もの忘れを見逃した結果、介護費が2倍に膨らむ本当の理由とは?

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大阪市に認知症の治療拠点 

「もの忘れ病棟」や介護施設、

27年開業

2025/12/12 16:45

日経速報ニュース

大阪市に認知症の治療拠点 「もの忘れ病棟」や介護施設、27年開業 - 日本経済新聞
大阪市の横山英幸市長は12日、病院と介護老人保健施設(老健)、研究所を1カ所に集めた全国初の施設「大阪健康長寿医科学センター」を2027年5月に開設すると発表した。認知症の早期発見や治療法の開発につなげる。住之江区にある住吉市民病院の跡地に...

【この記事の内容】

放置は危険…MCIを見逃すと要介護度が一気に2段階上がる現実とは?

はじめに

予防に投資するほど、将来の負担が軽くなる

結論からお伝えします。

もの忘れ病棟を含めた認知症施策を介護現場に適切に反映することは、介護予防や健康寿命の延伸につながり、最終的には介護給付費の抑制に直結します。

この考え方は介護分野だけの話ではありません。

たとえば企業経営では、設備を壊れてから修理するよりも、定期的に点検・メンテナンスを行った方が、結果的にコストは抑えられるとされています。

認知症対策も同じで、重くなってから対応するのではなく、早い段階で気づき、手を打つことが重要です。

認知症介護に置き換えると、次のように整理できます。

重度化してから施設入所や入院に至る場合は、医療費や介護費が大きくなります。

一方で、早期に発見し、軽度の段階から支援を行えば、

住み慣れた地域での生活を続けやすくなり、費用負担も比較的抑えられます。

認知症施策を「治療」から「予防・共生」へ転換する必要性

なぜ今、もの忘れ病棟が注目されるのか理由は明確です。

認知症は、ある日突然重症化する病気ではなく、周囲が気づかないまま少しずつ進行する病気だからです。

介護現場では、よく次のような経過をたどります。

物忘れが増えても「年齢のせいだろう」と受け止められ、受診が先送りされます。

やがて家族が異変に気づいた時には、幻覚や暴言などの行動・心理症状(BPSD)が現れ、在宅生活が維持できなくなり、急な入院や施設入所につながります。

もの忘れ病棟の役割は、この流れをできるだけ早い段階で食い止めることにあります。

もの忘れ病棟とは、認知症や軽度認知障害(MCI)を専門的に評価・治療する病棟です。

医師や看護師だけでなく、リハビリ職や心理職などが連携し、薬物療法だけに頼らず、回想法のように過去の記憶を活用して脳の働刺激を促す支援も行われます。

早期介入の効果

一般的に、高齢者のうち一定割合がMCIの段階にあるとされ、毎年その一部が認知症へ移行します。

仮に早期介入によって移行のスピードを抑えられれば、将来的に要介護認定を受ける人の数は確実に減ります。

これは、医療費だけでなく、介護給付費の増加を緩やかにする効果があり、社会全体で見れば数%単位の抑制につながる可能性があります。

高齢者が「もの忘れ病棟」に至る心境と背景

高齢者視点:失われるのは記憶だけではない

高齢者本人は、「最近忘れることが増えた」という自覚を持ちながらも、不安や恥ずかしさから周囲に相談できないことが少なくありません。

また、「家族に迷惑をかけたくない」という思いが強いほど、症状を隠そうとします。その結果、外出や人付き合いを控え、地域での役割を手放してしまいます。

こうして社会とのつながりが弱まる状態は、社会的フレイルと呼ばれ、認知機能の低下をさらに進める要因になります。

家族視点:気づいた時には戻れない現実

家族は、仕事と介護の両立、一人暮らし高齢者への不安、BPSDへの対応など、複数の課題を同時に抱えています。

特に都市部では単身高齢者が多く、日常的に変化に気づく人がいないため、受診や相談のタイミングが遅れやすいという構造的な問題があります。

介護者視点で見る現場の課題と可能性

介護現場では、認知症の診断がないまま要介護度が進行し、BPSDへの対応に人手と時間を取られるケースが多く見られます。

その結果、本来重視すべき生活支援や予防的な関わりが後回しになります。

これは、介護者の疲弊、離職、人材不足という悪循環を生み出します。

ここで、もの忘れ病棟の考え方を介護現場に当てはめると、

早期発見

専門的な視点

生活に戻す支援

という三つの要素が重要だと分かります。

デイサービスでのさりげない認知機能の変化への気づき、ケアマネジャーと医療機関の連携、回想法や役割づくりを取り入れた日常支援などは、その具体例です。

地域視点で考える認知症施策の広がり

地域全体を見ると、高齢者単身世帯の増加、見守りの担い手不足、医療・介護・行政の分断といった課題が重なっています。

そのため、医療拠点で得られた知見を地域に広げ、介護職への研修や住民への理解促進につなげることが欠かせません。

認知症施策が介護給付費の抑制につながる理由

重度化を防ぐことで要介護度の上昇を抑えられ、在宅生活の期間が延びます。

その結果、医療費や施設入所にかかるコストが軽減されます。

要介護度が一段階違うだけでも、年間の給付費には大きな差が生じます。

また、BPSDを予防できれば、介護職の負担も減り、現場の安定にもつながります。

結論

介護者として認知症施策を「自分事」として捉える

もの忘れ病棟は特別な存在ではなく、介護現場が目指す未来を先取りしたモデルです。

医療の動きを知り、施策を現場に転用し、日々の生活支援に落とし込む。

この積み重ねこそが、介護予防、健康寿命の延伸、介護給付費の抑制へとつながります。

認知症施策は行政や医療だけの課題ではありません。

介護者一人ひとりの実践が、社会全体の未来を支えているのです。

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