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SOMPO系、
AIが高齢者の排せつケアを提案
新米介護士を支援
2025/12/17 05:00
日経速報ニュース
【この記事の内容】
『7割が限界…排せつケアで介護士が壊れる理由とAIに頼らざるを得ない現実とは?』
はじめに
介護分野では「排せつケアは、生活の質(QOL)を最も左右するケアの一つである」という考え方があります。
排せつは、食事や入浴以上に、人としての尊厳や自立心、そして安心感と深く結びついている行為だからです。
一方で、介護現場に立つ介護者にとって、排せつケアは身体的にも精神的にも負担が非常に大きい業務であることも事実です。
本記事では、介護者の視点を中心に、高齢者の排せつケアという負担の大きい領域を、人工知能(AI)がどのように支援できるのかを考察します。
あわせて、高齢者本人、家族、そして地域社会というそれぞれの立場から、その意義と課題を整理していきます。
排せつケアが介護現場で抱える本質的な課題
結論から言うと、排せつケアの難しさは作業量の多さではなく、「判断の複雑さ」と「経験への依存」にあります。
排せつケアは、単にトイレへ連れて行く、後始末をするといった作業ではありません。
利用者一人ひとりについて、身体機能の状態や内科的な問題、服用している薬の影響、認知機能や心理状態、さらには生活環境までを同時に考慮する必要があります。
これらの要素を短時間で総合的に判断しなければならないため、どうしても介護者の経験値によって対応の質に差が生まれます。
例えば、経験の浅い介護士は「失敗を防ぐためにトイレ誘導の回数を増やそう」と考えがちです。
一方、経験豊富な介護士は「姿勢が不安定なのではないか」「排せつのタイミングが合っていないのではないか」「水分摂取量や薬の影響はどうか」と、原因そのものに目を向けます。
この判断の差が、利用者の負担を増やし、結果として介護者自身の疲弊にもつながっているのです。
高齢者が排せつトラブルに至る心境と背景
高齢者の多くは、排せつに関して「困ってはいるが、うまく言葉にできない」状態に置かれています。
排せつは極めてプライバシー性の高い行為です。
そのため、「介護者に迷惑をかけたくない」「恥ずかしい」「なぜうまくいかないのか自分でも分からず不安だ」といった感情が重なり、本音を伝えにくくなります。
頻繁にトイレを訴える背景には失敗への恐怖があり、夜間のコールが増える背景には一人で行くことへの不安があります。
また、失禁後に黙り込んでしまうのは、自尊心が深く傷ついているサインでもあります。
AIがこうした訴えや行動をデータとして整理し、客観的に分析することで、高齢者自身が言葉にできない「助けてほしい」というサインを、介護者が理解しやすくなります。
AIによる排せつケア支援サービスの仕組み
AIによる排せつケア支援は、介護者の代わりに介助を行うものではありません。
介護者の「考える力」を補い、判断を支える存在です。
このようなサービスでは、マニュアルや過去の事例を検索し、その情報をもとに生成AIが改善策を提示する仕組みが使われています。
さらに、ベテラン介護職員が経験的に行ってきた判断、いわゆる「勘」や「コツ」を言語化し、データとして活用することで、誰でも同じレベルの思考に近づける工夫がされています。
例えば、排尿回数が多く、夜間のコールも頻繁で、利尿剤を服用しているという情報を入力すると、AIは「姿勢が安定せず、排尿が一度で終わっていない可能性がある」と分析します。
そして、足元を安定させる補助具の使用や、誘導のタイミングを回数ではなく間隔で見直すといった提案を行います。
これは、新人介護士が、ベテラン介護士の思考プロセスをそのまま借りている状態に近いと言えるでしょう。
介護者視点での課題とAI活用の効果
介護者にとって、AIの導入は心理的な負担の軽減につながります。
現場では、「自分の判断は正しいのか」「なぜ改善しないのか」といった不安や無力感を抱えながらケアを続けることが少なくありません。
さらに、家族からの質問や要望に十分な根拠を示せず、精神的なストレスを感じる場面もあります。
AIを活用することで、判断の根拠が可視化され、チーム内で共通認識を持ちやすくなります。
その結果、業務効率が向上し、限られた人員でも質の高いケアを提供しやすくなります。
高齢者・家族・地域に広がる影響
高齢者にとってAIは、自分の尊厳を守るための間接的な支援者です。
不要なトイレ誘導が減り、失禁のリスクが下がることで、「自分を理解してもらえている」という安心感につながります。
家族にとっても、排せつケアの状況が論理的に説明されることで、見えない不安が軽減されます。
数値や根拠をもとに説明を受けることで、介護現場への信頼が深まります。
地域や社会全体で見れば、AIは深刻化する
介護人材不足への一つの解決策です。
経験の差を埋め、地方施設でも一定水準のケアを提供できるようになることは、介護職の定着や地域包括ケアの維持にもつながります。
まとめ
AIによる排せつケア支援サービスの本質は、「介護者の経験不足を責めること」ではありません。
経験を個人のものにとどめず、現場全体で共有できる資産へと変えていく仕組みです。
AIは万能ではありませんが、介護者の思考を支え、高齢者の尊厳を守り、家族と地域の安心をつなぐ存在として、今後の介護現場に欠かせない基盤になっていくと考えます。


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