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育児・介護「多様な働き方」
10月から拡充 同僚に負担、
公平感どう確保
2025/10/08 22:12
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『制度が壊す職場…育児・介護でギクシャクする会社の特徴とは?』
はじめに
育児・介護と仕事の両立──その裏側で起きている“温度差”の正体とは
2025年10月、改正育児・介護休業法がすべての企業に対して完全に施行されました。
これにより、テレワークや短時間勤務といった「柔軟な働き方」がますます広がり、子育てや介護をしながら働く人々への支援が加速しています。
しかしその一方で、「制度を利用する人」と「その人をフォローする人」の間に、不公平感や感情的なズレが生まれているのも事実です。
介護の現場でも似たような構図があります。
誰かがシフトを抜ければ、誰かがその穴を埋める。
このような「しわ寄せ構造」が当たり前となりつつある今、制度の価値をきちんと共有できなければ、職場内の関係性がギクシャクしてしまう可能性もあります。
本記事では、介護に携わる人間の視点から、こうした不公平感がどこから生まれるのかを深掘りし、両立支援制度を円滑に機能させるためのヒントを考えていきます。

「チームケア」という介護の知恵に学ぶ、職場内フォローの考え方
介護の現場には、「チームケア」という基本的な考え方があります。
これは、介護士、看護師、ケアマネジャー、リハビリ職などが一つのチームとなって、それぞれの専門性を活かしながら支援を分担する仕組みです。
この考え方を企業の働き方にも応用すれば、「誰かの働き方の変化が、チーム全体のバランスをどう変えるか」が見えやすくなります。
たとえば、短時間勤務の社員が抜ける時間帯の業務を、他のメンバーが自然にカバーできるように 「仕事の見える化」を進めておけば、負担の偏りを防ぎやすくなります。まさに、「役割分担と補完関係」が鍵となるのです。
なぜ不公平感は生まれてしまうのか?
結論から言えば、それは「情報の見えにくさ」と「感情のすれ違い」が原因です。
制度を利用する人は家庭の事情を抱えており、仕事をうまく回すのに必死です。
一方、フォローする側は業務量が増えるにも関わらず、見返りや評価が明確でないため、不満を抱きやすくなっています。
実際、パーソル総合研究所の調査では、制度利用者をフォローしている社員の約43%が不満を持っているとの結果が出ています。
さらに、残業時間も平均で月5.6時間多いというデータもあり、「支え合い」が片方向になっている現実が浮き彫りになっています。
介護者・高齢者・家族・地域──それぞれの視点にある課題とは?
介護者視点:職場と家庭の板挟み
・急な介護対応で、勤務を抜けなければならない
・職場内で「理解されていない」と感じ孤立する
・労働時間が減ることで、評価が下がる不安がある
対応策:
・テレワークや短時間勤務の柔軟運用
・制度の啓発や体験制度(例:「かえるリレー」)による理解促進
・チーム単位での評価制度の導入
高齢者視点:「迷惑をかけたくない」という無言のプレッシャー
高齢者は、「自分のせいで家族に負担がかかっている」と感じやすく、制度利用を躊躇させる心理的要因になります。
これは、昭和的な「我慢は美徳」「家族に迷惑をかけてはいけない」という価値観が根底にあると考えられます。
対応策:
・高齢者自身にも制度や社会の変化について丁寧に説明し、「支援を受けることは悪ではない」と安心してもらうことが必要です。
家族視点:実際に両立する人のリアルな苦悩
・精神的・身体的に大きな負担を抱えている
・職場に理解がないと制度を使うこと自体が難しい
対応策:
・介護保険サービスや地域包括支援センターなど外部支援の活用
・職場との情報共有や相談環境の整備
地域視点:支援の分散とつながりの再構築
・地域の資源が不足しており、家族介護に過度に依存
・介護者が孤立しやすい環境
対応策:
・地域包括ケアシステムの活用・拡大
・企業と自治体の連携(介護セミナーなど)
・副業・短時間就労制度などで地域内の支援を広げる
介護業界で何が起きているのか?(2025年時点)
・深刻な人材不足により、業務の「見える化」と役割の再構築が進行中
・生成AIやICTの導入で業務効率化を推進
・多職種連携研修の義務化により、現場の相互理解が進む
・企業内ケアラー支援制度の導入が広がっている
・厚労省が推進する「仕事と介護の両立支援制度」の普及が進展中
こうした流れは、企業における多様な働き方支援にも強く影響を与えています。
「仕組み」と「文化」が両立支援の両輪になる
◎結論
誰もが納得して制度を活用できる環境をつくるには、「制度(仕組み)」だけでなく、「人の心(文化)」を育てることが必要です。
◎構造的アプローチ(仕組み)
・フォローする社員に、目に見える形で報酬や評価を付与する
・チーム単位での成果評価を取り入れる
・「ノーワーク・ノーペイ」の原則を徹底し、透明性を確保する
◎情緒的アプローチ(文化)
・全社員による制度の体験導入で、利用者への共感を深める
・「ありがとう」を言葉にできる職場風土をつくる
・制度利用者が成果や気づきを発信できる場をつくる
まとめ
制度を活かすには「仕組み」と「共感」の両立が不可欠
制度が整っても、それを使う現場が疲弊していては意味がありません。
育児や介護と仕事の両立は、今や珍しいことではありません。
しかし、その柔軟な働き方を支えるためには、周囲の理解とチーム全体での支え合いが必要です。
「制度は人の善意だけでは機能しない」。
だからこそ、介護現場で育まれた「支え合いの設計思想」は、企業にも応用できる知恵です。
社会全体がチームとして支え合う意識を持つこと。
これこそが、これからの働き方に求められる大きな価値ではないでしょうか。



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