老人ホームの関連記事
重度者向け老人ホームに登録制検討
厚労省、質懸念なら参入拒否
2025/10/03 19:30
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『登録制がなければ危険!囲い込みで起きた問題とは?』
はじめに
介護の現場では「サービスの個別化(パーソン・センタード・ケア)」という考え方が重視されています。
これは、高齢者一人ひとりの生活歴、価値観、身体・心の状態、置かれた環境などを尊重して、最適な介護サービスを提供するというものです。
ところが現実には、“囲い込み” の問題が目立っています。
施設側の都合を優先して、入居者の本当のニーズよりも施設側で提供可能なサービスを無理に使わせるような運用が散見されます。
この構造を自動車整備に例えれば、「ディーラーに行ったら不要な整備やオプションを強く勧められ、断りにくい状況に追い込まれるような状態」と言えるでしょう。
つまり、高齢者やその家族の“選ぶ自由”が奪われているのです。
この問題をどう改善できるか、介護者の立場、家族の立場、地域の立場から多角的に考察していきます。
「囲い込み」とは何か?
問題点の整理囲い込みの構造と背景
「囲い込み」とは、有料老人ホームに入居するとき、施設が自社資本関係のある訪問介護や通所介護(デイサービス)を強く勧めたり、事実上強制したりする仕組みを指します。
囲い込みの主な課題
利用者の選択肢が制限される
他の介護事業者を自由に選べず、自分に合ったサービスが選べない。
過剰なサービス提供
利用者の実際のニーズを超えるサービスも提供され、それが介護報酬の不正請求につながる可能性がある。
サービスの質にばらつきがある
同一資本の事業者であっても、職員の能力・やる気に差があり、提供されるサービスにムラが生じる。
家族の不信感を招く
なぜ特定のサービスを使わなければならないのか説明が不十分で、家族が疑念を抱くケースが多い。

高齢者の視点 — 選ぶ自由と安心の確保
老人ホームを選ぶという行為は、高齢者にとって人生の重要な決断です。
その中で、サービスが過剰だったり、選択肢を奪われたりすれば、不安材料になります。
高齢者が感じやすいこと
・将来の暮らしや体調に関する不安を抱えて入居を決める
・自らの生活の主導権を持ちたい(サービスを選びたい)
・囲い込みが「強制」と感じられる(説明が不足していると感じる)
こうした不安や葛藤を抱えたまま入居している方に対して、介護者・家族・地域が果たす役割は非常に大きいといえます。
介護者視点 — 囲い込みは現場の負担にも直結する
囲い込みの結果、本来不要なサービスが提供されると、現場の職員にとっては負荷増、品質低下、倫理的ジレンマを招くことがあります。
現場で起きている主な課題
・ケアプラン範囲外の“指示”が上から降りてくる
・実質的には不要なサービスに時間が割かれる
・サービスの「回数」が優先され、質が後回しになる
・職員が「本当にこのサービスが必要か?」という疑問を抱きながら働くことが増える
登録制を導入して、質の低い事業者が参入できない仕組みを設けることが、職員の負担軽減につながる可能性があります。
家族視点 — 透明性と信頼性の再構築
家族は、施設に入居させた後も“介護のパートナー”です。
しかし、囲い込みによりサービス内容が不透明になると、不信感が強まります。
家族が抱きやすい悩み
・提案されたサービスが本当に必要か判断しづらい
・利用料金がかさみやすい
・サービスの変更や見直しがしにくい(契約上の縛りがある)
登録制を通じて透明性を確保すれば、家族と施設との信頼関係を回復しやすくなるでしょう。
地域視点 — 地域包括ケアの理念が揺らぐ
「住み慣れた地域で最後まで暮らしたい」という地域包括ケアの理念は、囲い込みによって揺らぎかねません。
囲い込みが地域に与える影響
・地域内の介護資源が特定事業者に集中する
・公平な競争が阻害される
・地域住民の信頼が損なわれ、「この地域は囲い込みがひどい」という評判が広がる
登録制によって、事業者の質を“見える化”する仕組みを作れば、地域全体のケア体制の信頼性を高める一助となるでしょう。
介護福祉領域で顕在化している課題
現在、介護業界では以下のような課題が深刻化しています。
人手不足:特に夜勤や重度者対応の人員確保が困難
サービスの質のばらつき:同法人内でも施設によって提供品質に差がある
離職率の高さ:処遇や労働環境の悪さから退職する職員が多い
施設間連携の弱さ:医療機関や他施設との連携が不足し、入居者・家族の不安を増幅
監査・監督機能の弱さ:行政による監督が十分でないため、悪質な事業者が存続しやすい
登録制導入と囲い込み是正へのステップ
結論として、囲い込みを是正し、質を担保するには「登録制」の導入が不可欠と考えます。
登録制導入による期待効果
・行政が事業者の質を事前にチェックできる
・処分歴や経営情報を公開し、利用者が判断材料にできるようになる
・入居者・家族・地域の信頼性が向上
・不要な囲い込みを制限する法的根拠が整備される
介護者としての具体的提案
・サービス選択の自由を確保する契約内容を標準化する
・第三者評価機関を活用して透明性を高める
・職員教育を充実させ、倫理観を育てる
・家族や地域住民に対して啓発活動を行う
まとめ
入居者の「人生の質」を守る介護を目指して囲い込みを許してしまえば、介護は本来の目的から逸脱するリスクを孕みます。
それは要介護者の尊厳や暮らしを脅かすだけでなく、介護職員のやる気、家族の信頼、さらにはその地域のケア基盤全体を揺るがす可能性があります。
登録制の導入は、単なる規制強化ではなく、「本当に安心できる介護とは何か」を社会全体で問い直す契機になるはずです。
介護者一人ひとりが、入居者の人生の質(QOL)を支える視点を忘れずに、より良い制度と現場のあり方を目指していきましょう。



コメント