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エアコン苦手な人、
災害級猛暑にどう備える?
冷風への対処方法とは
2025/08/06 05:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『電気代がもったいない…で死を招く…高齢者が知らない危険信号とは』
はじめに
介護の世界では、「QOL(Quality of Life:生活の質)」という考え方が重要視されています。
これは単に命を守るだけではなく、「その人がその人らしく、快適に生きる」ことを大切にする考えです。
災害級の猛暑が続く中、エアコンを使わずに熱中症で亡くなる高齢者が後を絶ちません。
事実、熱中症による死亡者の9割がエアコンを使用していなかったとされています。
しかし、「命を守るためにエアコンを使って」と一方的に訴えても、それだけでは高齢者のQOLを守ることにはなりません。
「冷風が体に悪い」
「昔から使っていない」
「電気代が心配」
など、高齢者にはそれぞれの理由があります。
まるで靴が合わないまま歩き続けるようなもので、無理やり履かせても痛みを感じるだけです。
だからこそ、介護者、家族、地域が一緒になって、納得しながら使える“自分に合った涼しさ”を探ることが求められます。

なぜ高齢者はエアコンを避けるのか?
その理由を知ることが第一歩
高齢者がエアコンの使用を避ける背景には、複数の要因が絡み合っています。
身体への不安や迷信
「冷風は体に悪い」との思い込みは、昭和の頃から根強く残っています。
扇風機の風でも体調を崩すという俗説が、未だに影響を与えています。
自然と共に生きた生活習慣
若い頃から打ち水や扇風機、風通しを工夫してきた世代にとって、エアコンは「不自然」なものです。
経済的な心配
年金暮らしの中で、電気代の負担を気にしてエアコン使用を控える方もいます。
暑さへの感覚の鈍化
年齢とともに、暑さや喉の渇きに気づきにくくなり、知らず知らずのうちに熱中症のリスクが高まります。
介護者視点
エアコンを「使わせる」のではなく、「選べる状態」に介護者にとって大切なのは、エアコンを無理に使わせることではありません。
大切なのは、「この方法なら快適だ」と本人が納得しながら、安全に過ごせる方法を一緒に見つけることです。
たとえるなら、靴のサイズが合っていないまま歩かせるのではなく、履き心地の良い靴を探すようなものです。
エアコンが苦手な人への具体的な対処法
・薄手の長袖を着る冷風を直接受けずに済み、体も冷えすぎません。
・扇風機と濡れタオルの併用気化熱(蒸発による冷却作用)で体温を下げる効果があります。
・サーキュレーターで風を分散部屋全体の空気をかき混ぜ、冷風の不快感を減らします。
・首・脇の下に氷のうや冷たいペットボトル太い血管を効率的に冷やすことで、体温の上昇を防げます。
・冷感素材の衣類やスカーフを活用体感温度を下げる工夫として効果的です。
・カーテンやブラインドで日光を遮る日中の室温上昇を抑えるための基本対策です。

家族視点
信頼関係を崩さずに、習慣を変える方法
家族としては、熱中症を心配するあまり「いいからエアコン使って!」と言いたくなるかもしれません。
しかし、それでは反発や不信感を招きやすく、逆効果です。
・家族ができるアプローチの工夫生活習慣への共感から始める「昔から暑さには強いんだよね」と肯定的に声をかけることで、心の壁が和らぎます。
・使い方を一緒に試す「28度に設定して、風向きも変えてみようか」と一緒に操作することで、不安が軽減します。
・温度・湿度計を見えるところに置く「今日は湿度が高いから、ちょっとだけつけようか」と、数字を根拠に対話できます。
地域視点
孤立と情報格差をどう防ぐか
一人暮らしの高齢者がエアコンを使っていないことは、単なる個人の問題ではなく、地域の見守りや情報提供体制の課題でもあります。
・地域で取り組めること民生委員やケアマネによる見守り
「暑い日が続いてますね、エアコンつけてますか?」という声かけが、命を救うきっかけになることもあります。
・自治体からの分かりやすい啓発
「28度設定、湿度60%が快適です」といった情報を、チラシや回覧板で伝える工夫が必要です。
・熱中症対策グッズの配布支援
冷感タオルやミニ扇風機、温湿度計などの配布によって、手軽に始められる対策を促せます。
・災害時など、エアコンが「使えない」状況の備え
災害や停電でエアコンが使えなくなることも考えられます。
その場合は、以下の方法で体温を効果的に下げる工夫が必要です。
・気化熱の活用濡らしたタオルを首や腕に巻いて、うちわや扇風機で風を送ることで冷却効果が得られます。
・熱伝導による冷却冷たいペットボトルや保冷剤を首やわきの下に当てると、体温の上昇を抑えられます。
また、避難所生活では、通気性の良い衣類や冷却グッズを常備しておくことも大切です。

まとめ
納得と安心こそが、命を守る鍵になる
高齢者の9割がエアコンを使用していなかったという事実の裏には、単なる「エアコン嫌い」ではなく、長年の生活背景、文化、信念、そして情報の格差があります。
介護福祉の現場で起きていること
・エアコンを「医療器具」と捉え直す動き
・個別ニーズに合わせた「パーソナルケア」の実施
・温湿度センサーや見守り技術の導入
・地域と連携した「猛暑時の見守り体制」の構築
これからの介護は、「エアコンを使わせる」ではなく、「その人の納得を得ながら、安全な環境を整える」ケアへの転換が求められています。
それは、ビジネスで言えば「売りつける」のではなく、「本当に役に立つと感じてもらう」マーケティングに似ています。
行動の変化は、納得感の先にあるのです。



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