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音楽で楽しく介護予防
教室に参加、
口腔体操や楽器演奏を実践
シニアサポーター
2025/07/02 05:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『「孤独」と「沈黙」が招く心の老化。放置で悪化する変化とは?』
はじめに
年齢を重ね、仕事や育児がひと段落した後、多くの人が経験するのは「時間のゆとり」と「交流の減少」。
趣味や会話の機会が減ると、笑う回数も言葉も少なくなり、結果として認知機能や身体の衰えが進みやすくなります。
この“心の筋力低下”を防ぐのが、音楽というツールです。
音楽療法は、楽しく歌ったり演奏したりしながら、口や指先の運動、記憶の刺激、人との交流といった複数の側面から心身をサポートできる、多面的な介護予防手法です。
まるで「身体の筋トレ」が筋肉を維持するように、「音楽」は心と脳の筋トレになるのです。

なぜ今、音楽療法が注目されているのか?
結論
音楽療法は、高齢者にとって無理なく楽しく続けられる、介護予防の強力な手段です。
理由
1. 音楽は感情や記憶に直接働きかける
→ 昔の歌が流れると自然と口ずさみ、思い出がよみがえる「回想法」の効果が期待できます。
2. 口腔や手指の運動も同時に促せる
→ 例:パ・タ・カ・ラ体操で誤嚥(ごえん)防止、指先の運動で脳の活性化。
3. 誰にでも参加しやすい
→ 運動が苦手でも音楽なら気軽に始められ、続けやすいのです。
音楽療法の現場から
福岡県の「楽音活プログラム」
例えば、福岡県筑紫野市で行われている「楽音活プログラム」は、以下のような内容で構成されています。
発声体操(パ・タ・カ・ラ)
→ 口や舌の筋肉を動かし、誤嚥予防に効果的です。
昭和歌謡や童謡の合唱
→ なじみのある曲を使って記憶を呼び起こし、脳を活性化させます。
タオルを使った簡単な体操
→ 指先や足の運動を通じて、フレイル(虚弱)予防に役立ちます。
キーボード演奏
→ 普段使わない指を使うことで、脳に新たな刺激を与えます。
「運動は続かないけれど、音楽なら毎回楽しみに通える」と話す参加者が多く、2024年度は延べ4万人以上が参加しました。

高齢者の心にある不安と願い
多くの高齢者が、次のような気持ちを抱えています。
・時間に余裕はあるけれど、新しいことを始めるきっかけがない
・最近、物忘れが増えたと感じている
・誰かと話す機会が減って、少し寂しい
・身体が思うように動かなくなってきた
こうした背景の中で、「音楽」は自然と人を前向きにする力があります。
誰もが一度は聴いたことのある歌、口ずさんだメロディー。
それを通じて、思い出がよみがえり、自分らしさが取り戻されていくのです。
課題と対応を4つの視点で考える
1. 【介護者の視点】
課題:日々のレクリエーションがマンネリ化し、変化や小さな異変を見逃しやすい
対応:音楽療法を通じて発声や動作の変化を記録・観察することで、状態変化を早期に察知可能に
2. 【高齢者本人の視点】
課題:新しいことに挑戦するのが不安。孤独を感じやすい
対応:自分の好きだった音楽からスタートすることで、心の壁を低くし、仲間意識や達成感も得られる
3. 【家族の視点】
課題:家での会話が減っている。外出の機会を作るのが難しい
対応:教室の話題や発表会がコミュニケーションのきっかけとなり、「支える」から「一緒に楽しむ」関係へ
4. 【地域の視点】
課題:単身高齢者の孤立、地域参加の減少
対応:音楽をきっかけにした教室を通じて、地域でのつながりを育む場づくりが進む音楽は「心の筋トレ」。
失敗もまた音楽の一部
音楽療法の現場では、「音を間違えても、それはメロディーの装飾音」という考え方が大切にされています。
これは、「完璧でなくていい」「その人なりでいい」という温かさの表現です。
音楽には、受け入れ、表現する力があります。
上手に演奏することよりも、音を通じて心を動かすことこそが、介護予防における本当の価値なのです。

まとめ:好きな音楽から始めよう
音楽療法は、高齢者にとって次のような効果が期待できます。
・楽しみながら口や指先を動かし、身体機能を維持
・過去の記憶を呼び起こし、脳の活性化を促進
・仲間とのつながりをつくり、孤立を防ぐ
・自分の人生に再びリズムを取り戻すきっかけになる
まずは「好きな音楽」を聴くことから始めてみませんか?
介護予防の第一歩は、難しいことではありません。
日常に音楽を取り入れ、心と体、そして人との関係をもう一度つなぎなおすこと。
それが、これからの時代に求められる「楽しく生きる介護予防」です。



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