル職への転入は少ない
・結果として、慢性的な人材不足が続く
介護の現場の実感
体感ですが現場でも、「同年代の事務職に比べ年収が80〜120万円低い」と悩む介護士は多く、賃金格差が労働移動の壁になっていることを実感します。
これは個人の問題ではなく、産業間の構造的な分断に近い現象です。
都市部でも「担い手不足」が顕著にかつては過疎地の問題とされていましたが、現在では都市部でも人手不足が深刻です。
都市部の特徴
・高齢者人口が増えサービス需要は上昇
・一方で働き手は減少
・需要過多によりサービスは縮小しやすい
現場で起きていること
・都市部の訪問介護事業所で受け入れ停止が発生
・介護タクシーの予約が取りづらく通院が困難
・特養の満床状態、ショートステイの緊急受け入れ不可
都市部は医療資源が豊富なイメージがありますが、介護の分野では人手不足によるサービス低下が進んでいます。
高齢者の心境とその背景
エッセンシャル職の処遇が改善されず、介護職の定着率も低いままでは、サービス縮小が起き、高齢者の心理状態にも影響が出ます。
高齢者の心境
・「頼りたいのに頼れない」
・「家族に負担をかけて申し訳ない」
・「施設が空いていない。もう行く場所がない」
・「迷惑をかけられない」と外出や活動を控えてしまう
背景
・サービス供給低下で支援頻度が減少
・相談窓口の人員も不足
・地域包括支援センターも業務が逼迫
・担当職員の入れ替わりが多く、不安を抱えやすい
これらが重なり、孤独感や生活意欲の低下につながっています。

各視点から見る「課題と対応策」
介護者(家族ケアラー)視点
課題
・サービス不足
・仕事と介護の両立困難
・相談窓口の少なさ
・制度の理解が難しい
対応策
・ケアマネへ早期に「離職リスク」を伝える
・訪問介護、看護、ショートステイなどを組み合わせる
・家族内で役割分担を可視化する
・職場の介護支援制度を積極的に活用
高齢者視点
課題
・希望するサービスが利用できない
・職員不足でケアの質にばらつき
・外出機会の減少
・孤立リスクの増加
対応策
・見守り機器の導入
・地域ボランティアとの交流
・早期のケアマネジメント利用
・サービス内容の計画的な見直し
家族視点
課題
・介護の長期化が予測できない
・経済的負担の増大
・介護の役割分担の偏り
・正解がわからないまま介護が始まる不安
対応策
・家族会議を行う
・介護に伴う出費の把握
・介護保険サービスの最適化
・介護休業制度の利用
地域視点
課題
・介護人材の確保が難しい
・生活インフラが弱体化
・介護難民の増加
・地域包括ケアの機能不全
対応策
・オンライン相談などのデジタル化
・多職種連携の強化
・住民参加型の支援体制
・高齢者に役割をもってもらいコミュニティの活性化
今後の処遇改善に必要なこと
「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」への転換
介護の仕事にデジタルスキルを加えることで、負担を減らし生産性を高める新しい働き方が求められています。
必要な転換
・介護 × デジタル(記録の自動化、見守りAI)
・介護 × ロボティクス(移乗支援機器)
・介護 × 多職種連携(オンラインミーティング)
これにより、
生産性向上 → 余裕が生まれる → 定着率が改善 → 離職が減少
という好循環につながります。
自分の介護福祉領域で実際に起こっていること
・利用者増加に人員が追いつかない
・訪問介護で1人の担当範囲が拡大
・ショートステイの満床が続く
・ケアマネの担当件数が増加
・夜勤スタッフの減少
・デジタル化が現場軽減につながるほど浸透していない
・家族介護の疲弊が増え、離職につながるケースが増加
結論
介護離職10万人という決壊を防ぐために
介護離職は個人の問題ではなく、社会全体の構造的な課題です。
介護者・高齢者・家族・地域の問題が重なった結果として離職が生まれています。
介護離職を防ぐために必要なのは、
・エッセンシャルワーカーの処遇改善
・デジタル化による生産性の向上
・地域全体での支え合い
・介護サービス供給の安定化
・柔軟な介護休業制度
働き手が安心して家族を支えられる環境づくりこそが、日本社会の持続可能性を高める重要な鍵になります。



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